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「ゴミ箱じゃなくて、お腹を満たそう」。余剰食品を再分配するThe Real Junkfood Project

SHOCK TUCKでたびたび取り上げている、フードロス問題。
日本でもイギリスでもまだ大きな問題ですが、埋立地に送られて廃棄される運命にある食べ物がもう一度人の手にわたるチャンスを作る取り組みはたくさん行われています。

今回は、イングランド北部・リーズを中心に活動するThe Real Junkfood Project(リアル・ジャンクフード・プロジェクト:以下TRJFP)の施設を取材してきました。

「ゴミ箱じゃなくて、お腹を満たす」プロジェクト

TRJFPの始まりは、2013年にリーズでオープンしたカフェ。スーパーなどで廃棄されそうになっている食材を美味しい料理に生まれ変わらせて、支払いは「Pay as you feel(=お客さんが支払いたいだけの金額)」というコンセプトのお店です。

創業者のAdam Smithさんいわく、「"Pay as you feel"は、タダで食事が食べられるってわけではない。人や食べ物、その食べ物を作るために費やされた資源や時間の価値を考えた上で、自分なりにその価値に値段を設定するということだ」と。

これまでに5000トンの食材(=約1190万食分!)を再分配して廃棄から救い、この活動からインスピレーションを受けて始まった同様のプロジェクトは世界7カ国に120も存在するんだとか!

以前SHOCK TUCKで取り上げたロンドンのBrixton Pound Cafeも、TRJFPからアイデアを得たものだと思われます。

フードロスになる運命だった食材だけを販売するスーパー

そんなTRJFPですが、現在はカフェだけでなく「ソーシャル・スーパーマーケット」を運営しています。今回はそのスーパー「Kindness Sharehouse」を、同じくトビタテ生で大学の同期でもある友人とともに見学してきました。

倉庫のような見た目をしたKindness Sharehouse内には、スーパーなどから引き取った余剰食品が並んでいます。

スーパーを訪れた人は「日付・居住地の郵便番号・人数」を記録用紙に記入し、棚や冷蔵庫に並ぶ食品を好きなだけもらったら、穴のあいた箱に「Pay as you feel」で好きな金額をドネーションします。

一目で気付いたのは、パンの量の多さ!工場生産された食パンや、スーパーのベーカリーコーナーで作られたバゲットなど、賞味期限を過ぎて販売できなくなったものがたくさんありました。

その他には、一部がしなびたネギ、黒くなりはじめたバナナ、少しキズのついたりんごや洋梨などの青果がありました。冷蔵庫のなかには消費期限が切れる直前のハムや、カット野菜なども。

TRJFPが引き取って再分配する食品のルールは、「"消費"期限が切れていなくて、安全性に問題なく食べられるもの」。"消費"期限が食品の安全性を示す日付であるのに対し、"賞味"期限は味などの品質がベストな状態で保たれるとされる期間を示しています。

つまり、賞味期限が切れているからといって食べられないわけではないのですが、スーパーではたいてい賞味期限を過ぎた食品は撤去されます。また、消費期限が近づいた食品も、新たに生産された同製品が届くと入れ替えられることが多いようです。

さらに衝撃を受けたのは、冷蔵食品を一時保存する大きな冷蔵庫を見せてもらったとき。冷蔵庫内に並ぶボックスの中には、食品がぎっしり詰められています。

賞味期限が2020年と、まだまだ先のものもあるといいます。「スーパーの棚に一定期間陳列された」など、たったそれだけの理由で安全性や品質に何の問題もない食品が毎日大量に捨てられている事実を目の当たりにしました。

余剰食品を詰め合わせた、定期購買スタイルの「Freegan Box」

誰でも好きな時に来て好きなものを持って帰ることのできるスーパーに加えて、Kindness Sharehouseでは「Freegan Box(フリーガン・ボックス)」という詰め合わせボックスの定期販売も行われています。

10kgほどの食品を詰め合わせた箱と5kgほどの箱の2種類があり、それぞれ10ポンド(約1400円)と5ポンド(約700円)。もちろん中身はその時にKindness Sharehouseに届いた余剰食品によって変わりますが、20〜30ポンド相当の食品が入っているので利用者にとってもお得で、TRJFP側も定期サービスにすることで余剰食品の再分配を確実に行うことができます

定期購買の登録者は毎週、Sharehouseまたは他の指定の受け取り場所までフリーガン・ボックスを取りに行きます。
大きな荷物になるので車がない人にとっては利用しにくいという難点はあるものの、サービスは大人気!100人以上の登録者がいて、今はキャンセル待ちのウェイティング・リストまでできているそう。

想像以上に多くの余剰食品を目にして、これを全部捨てずに再分配できるのか?と気になって聞いてみたところ、「スーパーやフリーガン・ボックスで引き取ってくれる人たちのおかげで、ほぼ全て再分配できている」とのことでした。

消費期限が切れてしまったものはスタッフが自己責任で持って帰り、それでも余った食品はバイオ燃料や豚の飼料として使われるそう。(豚になんでも食べさせるのはどうなの?とも思うのですが...)
だから、フードロスとして埋立地に送られることはないそうです。

そもそものフードロス問題解決のためには?

でも気になるのは、TRJFPが再分配しなければならないような余剰食品が大量に存在するという根本的な問題。
「そもそもの余剰食品を減らすための働き方はしているのか」という友人からの質問に対し、スタッフのベスさんは「今のところまだできていない。でも引き取った食品の量などを記録しているので、今後製造・販売者側に働きかける際に使えるデータは集まってきている」と教えてくださいました。

スーパーを見学している間にも絶え間なくお客さんの姿が見られ、地域の人々も一緒になってフードロスを減らそうとしている動きを感じましたが、問題解決に必要なのは消費者・生産者両側からのアプローチ。

TRJFPのようなプロジェクトや、それを利用する消費者だけでなく、それだけの余剰食品を生み出している企業も責任を持って行動を改める必要があると感じます。これはイギリスも日本も同じではないでしょうか。

消費者として、自分たちにできることから始めながら、声を上げて社会に変化を求める姿勢を大切にしたいですね。

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