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小説「まなざし」

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交通事故で聴力を失った女性、瞳美と彼女と生きることを選んだ恋人の真名人。音のない世界で、彼女のまなざしは何を語ろうとしていたのか。 普通の恋人と同じように愛し、すれ違い、味わうこ…
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#エッセイみたいな

まなざし(22) 伝えるということ

まなざし(22) 伝えるということ

7月11日。

「瞳美、久しぶり!」

大きく手を振って嬉しそうに駆け寄ってきてくれた宮本さんは、編集サークル『陽だまり』の友達だ。入院中サークルに顔を出せていなかった私は、退院した翌日に皆に会いに行った。メンバーが集まっての活動自体、週に一回か二回しかないため、ブランクのある期間はそれほど長くない。自分がいなかった期間を愁うよりも、自分の身体が普通と変わってしまったことに関して、皆にどう説明すれ

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