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故安倍晋三国葬義:会場周辺の散策

 2022年9月27日午後2時より日本武道館で故安倍晋三国葬義が行われた。数日前より会場周辺の首都高・一般道では交通規制が始まり、鉄道は平常通りの運転であったが、一部の駅ではコインロッカーの使用が禁止された。先の事件にて、警察の警護の不備が指摘されたこともあり、数ヵ月前に日本で行われたQuadの首脳会議の時よりも多くの警官が動員された。総勢約二万人に及んだという。

①田安門前

 午後1時20分頃、飯田橋駅から警察の警備の緩急を見るため、徒歩で武道館に向かった。武道館の田安門前の早稲田通りでは車両が通行止めになっていて、奥に人だかりがあった。人々が集まっていたのは田安門手前の車道を挟んだ歩道で、門にはヘッダー画像にある看板が設けられていた。足を止め看板を眺める人、三脚をたて何かを待つ人、顕正新聞を配る人、国葬反対のプラカードを掲げる人、テレビの取材クルーが入り乱れ雑多な様子であった。国葬反対のプラカードを首から下げたグループには警官が付き、時折、「この非国民め。」等と罵声を浴びせながら近づいてくる人に対応していた。そのやり取りを見物人が撮影しようと取り囲み、円形になっていた。

②靖国通り~内堀通り(千鳥ヶ淵公園沿い)

 田安門から靖国神社へ向かう靖国通りには献花台に向かう人達が押し寄せていた。車道には警察車両が一例に並び、人員輸送車には多数の警官が椅子に座り待機している。ここでは警官は10名前後で一列になり、人々をかき分けて移動していた。車道を挟んで反対側の歩道には、献花台が見えた。警察車両の隙間から辛うじて安倍氏の遺影が確認できる。この献花台が見える場所は1つの撮影スポットとなり、人が集まって歩道を狭めていた。警官が「写真を撮ったらすぐに離れてください。」と呼び掛けていた。靖国神社前で神社に向かって手を合わせてから献花に向かう人も多い。平日の昼下がりにも関わらず、スーツを着たサラリーマンと思われる人達が多くいたのが印象的だ。

一般献花台


 千鳥ヶ淵沿道では献花の順番を待つ人々が長蛇の列を作り、ゆっくりと進んでいた。この通りと交差する代官町通りを安倍氏の遺骨を乗せた車が走り、武道館に向かったという。私が代官町通りに着く前に自衛隊による弔砲が聞こえたので、この時には車は既に武道館に到着し、国葬が始まっていたのだろう。三宅坂の交差点を境に献花を待つ人の列は折り返し、武道館の方に向かっていた。

③永田町周辺

 国会図書館前の大通りは閑散としていて車も人もあまり見当たらない。約150mごとに警官が一人立ち、警備に当たっているように見えた。国会議事堂前駅の出口では革マル派(日本革命的共産主義者同盟革命的マルクス主義派)がビラ配りをしていた。人が少なく、首都高が閉鎖されているのもあってか、武道館周辺と比べれば静かな場所だった。一方で、デモ隊によるものと思われる笛と太鼓の音が遠からず聞こえた。

④国会前庭(北庭)

 国会前庭には国葬反対デモの参加者が集まり、大規模な集会が開かれていた。公園の中も外も人で埋め尽くされていて、様々な色・形のプラカードが掲げられていた。「ノンセクト」と書かれたのぼり、大学の学生団体の横断幕、とりわけ安部氏の名前が含まれるプラカードが多く掲げられ目立っていた。公園を一周してみてデモの参加者に高齢の方が多いのではないかと思った。20代以下と思わしき者は、私と同じようにデモの様子を見に来たという印象の男性3人と横断幕を掲げる学生団体、親に連れられてきたのか走り回って遊ぶ子供たち、デモ参加者から話を聞く記者、顕正新聞を配る人を除き、確認出来なかった。
 やがて日本共産党委員長志位和夫氏による演説が始まった。演説の終盤、志位氏が安倍政権は間違いなく戦後最悪の政権であると言い放ったところで集会の盛り上がりはピークを迎えた。演説を聞いていた者の多くが拍手を送っていた。

国会議事堂前での反対デモ演説の様子


 公園の木の陰でプラカードを持ちながら石の上に座っていたお婆さん(以下「Aさん」と称する。)にデモへ参加した理由などを伺った。Aさんは国葬の費用が当初の予算で16億円にのぼるとされたことに、疑問を抱いていた。それだけのお金を葬儀にかけるのであれば、もっと子どもの教育や高齢者福祉に使用して欲しいと話された。加えて、国葬の是非はともなく、政府の国葬にかかる費用の説明が、十分に国民に伝わっていない事が問題だとおっしゃった。その後、日本にあるアメリカ軍基地の問題に話が移ったが、本記事の趣旨から遠ざかるため割愛させて頂く。最後にAさんから思わぬ助言を頂いた。「(学生のうちは)様々な人の意見を聞いた方がいい。ここ(デモ集会)だけでなく、国葬の会場に来た人たち(一般献花に訪れた人たち)からも話をよく聞いて沢山学んで欲しい。」

⑤内堀通り(皇居外苑沿い)~田安門前

 日比谷公園の方に向かう途中、少し離れた通りに黒い街宣車が見えた。交通規制があるため、武道館までは近づけない。公園を抜けて、内堀通りに出た。ここにはプラカードを持った人はおらず、警官はやはり随所に見受けられたが、それ以外に変わったことはなかった。代官町通りと内堀通りを繋ぐ竹橋でもやはり交通規制が行われていた。代官町通りから次々に大型バスが竹橋を通って行った。バスには制服を着たままの警官が大勢乗せられて何処かへ向かっていった。田安門前は最初に来たときよりも、人が減っていて難なく歩けた。依然、一般献花に訪れる人たちの列がゆっくりと靖国通りに続いていた。列には高校生と思わしき制服を来た人も並んでいたのが見えた。時刻は午後4時20分頃で、3時間かけて武道館・皇居の周りを一周したことになる。Aさんに言われたように、献花に訪れた人からも話を聞いてみたいと思ったが、何度か断られ、意気消沈して帰途についた。

遠くから見た武道館

⑥まとめ

 私はデモの参加者に対し、自分達の意見・主張を信じて疑わず、固執しやすいという印象を持っていた。しかし、今回Aさんのように他人に主張を押し付ける形ではなく、様々な意見を取り入れることの大切さを説く方もいらっしゃることが分かった。会場周辺には、献花に訪れた人もいれば反対デモを行った人もいる。たまたま通りかかった人もいれば、テレビの取材に来た人も、実際に国葬義会場に入っていった人もいた。大勢の献花に訪れた人がいたこと、政治的な意見が対立する場面を見たこと、反対デモの参加者から話を聞けたことなどの経験は、今後政治を学んでいく上で、何処かで役立ってくるはずだ。私は政治にまだまだ無知であり、政治の歴史や政策決定の仕組みなどの基礎知識が欠けている。国葬の意義も深くは理解していない。にもかかわらず、今回いきなり国葬義会場周辺に出向こうと考えたのは、知識もない分、自分の直感で政治を捉えることができる貴重な機会だと思ったからである。会場周辺の様子を記すにあたり、出来る限り個人的な感想や意見を排して、自分の見た通りに記したつもりだ。自分の考えたことについては仲間たちと共有し、また新しい発見に繋げられたらと思う。


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