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テイラー・スウィフトの凄さについて話したい

2021年も早一ヶ月が過ぎてしまいました。昨年末は2020年のベストアルバムに関する記事や他数本をnoteの音楽まとめにピックアップいただき(ありがとうございます!)、たくさんの方の読んでいただけたようで嬉しい限りです。

自分の音楽や映画遍歴の記録・思考の整理がメインではありますが、読んでいただいた方の生活に少しでもプラスになることがあれば、と思いますので更新頑張っていきたい所存です。

今年1本目、突然ですが今回はテイラー・スウィフトについて話していきたいと思います。

『ミス・アメリカーナ』で描かれる、優等生からの卒業

何故突然テイラー・スウィフトなのか?、Netflixでちょうど一年前頃に配信された『ミス・アメリカーナ』を年末年始にやっと観たことがきっかけです。なんとなく、マイリストに入れたままになっていたのですが、すごく濃厚な内容のドキュメンタリー作品でした。後回しにしていたことが悔やまれます・・。

※ 以下、作品の内容というか、ネタバレ的な記載になるので気になる方は飛ばしてください。

カントリーミュージック出身のテイラー・スウィフトですが、アメリカでカントリーというと共和党支持者がとても多く、保守派に支えられている音楽として知られます。

子供の頃からの私の倫理観は"良い人と思われること”よ

テイラーは作品の冒頭で、ずっと優等生であることをポリシーとしてきた、と語ります。そして彼女は長い間、政治的立場に関する発言も避けてきました。しかし、度重なるバッシングや自身のセクハラ裁判をきっかけに、次第に自分の意見や政治的思考をオープンにするようになります。

アメリカ中間選挙を控えた2018年、テイラーは初めて自身の政治的立場を表明します。地元であるテネシー州の連邦上院選挙において、マイノリティや女性に関する法案に反対していたことから、共和党候補のマーシャ・ブラックバーン氏を批判し、民主党候補への投票を呼びかけました。

このシーンで、彼女と、彼女の関係者とのやりとりがなんとも印象的でした。「そんなことをしたらツアーの動員数が半分になる(ファンが激減する)ぞ!」と猛反対をされますが、「私は間違っていない、正しいことをしたい」と涙ながらに語るテイラーの様子から、どれだけアーティスト人生をかけた選択、決意であったかがわかります。

SNSでの呼びかけ後、5万人以上の新規有権者登録があるなど成果を挙げますが、選挙の結果としては共和党ブラックバーン氏の勝利に終わってしまいます。テイラー、ここでただでは終わらないのがすごいところで、その悔しい思いをすぐに制作に注ぎます。そうしてできたのが「Only The Young」。チャンスはやってくる、若者が世界を変えていけるという想いを歌った楽曲で、未来へ希望を託したメッセージソングになっています。

この昇華のさせ方がなんともアーティストであるなというか、すごいなと感じる部分でありました。

この「Only The Young」、2020年には民主党のキャンペーンソングとしても使用されています。今回の大統領選挙の結果を踏まえると感慨深いですね。

また、作品の中で気になったのが制作の様子。ピアノに向かい、ふと口ずさんだメロディがみるみるうちにキャッチーなメロディラインと化けていく様子が圧巻でした。

今までなんとなく、"人形"のようなポップスター的印象がありましたが、このドキュメンタリーを通じて、彼女はシンガー・ソングライターであり、周りに左右されず、自分の意思を表明していける強い女性であるのだと改めて感じました。

2020年、突如リリースされた『folklore』

2020年7月、テイラー・スウィフトは8作目のアルバムである『folklore』をサプライズリリースしました。普段であれば、アルバム制作やツアーを計画的に進めていくことで知られる彼女のようですが、コロナ禍の自粛期間を過ごす中で、想像力が膨らみアルバムの構想が浮かんだといいます。あるインタビューでは、"作るつもりがなかった"と語っていたようですが、結果として聴く人が驚くほどのアルバムを作り上げてしまいました。

"folklore"は伝承、言い伝え的な意味でありますが、フォーク、アコースティックな面影を感じさせながら、決して古いだけではない精巧さがあるアルバムになっています。プロデュースにはザ・ナショナルズのアーロン・デスナーが参加しており(テイラーから依頼したとのことです)、古いものから新しいものへ、音楽を再構築していくセンスを感じます。

ボン・イヴェールとの共演作もアルバムのコンセプトとマッチする見事な楽曲ですが、ここではアルバムのリード曲である「cardigan」のMVに注目したいと思います。

古い部屋でピアノを演奏しているテイラーがなんとそのピアノの中から神秘的な森へと迷い込んでいきます。またピアノを通じて今度は大海に放り出され、最終的に元いた部屋に戻ります。

この演出、ときにスターとして持ち上げられ、ときに躊躇なく批判してくる世間と、それでも音楽制作を続けていく彼女の歌手人生を描いたもののように感じました。

半年経たずして姉妹作『evermore』をリリース

『evermore』は9作目のアルバムで、『folklore』の続編として2020年12月にリリースされました。半年経たずして2つの傑作アルバムを仕上げてしまった彼女、改めてアーティストとしての実力を感じますし、こんなに自粛期間を有意義に過ごせる人がいるでしょうか、とも思います。

上記インスタグラムの投稿では、『folkmore』の発表から曲を書くのを止められなかった、こんなことは(アルバムの続きを書くことは)今までにしたことが無い、と語ります。

また、これまでは自身の経験や恋愛事情を織り交ぜて歌詞を書くことの多かったテイラーですが、この姉妹作では、楽曲は三人称の視点で語られ、"物語"という側面が強くなっています。

物語性や彼女の想像力は楽曲のMVからも感じることができます。「willow」のMVは是非先ほどの「cardigan」と続けて観ていただきたいものです。

同様、古いピアノのある部屋から始まりますが、金色の糸に導かれるように、ファンタジーさのある映像が展開されていきます。

これからのテイラー・スウィフト

『ミス・アメリカーナ』を観て、2020年に出した2枚のアルバムを聴き直し、すっかりテイラー・スウィフトに対する印象が変わってしまいました。

『evermore』を出した2日後、12月13日に31歳の誕生日を迎えたテイラー・スウィフト。13をラッキーナンバーとしており、13歳の頃から(13の反対である)31歳の誕生日が楽しみであったそうです。2020年にコロナによるアクシデント的にではありますが、2枚の印象的なアルバムを出した彼女、30代のアーティスト人生をどのように過ごすのか、今後の音楽性にも注目したいと思います。

Taylor Swift - folklore

Taylor Swift - evermore


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