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ビーチ・カントリー・マン・ダイアリー(25):「白檀の香り」

 白檀の香りを嗅ぐと海辺のホテルのイメージが何故だか湧き上がってきます。白檀の英語名がサンダルウッドなのでそのサンダルという言葉から勝手に連想しているのかもしれませんが、このサンダルウッドのサンダルとはサンスクリット語のシャンダナム(「白檀の樹」)が由来なので、ビーサンなどのサンダルとはまったく異なります。
 とはいえ、人それぞれでしょうが、私はそ白檀の香りから海辺のホテルを連想します。それは何故だろうかと、時々、過去数十年の香りの記憶を追っていたのですが、先日、白檀の香りのお香を買い求め、部屋でそのお香を焚いていたときのこと、「あ、あのホテルでのことだ!」と、白檀の香りの記憶がふっと蘇ってきました。
 1990年代始めのころ、インドネシアのバリ島を何度か訪ねました。最初に訪ねたときはクタ通り沿いにある一泊数千円の安宿でしたが、二回目か三回目では海に面したそこそこ豪華なホテルで、メインロビーや別棟は木造をイメージした造りになっていました。そして、そのホテルに漂っていたのが白檀の香りでした。
 それまでにも、白檀の香りはあちこちで嗅いできたはずですが、潮風が絶えず吹いているものの気温と湿度が高いバリ島の海辺での白檀の香りは、とても香しいものでした。インド原産で熱帯性常緑樹の白檀ですから、温帯よりも熱帯の気候の方が香しくなるのかもしれません。
 それ以来、白檀の香りがすると、私はバリ島の海辺のホテルを思い出します。
 香りの記憶は他にも色々あって、その時々の喜怒哀楽といった心のあり様まで刻まれていますが、白檀の香りの記憶にはバリ島の海辺のホテルを巡る豊かな心象風景が描かれています。中嶋雷太

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