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チョコレート事件

世の中がバレンタインだと浮かれていた中、
私たちの学校は絶賛テスト期間。

最終学年への進級がかかった大事な
学年末テスト。
チョコだのなんだの言ってる場合じゃないよ。


そして無事テストが終わり、
遅めのバレンタインが学校に訪れた。

昼休みはみんなでお菓子パーティーだし、
放課後はテストが終わった開放感で
遊びに行く人がいっぱい。

私? 私は、お菓子パーティーはするけど
真っ直ぐ帰宅組。
今日はもう疲れたから尚更早く帰りたい…。
そう思いながら電車に揺られること約20分。

咲夜さよ。」

駅に着くと後ろから声をかけられる。

「…なんだ、樹希たつきか…
 誰かと思ってびっくりした。」

樹希は幼馴染み。
それと同時に、私の好きな人でもある。
高校が同じだって知った時の喜びは
半端じゃなかったなぁ。

駅から家までは樹希と一緒。
まぁ、家が向かいだから当たり前なんだけど。


「あ、そうだ。ちょっと遅くなったけど
 はい、これ。」

そう言って差し出されたオシャレな紙袋。

「…ありがとう、?」

思わず疑問形でお礼を言ってしまう。

なんだろうこれ…。
少し中を見てみると

「!!これ、ほ、本当にいいの?!」

入っていたのは、私の大好きなお店の
チョコレート。

「前に好きって言ってたじゃん?
 それに、毎年咲夜から貰ってばっかだし。」

いやいや…私は好きであげてるだけなのよ。
ただの自己満足でしかないからね。
うわぁ…樹希からバレンタインに貰うのなんて
多分初めてじゃない?

「でもいつもホワイトデーにちゃんと
 お返しくれるじゃん。」

そう、この男しっかりお返しはくれる。
ただ私の気持ちには微塵も気づいていない
だろうけど。

さっきは少ししか見なかったから、
あのお店のチョコっていう情報だけだったけど
よく見てみるとこれは、

「メッセージチョコ…しかもリナリア…。」

ここのお店はバレンタインが近くなると、
というか確か2月中は、
毎年メッセージチョコレートなるものを
販売している。

私が貰ったのは、
リナリア・メッセージチョコレート。
リナリアの花がデザインされた箱に
花を象ったホワイトチョコレートが入っていて
そんなに安くはなかったはず。

なぜこんなに詳しいのかと言うと…
実は、これを買おうか凄く悩んでたから。
渡す相手はもちろん樹希。
結局 時間と心、あとお金に余裕がなくて
買わなかったけど。

「咲夜なら気づいたかな、俺の気持ち。」

え、あの、そんなことを言うってことは
期待しちゃってもいいんですか?

「本当に、私が貰っていいの…?」

「もちろん。むしろ咲夜じゃないと困る。」

なんて少し照れ臭そうに笑って言う樹希。

リナリアの花言葉は、" この恋に気づいて "

「……」

今までそんな素振り全く見せてこなかった
くせして、急にこういうことしてくるのは
なんなの??

「ちょっと、なんか言ってよ…
 恥ずかしいんだけど。」

これは珍しい、樹希が照れてる。

「ふふ、ありがとう。めちゃくちゃ嬉しい。」

可愛いなんて口が裂けても言えない、
言いたくない。

「咲夜。」

「ん?」

「…好きです。俺と、付き合ってください。」

私に向けられた真っ直ぐな樹希の視線。
今までだったら、目を合わせることは
きっとできなかった。

だけど、

「はい…改めてよろしくお願いします。」

想いが繋がる瞬間は、自然と合わせられる。

甘いチョコレートが連れてきた、
遅いバレンタインと少し早い春。

「樹希、好きだよ。」

今日くらい、いつもより素直になっても
いいよね。

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