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原発事故を各国の報道から考えるーー公開シンポジウム「Fukushimaは世界でどのように報道されているか」を開催しました!

5月30日(火)に、ボランティアセンターの設立20周年を記念するプレキックオフシンポジウムとして、「Fukushimaは世界でどのように報道されているか」を開催しました。

今回は、対面(池袋キャンパス14号館)及びオンライン(Zoomミーティング)のハイブリッド形式で開催したことにより、立教生のみならず、国内外から多くの参加がありました。

ユーディット・ブラントナーさんについて

本シンポジウムでは、東日本大震災以降の「Fukushima」に関する取材を続けているオーストリア人ジャーナリスト、ユーディット・ブラントナーさんをゲストとしてお招きしました。

▼ゲストプロフィール
ユーディット・ブラントナー(Judith Brandner)
ーー2023年度 本学海外招聘研究員
ーージャーナリスト・ORF オーストリア国営放送局

東日本大震災の発災後、毎年のように福島県での取材を重ねており、現在もFukushima に暮らす人々の生活に同行し、彼らの人生の物語を語ることに関心を寄せている。
〈テレビ・ラジオ番組〉
Fukushima ‒ die endlose Katastrophe (Fukushima ‒ The Endless Disaster) “WELTjournal” , 2021/03/10, TV ORF2 Atom Gypsies.
Arbeiter in japanischen Atomkraftwerken (Workers in Japanese At omic
Power Plants) 2018/08/27, German Public Radio SWR2 など
〈著作〉
『日本ーー変化する島国』(2019年)、『日本レポート』(2011 年)など

ブラントナーさんは、まず欧州における「Fukushimaに関する報道」の質的・量的な違いについて詳細に検討を行いました。
それにより、「原発を所有するイギリスやフランスでは、福島の原発事故の報道はあまり多くなかったり、すぐ報道されなくなったりしたこと」、それに対し「オーストリアを含むドイツ語圏では比較的に頻繁かつ長く報道され、またそれをきっかけに全原発停止という政策決定がなされた(ドイツ)」という大きな違いを確認しました。
このような違いは、これまで日本においてもあまり明らかにされてこなかったのではないでしょうか。

当日の様子

本シンポジウムでは、ブラントナーさんがこれまで継続的に行ってきたFukushima取材の総括的なお話からはじまり、最後は参加者からの質問にもお答えいただきました。

ブラントナーさんによる講演では、単に研究者による学問的なレクチャーにとどまらない視点がいくつも共有されました。

各国でのFukushima報道の実態を比較することから示唆された内容は、参加者に「日本の社会問題を海外の視点で見ると全く違った風景に見えること」を改めて実感させたように感じます。
日本で報道されているFukushimaの情報には馴染みがあっても、海外の報道内容、ましてやその内容や報道期間などの違いについて触れる機会はとても少ないのではないしょうか。
Fukushimaについての多様な報道の実態をお聞きすることは、Fukushimaを眼差す私たちの視野を広げ、その見方を問い直すきっかけとなりました。

また、福島の作曲家による「フクシマレクイエム」、ウィーン在住の日本人現代アート作家「Hana USUI」とのコラボレーション作品をご紹介いただいたことで、社会問題はアートのテーマになることを認識することができました。
今回の参加者一人ひとりが、実際に映像作品や音楽作品を見て、聞いて、思いを寄せることで、社会問題に対する多様な視点を得ることができたのではないかと考えています。

それぞれの作品を制作されたお二人もオンラインで今回のシンポジウムにご参加いただいており、最後にはご登場いただきました。参加者にとっても作品をより身近に感じることができたのではないかと思います。
オンライン・対面のハイブリッド開催の良い点も強調されたシンポジウムでした。

最後に

今回のシンポジウムは、ボランティアセンターの副センター長である伊藤 実歩子先生のコーディネートにより開催いたしました。

同じく伊藤先生が開催に携わった公開シンポジウム「Hiroshimaを伝える——海外メディアと被爆者の証言——」(主催:本学 人文研究センター/共催:文学部 教育学科)と併せた一連の企画は、事前に意図したわけではないものの、ロシアによるウクライナのサポリージャ原発への攻撃に対する世界的不安、あるいは広島で開催されたG7での各国首脳による広島平和記念館の訪問などと時期が重なったことで、参加者の関心が高い中で、多様な視点を共有することができたように思います。

今回は、学内にとどまらず学外の多くの方にご参加いただくことができました。今後もボランティアセンターの活動だけでなく、本学教員による社会問題に対する研究などとも重ね合わせながら、より多くの方にその取り組みを発信していければと考えております。

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