憧れのふたり
「嫌じゃないの?」
よく言われる。そのたびに私は「何が?」と思う。
父と母は仲が良い。
結婚25周年を迎えた今も仲が良いのだから、きっと私が生まれる前もさぞ仲良しだったのだろう。その証拠として、アルバムは父と母が幸せそうに笑い合っている写真で溢れている。
2人はよくハグをする。
「おはよう」「行ってきます」「行ってらっしゃい」「ただいま」「おかえりなさい」「おやすみ」
人前でも恥ずかしがらずに手を繋ぐし、ハグもする。
だから遊びに来ていた友達からたまに、「りぃりちゃんのご両親って外国の人?」と言われたことがあったが、父も母も日本生まれ、日本育ち。一度だけ、父はハワイに行ったことがあるらしいが、そこまで海外と強い繋がりがあるわけではない。
それでも二人は愛を伝える。
「今日もかわいいね」
「今日もかっこいいね」
毎朝、こうして父と母は褒め合う。
それを知った人たちは皆、口をそろえて私にこう聞く。
「嫌じゃないの?」と。
多分、両親が仲良くて気まずいとか、色々な感情があるのだろう。
でも私はまったく、嫌じゃない。
っていうか、夫婦が愛し合っていて何が悪いの? 何が嫌なの? と思う。
誰かに愛情を持つって、私はすごいことだと思っている。
こんなにたくさんの人々がいる中で、
「この人が好き!」という人に出会うって、運命だ。
しかも好きな人に好かれるって、もう奇跡としか言いようがない。
宝石で例えるなら、ダイヤモンド並みの希少価値である。
その愛が25年以上も続いていて、
お互いを尊敬し合い、大切に想っている2人を私は敬愛している。
だから全然、嫌じゃない。
私もいつか、
父と母のような素敵な関係を誰かと築くことができたらいいな、と思う。
とても仲の良い2人だが、喧嘩をしないわけじゃない。
でもその喧嘩は、相手を理解したいからだ。そして相手に理解してほしいからだ。
だからちゃんと話し合い、和解する。
完璧な人間なんていない。
だから「合わないな」と思うことや「やだな」と相手に対し、感じることはあるだろう。
でも、そんな相手のちょっとヘンテコなところも許せる、愛せる。
それが本物の夫婦だな、と両親を見ていて思う。
私が生まれたことで、2人は「父親」と「母親」になった。
でも変わらず、父は母の「夫」だし、母も父の「妻」なのだ。
先日、2人はお揃いの老眼鏡を購入した。
同じ老眼鏡をかけて、
「一緒に歳を重ねることができて、幸せだね」
と微笑み合う二人は幸せそのものだ。
病めるときも、健やかなるときも
愛し合う父と母は私が憧れる、最高の夫婦だ。