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援農・交流・調理・振り返り…高畠での濃密な4泊5日の記録|農業体験in山形県高畠町

『農業体験 in 山形県高畠町』は、有機農業の先駆者である山形県高畠町をフィールドに、「農」の現場で様々な人とつながり、実際に農作業に汗を流しながら、環境・生命・食と自分たちの生活の関わりについて考えるプログラムです。
1989年から始まった伝統あるプログラムですが、2020年からはコロナ禍の影響で中止が続いていました。

そして今年、これまでずっと学生による援農活動の受け入れ先になっていただいていた「農事組合法人 上和田有機米生産組合」の方々に引き続きご協力いただき、9月5日(火)〜9日(土)の日程で無事4年振りに開催(再開)することができました!
例年実施していた民泊(1日分)を除く、4泊5日での開催でしたが、15人の学生と3人とスタッフが多くの方にお世話になりながら濃い時間を過ごしてきました。

4年振りの開催となった今回の農業体験はどんな活動になったのでしょうか?
援農活動、高畠の方々との交流、集団生活など、高畠で過ごした日々についてまとめましたので、ぜひご覧ください!


東京駅に集合!

まずは東京駅に集合し、新幹線で高畠へ出発!
誰かが乗り遅れたらどうしよう…と、スタッフは不安でいっぱいでしたが、皆時間よりも早く到着し、無事全員で出発することができました。

高畠駅に到着!

高畠駅到着後は、お迎えに来ていただいた「農事組合法人 上和田有機米生産組合」の組合員の方々にご挨拶させていただき、早速それぞれの車で援農先に向かいました。

■援農活動で汗を流す

学生たちは、初日から4日目まで、それぞれ別の農家に受け入れていただき、援農活動を行いました。
農家によって栽培している作物が違うため、毎日新鮮な気持ちでそれぞれの特色や苦労を身をもって学んでいきます。

かぼちゃを収穫している学生たち
収穫したかぼちゃの泥を拭き取りました

今年は酷暑が続いたことで、作物に高温障害が生じたり、例年よりも生育スピードが早まったりするなどの影響があったようです。
稲の成長も例年より早まっており、稲刈りを間近に控えた田んぼは、黄金色に輝いていました!

黄金色に色づいた田んぼで作業する学生とスタッフ
まもなく行われる稲刈りに備え、ヒエを刈りました

農作業の合間の休憩時間には、新鮮な果物や手作りのスイーツなどをいただきました!

休憩中にスイカとりんごをいただく学生とスタッフ

お昼ごはんをいただいた後には、お昼寝の時間があるところも。農家によってライフスタイルが少しずつ異なっており、それらを体験できたことも学生にとって大きな学びだったようです。
援農先から帰ってくると、学生同士でお互いがそれぞれの農家でどのように過ごしたかなどの情報交換をしていました。

味噌の原料となる大豆畑で作業する学生たち


強く根を張った雑草を鎌で刈りました

今回は、初めて「上和田有機米生産組合」の事務所にも学生を受け入れていただき、商品ラベル(シール)の仕分けなどのお手伝いをさせていただきました。

事務所には引っ切り無しに電話がかかってきており、今年のお米の状態を聞かれたり、新米の注文を受けたりしていたようです。その様子を見た学生たちは、「上和田米」に対する全国各地の販売店や消費者からの関心の高さ・期待、そして信頼を改めて実感していました。

事務所でラベル貼りを行う学生たち
事務所の皆さんと「上和田米」と学生たち

どの援農先でも、初めて農作業を体験する学生のペースを考慮して作業の計画をしてくださっていたため、重い熱中症で倒れる学生もなく、全ての援農活動を無事に終えることができました!

■高畠に住む方々との交流を通して、人生を考える

農業体験期間中には、高畠に住む方々と交流させていただき、それぞれの視点から「⾼畠」「農業」「ご⾃⾝の⽣き⽅」等についてお話を伺いました。

▼交流会にお越しいただいた方々
※5〜7日は⼣⾷後の時間、9⽇はお昼の時間に実施
5⽇(⽕):上和⽥有機⽶⽣産組合 渡部京⼀組合⻑
6⽇(⽔):⾼畠在住の⽴教⼤学卒業⽣の方々
7⽇(⽊):上和⽥有機⽶⽣産組合 ⻘年部の方々
9⽇(⼟):⾼畠町 ⾼梨忠博町⻑、上和⽥有機⽶⽣産組合 渡部宗雄相談役

渡部京一組合長との交流会

初日の夜は、「上和田有機米生産組合」の渡部京一組合長にお越しいただきました。
一農家としてのご経験だけでなく、組合として販路を築いたり、インボイス制度に対応する仕組みを整えたりといった組合長ならではの視点からのお話も伺うことができ、これまで見えていなかった農業や農家を支える仕組みについての課題などについても知ることができました。

立教卒業生との交流会

高畠に住む立教卒業生の方々との交流会では、移住された経緯や実際に住んでみて感じたことなどについての質問が多く出ていました。
2つのグループに分かれてお話をお聞きしましたが、就職、移住、挫折、結婚など、一人ひとりの人生の中に様々な転機があり、そこでなぜその選択をしたのかなどをお話しくださっていました。

高畠に住む立教卒業生の方々との交流会①

学生時代に農業体験に参加していた卒業生からは、当時の農業体験の様子やそこで感じたことなども伺いました。

高畠に住む立教卒業生の方々との交流会②

「上和田有機米生産組合 青年部」との交流会

青年部の方々との交流会では、農家になった経緯や農業の魅力と大変さなどについての会話が多かったように思います。
実際に援農活動をしてみたことで新たに感じた疑問などについても話題にあがっていました。

今回ご参加いただいた青年部の方々は、「実家が農家」という方が大半でしたが、それぞれ工業高校出身だったり、一般企業に就職していた時期があったりと、農業と距離をおいて生活をしていた方も多く、学生たちは驚いていました。

「上和田有機米生産組合 青年部」の方々との交流会

高梨町長・渡部宗雄相談役との交流会

最終日には、高畠町の高梨町長と上和田有機米生産組合の渡部宗雄相談役にお越しいただき、今年が「高畠町での有機農業発足50周年」の年であることも踏まえて、その歩みや現在の高畠町における農業の取り組みについてお話しいただきました。

ちょうど50年前の1973年、高畠町での有機農業が大きく進めるきっかけとなったのが「高畠町有機農業研究会」の発足でした。
当時、農業の近代化の影響により化学農薬・化学肥料の過剰投入などが行われましたが、それらは同時に人間の生命や健康にダメージを与えていました。
そのような農業のあり方に疑問をもった若い農民たちが立ち上げたのが「高畠町有機農業研究会」です。

お二人のお話で印象的だったのは、これまでの歩みに大きな影響を与えた多くの方々のお名前が出てきたこと。
もちろん私たちがお会いしたことのない方々ばかりなのですが、お二人はそれぞれの顔を思い浮かべるようにお話しされており、多くの先人が関わって現在の高畠町の有機農業があるのだと強く感じた時間でした。

高梨町長と渡部宗雄相談役のお話(中央左が高梨町長、中央右が渡部宗雄相談役)

高梨町長からは、農業に関する統計資料をもとに高畠町として力を入れていることなどについてもお聞きすることができ、農家だけでなく、高畠町全体として有機農業を大切にしていることを実感しました。

■高畠での生活はトラブルばかり!?

この農業体験の期間中は、「ゆうきの里・さんさん」を利用し、男子棟・女子棟①・女子棟②に分かれてコテージ3棟に宿泊、食事や振り返りなどの基本的な活動は民俗資料館内で行いました。

自分たちで調理する!

朝食・夕食の調理は5つ(+スタッフ)のグループに分かれて実施。援農先でいただいてきた野菜などを使いながら、18人分の食事を用意しました。
お米はもちろん上和田米。そこにおかずと汁物、果物が毎食並びました。

毎食、五分搗きの上和田米を電気窯で炊きました!
ある日の朝食づくり。何をつくっているのでしょうか…?
配膳や後片付けも自分たちで行います

高畠での生活が始まったばかりの頃は、7合炊いたご飯が余ってしまう状態でしたが、1升、1.5升と、次第に炊く⽶の量が増え、それらを完⾷するように。⽇頃朝ご飯を⾷べない学⽣も、⾼畠での⽣活の中で3⾷をしっかりと⾷べるようになりました!

学生とスタッフが調理した品々

ちなみに、野菜や果物を差し入れしてくださった農家の方々は、様々な賞を受賞されています。その贅沢さは言うまでもありません。
シャインマスカットのような高級ぶどうも、ありがたいことに毎日食べきれないほどたくさんいただきました。

”みんな”で生活する!

学生によっては、集団生活自体への不安も感じていたようで、最初は互いに緊張していた様子でした。それもそのはず。2020年以降は新型コロナウィルス感染症の流行により、体験の機会が失われてきました。今回の参加学生の多くが高校の修学旅行が中止になったり、合宿型の課外活動ができなかったりと、その影響を受けてきた世代でした。

しかし、実際に高畠での生活が始まると、学生たちの関係性をぐっと深まっていきました。初日に不安そうな表情をしていた学生もあっという間にみんなに馴染んでおり、今回の農業体験で初めて出会ったということを事実を疑うほどに打ち解けていました。
寝食を共にすることで、学年や年齢も関係なく、互いの得意なこと・苦⼿なことを理解しながらフォローし合うような関係性になっていったように思います。

ただし、自然に囲まれた中での集団生活にハプニングはつきもの。
夜間はコウモリが出現しないか怯えたり、資料館に侵入したアブと虫網で格闘したり、朝食の時間に料理が間に合わずみんなでカバーし合ったり、援農活動で日を追うごとに筋肉痛の部位が増えていったり、毎日何かしらの事件が起きる中で、一人ひとりが逞しくなっていきました。
そして、それら全てが忘れられない思い出になりました。

どんなことを考えた?どんなことを感じた?

毎夜の振り返りの時間の中では、⾃分が取り組んだこと、お聞きしたこと、そこで感じたこと、整理しきれないほどの学びと気付きを自分の言葉にして、伝え合いました。
自分の体験を言葉にすることは簡単ではなく、自分の考えを表す適切な言葉・表現が見つからなかったり、自分自身の体験をまだ整理できていなかったりすることもあったと思いますが、学生たちはそのようなプロセスを通して、より自分自身に向き合うことができたのではないかなと感じています。

また、例え同じ援農先で同じ作業をしていても、そこで考えたこと・感じたことは人それぞれ違います。
だからこそ、それらを毎日共有しあうことで、自分にはない価値観や考え方に触れながら自分の視野を広げていくことができました。

夜の振り返りの様子。みんな眠そうですね笑

■お世話になった方々に感謝を伝える
(サプライズも!)

4日目の⼣⽅から夜にかけて、学⽣たちが援農活動や交流会などを通して学んだこと・感じたことなどをお世話になった⽅々に伝える「発表会」、そしてお世話になった⽅々への感謝をお伝えするために⼿作りの料理でおもてなしをする「感謝交流会」を開催しました!

発表会

「発表会」では、援農活動や高畠に住むの方々との交流、高畠での生活を通して感じたこと・学んだことを、グループごとにまとめて発表しました。

援農活動を通して事前学習で学んできたことを実際に目の当たりにすることもあれば、自分たちが調べてきたものとは異なる現実に直面することもあったようです。

実際に経験してみたからこそ感じられたこと、実際にお話を伺って知ったこと、高畠に来なければ分からなかったことなどをそれぞれの言葉でお世話になった方々にお伝えしました。

感謝交流会

お世話になった方々をお招きして開催した「感謝交流会」では、学生たちが分担して準備した以下の料理でおもてなしをしました!

  • 塩昆布とツナ缶の炊き込みご飯

  • カニクリーム春巻き

  • 野菜の焼きびたし

  • なすとじゃがいもと豚肉の甘酢炒め

  • スイカゼリー

有り難いことに、お世話になった方々からも芋煮や様々なドリンクをいただき、豪華な食事が並びました。そしてそれらを楽しみながら、参加者が一言ずつ話し、4日間をみんなで振り返りました。

感謝交流会の最後には、学⽣たちが隠れて練習してきた「カントリーロード」の合唱・合奏を披露。アンコールをいただき、2回⽬は交流会参加者全員でカントリーロードを熱唱しました。

みんなでカントリーロードを熱唱!

最後に

今回、「農業体験in山形県高畠町」を4年振りに実施することができましたが、その裏で受け入れ先である「農事組合法人 上和田有機米生産組合」の方々には様々な調整や準備にご協力・ご尽力いただきました。
過去の実施時よりも慎重になった分、より多くのご苦労があったことと思います。

また、交流会にも多くの方が参加してくださり、それぞれの立場から貴重なお話を聞かせていただきました。個人的なエピソードなどもたくさんお話しいただき、学生たちも自分の将来を考えながら耳を傾けていたように感じました。

コロナ禍の中止期間でボランティアセンターのスタッフも大きく入れ替わる中、多くの方々のご支援・ご協力なくして再開することはできませんでした。
改めまして、深く御礼を申し上げます。ありがとうございました。

感謝交流会の集合写真。多くの方々が集まってくださいました!

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