見出し画像

酒の呑み方がよくわからない男

 皆さんは、デートでご飯食べに行った時、お酒は何を飲みますか?

 とりあえず一杯目はビール、という人も多いでしょうか。確かに、ビールはだいたい何にでも合いますので無難です。

 だけどせっかくのデートなのだからその場の雰囲気が大切ではないか。ちゃんとその料理にあったお酒を飲むのが大切だ。そんなことを強く思っている一人の男がいました。

 ええ、若き頃の私です。


イタリアンレストラン編:サングリア

 イタリアンレストランにて。塩野七生の「ローマ人の物語」にはまっていた私は、イタリアンにはやはり「ぶどう酒」ではないかと思っていました。イタリア語の品名がカタカナで書かれたメニューを見て、こんなん注文するときに舌かむわ、と思っていた時。

「私はサングリアにします。」

 と連れの女性が言ったので、どんなのか知らんが発音しやすくて良いや、と思った私は、サングリアを二人分注文しました。

 果実がたくさん入った派手な飲み物が来ました。何だ、ジュースだったのか?と思いつつも、甘くてとても美味しいので気に入り、料理が来る前に飲み干して2杯目を注文しました。

 パスタが来た頃にはぐでぐでに酔っぱらっていました。中のフルーツまで全部食べてたら、酒がよく沁みていてかなり回りました。

英国風パブ編:ハーフ&ハーフ

 英国風パブにて。大沢在昌の「新宿鮫」にはまっていた私は、作中に出てくる、ビールと黒ビールをグラスに半分ずつ注ぐ「ハーフ&ハーフ」をよく飲んでいました。正直今では、ビールも黒ビールもそのまま飲んだ方が美味しいと感じますが。

 ある日、「たまにはこういう所も行きたい」という女性のリクエストで、平日の仕事終わりにカウンター席があるだけの小さなバーに入りました。

「私はこれにします。」

 と、連れの女性がメニューで指さしたカクテルの名前は「セックス・オン・ザ・ビーチ」。自分では口に出せないから私に注文しろと…。

「セックス・オン・ザ・ビーチと、ハーフ&ハーフで。」

 ドリンクができるまでの間、ハーフ&ハーフというのは、ビールと黒ビールを半分ずつ注いで…と説明していたのですが、目の前に置かれたのは、ロックグラスに入った琥珀色の飲み物。

 なんだこれは。ウィスキーか?ウィスキーをロックで飲めと?

 おそるおそる口を付けてみると意外と甘い。これはこれで悪くないので、「ビールを半分ずつ注いで…」という説明は打ち切りました。

 カクテルのハーフ&ハーフは、透明のドライベルモットと赤っぽい色のスイートベルモットを半分ずつ注いだ飲み物だそうです。メニューをよく見て、ビールのところに書いてあるか、カクテルのところに書いてあるか確認した方が良いです。

隠れ家的小料理屋編:冷酒

 和食の隠れ家的な小料理屋にて。池波正太郎の「鬼平犯科帳」にはまっていた私は、辛口の日本酒を冷で呑むのに凝っていました。

 本格的な和食の店では、冷酒を注文するとますを受けにした冷酒用のグラスが運ばれてきて、店員が目の前で一升瓶から日本酒を注いでくれます。日本酒はグラスからあふれて升にこぼれるまでなみなみと注ぐのが作法です。これは昔、居酒屋でアルバイトしていた時に店員としてやっていたので知っていました。

 私はカウンターの席で、こうして注がれた冷酒のグラスをかかげながら、身体をかたむけて上機嫌で隣の女性と話していました。

 グラスをかかげながら会話し、一口二口飲んで、グラスを升に戻す。しばらくしてまたグラスを持ち上げる。もちろん升の中にはあふれた冷酒が入っているので、グラスの底はしずくがしたたっています。升に戻すたびにグラスの底は冷酒に浸かるわけです。

 気づけば、ジャケットのそで口もスラックスのももの部分も冷酒でベトベトになりました。帰りの電車では泥酔していましたし。自分でも酒くさいなと感じるほどでしたから、周りの人たちには「この人アル中なの!?」と思われていたかも知れません。

そして現在:基本的に外では呑まない

 Riezonに関わるようになってからは、仕事後に外食する時は、有希代表も私も基本的に飲酒しません。料理を味わうには水でも充分です。もう見栄を張らなくても良いのです。

 そうです。別に酒がわかっている男のふりをする必要は無いのです。