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もてなされる勇気 ~「接客無双」最終回によせて~


「接客無双」鳩胸つるん(集英社) 執筆時点で既刊2巻、全4巻
(今回の記事は作品の内容に触れており、読んでいないと何のことかよくわからない部分があります。ご了承ください。)

「接客無双」が終わってしまった

 以前このnoteでも紹介した、少年ジャンププラスの連載「接客無双」。

 この日、第37話で最終回となった。もう少し長く続けて欲しい気持ちもあったが、特にギャグマンガは勢いのあるうちに描き切ってすっきりと終わらせるのが最善なのかもしれない。
(ギャグマンガ作家は気が狂うとよく聞く)

 週刊連載で一度も休載せず9カ月連続で掲載されたことから、連載の期間はあらかじめ決められていたようにも見える。作品が終わるたびに読者がこんなことを語ってしまうのは、「少年ジャンプの厳しい連載終了ルール」があまりにも有名であるがゆえに。

伏線のように見えて出オチ

 この「接客無双」、成熟しきった日本の漫画が深刻化・複雑化を極める中ではもはや異色の作品だった。最後まで勢いがすごい。個性的な登場人物にしろ設定にしろ、そこは後で掘り下げるのか?と思わせるものは多くあったが、勢いが削がれるので掘り下げない!結果、いわゆる「出オチ」みたいになって消えていく。

 悪のクレーマー組織「九礼無クレーム」の残りの連中がどう倒されるのか気になっていたけど、最終回の1つ前で8人合わせて1コマ、群衆扱いで出てきただけで終わってしまった。一人ずつ撃退していったらテンポが悪くなるし、正直、設定したもののどう倒すか作者も困ったのかも知れない。

 巨大赤ちゃん「赤旦那」や、破壊兵器「ブラックペッパーちゃん」とどう戦うのか見たかったな…。

※補足 単行本3巻のオマケマンガで「九礼無」は再登場した

 その後、接客のトーナメント戦も準決勝を取りやめてバトルロワイヤルとなり、それさえも打ち捨てて神話のような戦いになったあげく、主催者が本性を現して大会そのものをぶち壊してしまった。結果、「商店街を復活させる」という目的は果たしたが、これが現実なら小売り業の巨大企業が崩壊し、日本経済に大打撃をもたらしそうな気が。

展開の予想など不可能

 連載漫画だと普通、前フリ → 次回へ続く → オチ を繰り返して読者をじらしていくものだが、この作品は1話の中でいくつも前フリとオチがあって急展開するので、1話先の展開すら予測しようがない。それゆえにこの作品は、Webマンガという枠にすら収まらず駆け抜けてしまったのかも知れない。

 閲覧数はそれほど多くないわりにコメント数は毎回1,000件超えで、ファンの心をわしづかみにしたこの作品。作者の次回作を心待ちにしている。

追記:
 「闇のSP」の貫通したお腹は、「天才外科医」の神業で救命するのだろうと思いきや貫通自体が無かったことになっているのは、れんげと一緒に今もモヤモヤしている。「たまたま懐に入っていた物に銃弾が当たった」みたいに言ってるけど全然違うやろ。