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ヒラクフクシ vol.1 《最高にイケてる高齢者の写真展》 文字起こし

こんにちは、ゆーみるしーです。3月12日にヒラクフクシ vol.1 《最高にイケてる高齢者の写真展》というイベントがありました。そのイベントの文字起こしを書いたのでアップします。

※録音していたわけではないので発言そのままではないです
※主催者、登壇者に許可をとった上、加筆修正しています
※オンライン(ZOOM)とオフラインで同時配信

ファシリテーター:小泉 祐司
ゲスト:山田 修平

ファシリテーター小泉さんの自己紹介と「ヒラクフクシ」開催への思い

小泉さんのバックグラウンド

いばふく
福祉を楽しくしようというイベント。茨城だけでなく世田谷や福島でも開催している。いろんなアイディア出しをして楽しむイベント。
地域福祉計画 
奈良県にある自治体の地域福祉計画をやっている。プランナーとして福祉に関わっている。


小泉さんがヒラクフクシを開催しようと思ったわけ

いばふく超作戦会議の開催を重ねるうちに、福祉ってもっと広く捉えていいんだなと考えるようになった。福祉って一人一人が楽しいとか、幸せである状態を実現することであって。英語で福祉を表すwelfareって「よい旅」っていうのが語源なんですよ。まさに人生とは時のつながりで、続けていくことが大切。
普段の生活からも、あっこういうことも福祉なんじゃないのかなという気づきが得られたし、そう考えたらもっといろんなひとが福祉に関われるんじゃないかな、と思った。
じゃあ福祉をどうひろげていくかって考えた。「いばふく」にくるのは、福祉職の人がおおい。そして僕は場(Tsukuba Place Lab)を運営しているから、ここで福祉という文脈で、福祉職の人以外とも連携できる場を作れたらいいと思った。
そう思って始めたのがヒラクフクシ。

注)Tsukuba Place Lab:筑波大学すぐそばのコワーキングプレイス。異なる価値観が出会う、アイデアを共有できる場。人と人とを繋ぎ、やりたいことを実現していくための場。つまり何をやってもいい場所。


なんで山田さんをゲストに?

最高にイケてる高齢者の写真展をSNSで見たんですよ。めっちゃSNS回って来てた!でもこれ気づいたら3日しかやってないじゃんって(1月24日~1月26日)。急いで最終日に見に行った。そこで山田さんにナンパちっくに話しかけて、イベントこんなのやりたいんですけどって言ったら快く引き受けてくれた。だから対面で会うのまだ2回目(笑)

山田さんのお話

🚩ゲスト紹介
山田 修平 (Shuhei Yamada)さん
1996年生まれ、香川県出身。洋服と音楽と高齢者を愛している理学療法士。ライフワークは「歳を取ることが楽しい世界」を創ること。最高にイケてる高齢者の写真展などを手掛ける社会派クリエイティブディレクター。Growing Old Together 代表。

やってること、やりたいこと、福祉を浸透させていくには、というお話をしていこうと思います。
自己紹介・やってること
ライフワークは「歳をとることが楽しい世界」を作ること。僕も小泉さんと同じで、企画とかコンセプト作りをしてる。職業は理学療法士。理学療法士というのはというのは、病院でリハビリなどの支援をする専門職。

高齢者について考えたこと

僕は怒りと偏愛という気持ちを大切にしていて。自分ごととしてものを捉えるようにしている。誰かのためじゃなくて、自分のためにやって、結果として誰かのためになれたらいいと思った。

僕は、大学で理学療法士をやっていた。そのうちに、高齢者の魅力を感じるようになった。高齢者というと、世間では認知症、高齢ドライバー・・・などネガティブな印象が多い。それに違和感を感じた。怒りと偏愛を感じた。
そしてその違和感についていろんなことを考えた。
「なんで高齢者ってこんなに印象が悪いんだろう」
「なんで歳をとるってネガティブにとらえられがちなんだろう?」
自分に何ができるかと考えたが、何をやればいいんだろう・・・と思った。でも、何かやらないと自分の子のエネルギーがもったいないと思ったんですよね。

そして「そもそも歳をとることってそんなに悪いことなのか・・・?」という考えに行き着いた。
ちっちゃいころは歳をとるって嬉しかったんですよね。みんなに祝ってもらえるし、誕生日プレゼントとかもらえるし、なんか大人になった気がするし。でも父とか母を見てるとそうじゃない。50超えると、「はあ・・・また年取っちゃった・・・」って感じで全然うれしそうじゃない。自分がまだ若いからわからないだけかもとも思うけど。

精神的にも身体的にも変化が大きいからネガティブになるのでは?と考えた。でも、地球で生きている限り年老いていくんですよ。コントロールすることは不可能。そんなコントロールができないものに対して悩むとかはもったいないんじゃないかと思う。じゃあ変えられるところを変えていこうよって思った。

歳をとってもできることあるし、歳をとったからできることもあると思うんですよ。それを考えることで高齢者へのリスペクトになるのでは?と思ったんです。加齢にあらがうわけじゃなくて、年齢をたいせつにかかえながら歩いていく感じ。

なんで写真展をやろうと思ったか

ビジョン
「Positive Aging World」
歳を取ることが楽しい世界へ
ミッション
「Thanks to elderly people」
高齢者に感謝を

「Update Aging」
加齢をアップデートする

高齢者大好きだからみんなに伝えたいと思った。好きなものはみんなで話したいですよね。だから僕はみんなと高齢者いいよねって話をしたいと思った。

でもどうやって魅力を伝えよう?

そこで僕の場合はなんで高齢者が好きになったんだろう?というのを考えてみた。
僕は祖父母と一緒に住んだことはない。父方も母方も住んでいるところが遠くて1年に1回くらいしか会わなかった。だから昔は高齢者に嫌悪感を抱いていた若者の一人だった。なんで好きになったかって、触れ合ったことが一番だと思う。触れて初めてわかった。

興味なかった人に高齢者に触れてほしい。でも現実そんなに高齢者にふれあう機会はないですよね。道で出会った高齢者に話しかけるのも変だし、ボランティアもなかなか踏み出せない。この状況は外国人と一緒だと思うんですよ。道ですれ違った外国人に話しかける時、「なんて話しかけよう。どうすればいいんだろう。」って戸惑いますよね。それとおんなじ。僕らは知らないものと関わる時迷うんです。

じゃあどうしよう?

そのときたまたま大学の時に買った一眼レフが目に入ったんですね。そこで、写真ならできるかも、とシンプルに考えて始めたんです。それが結果的に写真展につながった。

意外と高齢者かっこいいかも、ちょっと街中で話してみようかな、という気持ちにさせたい。みんなに僕が高齢者が好きだって気持ちを共有したかった。

やってみたら思いの外拡散されて、やってよかったという気持ちになった。SNSでもいろんな人がプロモーションしてくれた。勝手に広がっていった。テレビでも紹介された。
お客さんは100人くればいいと思ってたけど500人くらい来た。いろんな人が来てくれた。
「福祉なんてしらねーよ」っていう20〜30代の若者をターゲットにして、だから原宿を選んだんだけど、50代60代の人も来てくれた。しかも、近くの福祉施設の職員さん・利用者さんたちが散歩としてみんなで来てくれた。これはやってみなかったらわからなかったことだった。

始めに言った、偏愛とか怒りとか、自分の気持ちから作った企画は最後まで実行できる。誰かのためにやるっていうのはきついこともある。そういうことはやめたっていいんですよ。僕がやるのをやめても誰も困らない。でも自分が好きだったから。やりたかったから実行できた。もし偽善的な気持ちでやってたら続かなかったかも。

掛け算で社会課題を解決する

社会課題っていっぱいあると思うんですよ。ゴミ問題とか、ジェンダーの問題とか。その社会課題を自分ごととして捉えられることを探す。社会課題と自分の専門、クリエイティブ、趣味・思想・哲学を掛け合わせる。でも掛け合わせるものは本気で怒れること、好きなことにすること。

例えば、今だったらはやりのVRとか。VRって流行ってるけど、VR好きじゃない人だときついと思う。好きじゃないとできないと思う。
自分が好きじゃないといい企画は生まれない。

「福祉をヒラクには?」

シェア 「課題を共有する」

例えば高齢化は子供でも知っているような課題。でもそれを自分ごとに感じて何かやろうと思っている人はほんの少し。
ほんとは自分ごとなのに自分のこととして捉えられてない人をどう巻き込んでいくか。

「福祉をヒラクには?」という問いに対する僕の答えは
「ムーブメントをつくること」

福祉におけるムーブメントのポイントは、3つだと思う。
1. 強制しない・自然発生を促す
みんなで地域盛り上げようぜってやっても興味ない奴がくると盛り下がる。矯正はしないほうがいいかなって思っていて。竜巻のイメージ。竜巻が大きくなれば勝手に巻き込まれていく

2. 楽しい おもしろい わくわく
楽しそうに踊ることが大事、本気で踊れば誰かが最初のフォロワーになってくれる。

3. 福祉って言葉は使わない
言葉って大事。福祉って言葉を使った瞬間「俺と関係ないや」って思っちゃう人はいる。僕がやった写真展、実はリハビリテーションの要素を使っていて。でも「理学療法士がやった写真展です」って言っちゃうと同業しかこないんですよ。

最初にリーダーになる人がいるはずですね。でもアイディアを考えた人がえらいわけじゃない。仲間たちがいたから、最初にいいじゃんて行ってくれた人がいたからできた。もし周りで踊っている人がいるのなら、そしてそれが楽しそうだと思うのならば、巻き込まれてみて。最初に踊る人は 変人扱いされるリスクがある。でもきっと楽しいから踊ってたのだと思う。その結果、周りに人が集まって来た。
本で読んだことだけど、リスクとデンジャーは違う。デンジャーは危険なこと、デンジャーな場所には行かない。でもリスキーな場所は行ってみてもいい。

まとめ

僕の企画のやり方。

1. まず、自分の感情に向き合う。
怒りを感じることや楽しいことは一人一人ちがう。解決したい課題をみつける。

2. 考えながら動く
考えたまま動けません、ていう人は多い。もちろんかっちり計画をたててコンセプトを固めてからやるという人もいると思うけど、僕の写真展は考えながらやった。もしかしたらこんな風に社会に役立つかも。こうしたら見てくれるかも、とやりながら考えた。


3. アウトプットを出す
もし続けるならアウトプットを出すことが必要。例えば高齢者の荷物を持つとか、友達に好きなことを話すとか。なんかアウトプットを出せば結果が出る。友達が楽しそうに話を聞いてくれた、とかつまんなそうだった、とか。

4. 振り返り
結果を振り返る。なんでそういう結果だったのか。

その結果をうけて自分の感情をもう一回考える

これを繰り返すと本当に自分のやりたいことがみつかると思う。
写真展はこのまとめで振り返りの段階。なんでこんなにお客さんが集まったか、とか考えてる。もっとやりたかったこともあったけどリソースの関係でできなかったことも。まだまだ伸び代がある企画だと思っている。

これからも楽しく面白く福祉をヒライていけたらいいなって思ってます!

クロストーク!

小泉「ZOOMと一切コミュニケーションとってないけど大丈夫かな。コメントしてね。」

小泉「まず思ったのは、『ムーブメントを作る』っていうのはまちづくりの文脈でも使えそうって。イノベーター理論って言って、はじめに何かやる人をイノベーター、それに早い段階でJoinする人をアーリーアダプターっていう。アンテナが立ってる人だね。それが大衆に伝わると文化になる!」

小泉「僕から最初に一個聞きたいんですけど。山田さんは感情を大事にする人ですよね。
つまんなかったらやらないひとですか?」

山田「やってみてつまんなかったらやめる。やってみたいと思わないとやらないけど。もちろん社会人として会社で頼まれたことはやらないといけないですよね(笑)。でもほんっっっっとに楽しくないことはやりたくないから「もっとむいているひとがいるかも。代わりにこれやります」と伝えるかも(笑)。
小泉「『感情』というワードがとにかく出続けた30分だったと思うんですけど、いつから『感情』優先なんですか?そしてなんで優先なんですか?」
山田「何だろう・・・企画がきっかけというか。考えたことなかったな。自然と大事にしてたと思うんですけど。社会人2年目んですけど、新人の頃もっと社会の役に立ちたいと思っていた。そして、どうせなら楽しいことをやりたいって思った。
企画をやってみて逆説的に「ぼくは感情を大事にしていたからこれをやったんじゃないか」と気づいた。

小泉「それよくわかります。僕、基本後付けなんですね。例えば、最初に『いばふくをやって、こういう気づきを得たから、こういうイベント作りました!』って喋ったんですけど、全部後付けです(笑)。それで福祉に関わっていったら写真展やってることを知った。『へ〜山田さんこんなことやってるのか〜トークイベントしたーい』的なノリでイベントつくりました(笑)。

山田「僕『死ななければいい』という楽観主義なんですよね。最悪死ななければいいやって。死ぬこと以外のことはまあだいじょぶだろ、ってタイプ。だからけっこう気ままに動いてる。」

小泉「死ぬこと以外はかすり傷ってやつですね(笑)」

参加者「写真展をしたときに、介護施設のおじいちゃんたちが来たって言ってましたよね。おじいちゃんたちは写真をみてどう思ったんだろう?」

山田「いらしてたのは認知症の方だったんですよね。この写真展は前提として、おじいちゃんおばあちゃん向けにつくってない。原宿でめちゃくちゃ混んでるし、駅から徒歩15分くらい。だから(高齢者が来るのは)全然予想してなかった。批判されるのかなあ・・・撮影したのは私たちとは違う世界の人なんでしょ、って思われるかも・・・と思ったんですけど、「私もこうなっていいのかしら」とか思ったよりも批判的ではなかった。喜んでくれて、自分も撮ってほしい、遺影にしたいとか言ってくれる人もいた。遺影とか自分でいいやつ選びたいじゃないですか。カラーがいいし。好きな服着てるやつがいいし。棺桶はいるときも好きな服着たいし。」

小泉「遺影いいですね。高齢社会で、火葬場が忙しい、財政が厳しい・・・という社会課題もある。葬式ができない人が増える、という現象が将来起きる。そういう(遺影)ニーズ生まれそう。山田さんが将来そういうサービスはじめるのかな(笑)。『終活』って言葉もあるけど、人生の終わりをちゃんと迎えるお手伝いっていうか。って喋りながらZoom落ちてるなあって思ってたんですけど。ごめんなさーい!」
参加者「写真を撮るにあたって、撮る人を決める基準てありますか?」
山田「ターゲットは無関心な若者だったからまずは見た目のインパクトが大事だと思った。しわしわのおばあちゃんでもぼくらは可愛いって思うけど、若者はそうは思わないかもって。だから色味がいい服を着ている人を選んだ。ぱっと見のインパクトを与えたかったから。そうじゃないと無関心な人はふりむかないと思った。それで、『素敵な高齢者を撮影しています。すごい素敵だったので撮らせてください。』って声かけた。ナンパみたい(笑)。『同じような高齢者の光になります。1枚だけ撮らせてください』とかなんとか食い下がって撮ったこともあった。」

参加者「どうやって対象者をみつけてたの?」

山田「ちゃんと説明して、国家資格もってるので(理学療法士)それも使って。高齢者ってリハビリかかってた方多いので理学療法士っていうと通じるし、信用してもらえる。粘り強く説明して写真撮らせてもらった。
ちなみに病院で飾ろうかな、とも思ってた。自由な服装ができない人が多いから。実際に展示してる。」

参加者「何人声かけた?」

山田「最初はめっちゃ断られた。無理やんて思って、写真撮れずに呑んで帰ることもあったんですよ。3人くらいで撮りに言ってて。僕が写真。喋ってることの記録に1人。あとはタイミングをみはからいつつ荷物を持つ人。銀座で撮ってたんで、めっちゃ混んでるんですよ。だから周りをみつつ今だってタイミングとる人が必要だったんです(笑)。

小泉「銀座で突然若者に写真撮っていいですかって声かけられたら、まあ怪しいっすわ。」

山田「なんで断られたのかな、って考えたんですよね。どやったらうまくいくか考えた。何回か成功するとうまくいった例ができる。そこからパターンを見つけていった。まず、メンバーでも変わってくる。男2人だと怪しまれる。男女一人ずつも厳しい。最終的に、男男女の3人が一番撮れた。女の子は150cmくらいの小さい子で、看護師だった。『看護師です』って言ったら信頼度高い。」

小泉「みんなが知ってる職業ですもんね。」

山田「最後には6割くらい取れるようになった。まあそれでも4割くらいは断られたんですけど。枚数としては100枚くらい、人数にして50人くらい撮った?数えてなかったけど。」

小泉「そう、写真展観に行って、銀座でとるんだ〜って思った。その場で撮ってたんすね。」

山田「あれはみんな普段着です。セッティングして撮ったわけじゃない。」

小泉「みんな生き生きしてた。華麗な加齢をしてるんだな〜って人ばかりだった。喜怒哀楽がでてるのはその場で撮ってるから何だなって思った。」

参加者「撮れるってなってからなんて声をかけた?(インタビュー内容)」

山田「最初は「人生とは何ですか」とかやってたんですよ笑。でも項目をきめてやっていくとみんな身構えちゃうんですよね。職業を生かして自然に話すようにした。「何しに銀座にきたんですか?何買ったんですか?今日天気悪いですね」とか話して「天気が悪いと膝が痛くなるのよね」とか聞けたらこっちのもんで、「膝痛いってことは整形外科とか行くんですか?」とか話を広げていける。これ問診と一緒なんですね。リハビリって40分から1時間くらいで午前と午後それぞれ入ってる時もある。だから1日に2人1時間くらい初対面の人と話さなきゃいけないんですね。だから知らん人と1時間喋るスキルっていうのを仕事柄もってたんですよ。それをうまく使いながら本当に聞きたいことを聞いて言った。意外といける。

参加者「ある程度コミュニケーションをとってから写真を撮った?」

山田「いや、最初に撮った。見せながら『いいですね〜綺麗ですね〜』って話をしていく。そうするとお互いの信頼性が高まる瞬間がある。そのうち「実は私ね」って話をしてくれることも。「実は私ガンで」とか。そしたらこっちも聞きたいことを聞くという流れを作っていく。

小泉「写真を見せるところから自然な会話を始めてるんだな。フォームとか決まってるものだと名前は、とか年齢は、とか決まり切った答えしか得られない。そこを取っ払ったから自然な話が聞ける。」

小泉「出会った人の中でこの人印象的だったな、って人いますか?」

山田「みんなそれぞれ印象には残っているんですけど。う〜ん。」

小泉「感情に訴えかけられた人、もしいれば。」

山田「さっき言った、ガンだったという話をしてくれたおばあちゃんかな。赤いノースフェイスを着たおばあちゃん。

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ぱっと見赤いしすごい明るい人そうだなって思って声かけたんです。最終的に『あんたたちの写真も撮りたいからそこ並んで!』って言ってくれるような明るい人だった。でも話を聞いてみると、何も困ってなさそう、楽しく生きてそうって思った人でも、何年か前にはガンを患ってました。とか何かしらネガティブなことが出てくる。銀座って国立のがんセンターがあるんですよ。がんセンターに行ったあとに銀座にくるのが楽しみだ、とかって言ってて。
そういう、ぱっと見じゃわからない、ということが掘り下げられた人だった。高齢者でも悩むんだよな、俺らと同じように歳を重ねてきたんだよな、って。当たり前なんですけど。そういう当たり前のことに気づけた。」

小泉「『マダム』という言葉が似合いそうな素敵な人ですね。さっき言ってたこと、当たり前のことなんですけど、忘れるんですよね。「高齢者」だけじゃなくて「学生」って言葉とか。小学生、中学生、高校生、大学生、大学院生、大学院生のなかでも修士課程、博士課程があって・・・学生って一括りにしがち。私とあなたは違うっていうのは忘れがち。写真展を観て思ったのはみんな違うんですよね。でも日常生活では忘れがち。「高齢者」ってくくりがちですよね。」

山田「ぼくゆとり世代なんですよね。小学校から中学までの9年間、土曜日一回も学校行ったことない。ゆとり世代の人います?(参加者何人か手を挙げる)
「ゆとり世代」って言われるのやだよね。ニュースで悪い人ばっかりにフォーカスされて「これだからゆとりは」って言われる。高齢者も一緒なんですよ。これだから高齢者はって言われる。あえて写真展の時は皮肉でタイトルに「高齢者」って入れた。おまえらの思っている高齢者とは違うぞって。

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アバンギャルドなデザインっていうか。みんなのイメージを超えていく。このバナーは、右にステレオタイプな高齢者、左にこんな高齢者もいるぞっていうデザインにした。言葉を大事にしてる。

小泉「言葉を大切にしてるのはなんで?」

山田「なんで。なんでだろ。コミュニケーションのツールだから?言葉一つで気持ち変わらないですか?『これしかない』って言うのと『これだけある』って言うのって印象違わないですか?自分がきつい時は「できる」と言って奮い立たせる。力強い言葉を使って若者を振り向かせたかった。「おばあちゃん」とか使っちゃうとゆるくなっちゃう。「華麗な加齢」っていいなと思って。まあダジャレなんですけど(笑)でもかっけーなと思って。見た目もいいし。『あなたは高齢者の魅力をまだ知らない』とか言われたら、えー?ってなるじゃないですか。」

小泉「文字も赤だったし、エッジをきかせてるんだろうなって。何やねんと思ってイベントページ見たもん。『最高にいけてる』って書いてあるけど、僕にとって『高齢者』と『いけてる』って言葉が遠かったんですよね。その文脈に興味が湧いた。どういうこと?って思った。これが『素敵な高齢者の写真展』とかだったら行かなかったかもしれないです。」

山田「来てくれた人は、医療業界の人が3割、業界の人ではないけど興味あるって人が2割。残り半分はぜんぜん関係ない人だったんですよ。たまたま通りかかった、きゃりーぱみゅぱみゅみたいな格好した学生とか(笑)。会場に多様な人がわちゃわちゃいる状態になった。そうすると「素敵ですねえ」とかって声かけあったりして、知らん人同士でコミュニケーションが生まれたりする。いままで福祉全然興味なかったきゃりーぱみゅぱみゅが理学療法士って言葉を知るかもしれないわけですよ。」

小泉「あと5分くらいで締めたいと思います。」

小泉「僕が最後にひとつ。
僕も言葉は気をつける。行政やってたから『やります』じゃなくて『やれるかどうか検討します』みたいな(笑)。
最初このイベントのタイトル「フクシガヒラク」にしようかと思ったんですが、「ガ」は違うなって。
僕はこのイベントで、自然と気がついたらフクシがヒラク状態になったら良いなって思ったんですよね。それで、イベント名の相談なんかしていたら、「ヒラケフクシ」ってどう?って言ってもらい、そこから、「ヒラクフクシ」に行き着きました笑
違う界隈の人間が出せる価値ってなんだろう。そう考えた時に「ひらけごま!」って感じで、勝手にひらけばいい。このイベントに参加した人だけでなく、広がって言ってほしい。
今は弱者に対してしか福祉って言葉使われてない。でも福祉はだれにでも使われる言葉。福祉って単語を解放したい。」みんなが楽しい状態、楽しいことをやって「あ、これ福祉なんじゃないかな」という状態を実現したい。今「福祉」は「文化」になっていない。」

山田「まず、自分が医療現場にいるという特殊な環境にいるということを自覚しなきゃいけないと思っていて。職場だと「高齢者いいよね」って言ったら同意してもらえる。でも友達に同じこと言っても「え?」ってなる。だからこの状況を変えるためにどうしたらいいかって考えて、まず他の社会課題の例を探した。例えばジェンダーの問題。ひと昔はオネエとかオカマって言葉はネガティブに使われてたけど、どっからかおもしろいってなった。キャズムを超えるって言うんですけど。ジェンダーの例でいうとマツコデラックスが流行ったときにキャズムをこえた、と思った。福祉業界にはまだマツコがいない。大衆のイメージがついてない。僕はそれは伸び代がある状態だとおもう。

小泉「山田さん、次何します? 僕は結構気になっていて。」
山田「写真展は盛況だったし、これからも続けたい。でも頻繁にやるのがいいわけじゃないと思うんです。1回やったからハードルができちゃった。それを超えてかないとって思うから、もっかい練る必要がある。一回一回ハードル越えてきたい。あとはグッズ作りたいんですよ。写真展ではクラファンでお金を集めたけど、物を売るっていう一番シンプルなことで写真展のお金を集めたい。」

次回予告

小泉「今回vol.1ということでこのイベントを開きました。普段vol. 0とかにしがちなんですけど。僕にしては珍しいんですけど、5ヶ月先のゲストまで抑えました!毎月やっていこうと思ってます。文化をつくるためには続けていかないといけない。無理してでも続けたいと思っていて。次回は「子供の孤立」がテーマです。子供が孤立しないような地域をつくろうよっていう活動をしている人です。次回もオンライン参加できます。

https://www.facebook.com/events/512520783034682/


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