一人の子どもが生き延びるに必要なものとはなんだろうかー『ライオン25年目のただいま』が、想像させる世界の現実とはー
『ライオンー25年目のただいま』BSで録画してあったのを見る。
たまたま一人で回送列車に乗り込んでしまった5歳の子どもーサルー。住んでいた村から1600kはなれたカルカッタへ着き、当て所ない迷子のまま、オーストラリアの夫婦に養子として引き取られる。
信じがたいような「実話」を元にしたインドとオーストラリアを結ぶ「母を訪ねて3000里」。Googleマップと執念が、迷子の少年の家を突き止める。
自分自身のルーツを求める気持ちとは
母が子を持ち、愛する気持ちとは
養子を育て愛するー母と父ーの気持ちとは
白人社会とインドー旧植民地の関わりとは
そして自らの脳裏にあるー記憶ーとは
いったいどのようなものなのだろうか…。
オーストラリアには、19世紀〜イギリスから孤児が送られる秘密裏の制度があった。運がよければ「良い家」にもらわれ、悪ければ虐待されたり奴隷のように働かされた。事態は21世紀に解明され、イギリス政府は罪を認めている。
ヨーロッパでもアメリカでも養子制度に積極的な白人にも歴史的背景と葛藤がある。21世紀にサルーを養子にした優しく賢いママにも苦しみと葛藤があった。
貧しい国と豊かな国、白人社会と有色人種の社会、さまざまな国と人種が集うオーストラリアの都市。25年間ほとんど変わらぬインド僻地の村…
どちらが幸福とか不幸とか、裁きに加担しないで、見る者に背景を読み取り、考えさせるー想像力を求めるー巧みな脚本と演出だと思った。
人が生きるってー生きるために生きてるんだよね。やっぱり。
だから戦争は、絶対に間違っているんだ。こんなに必死で生きた5歳の少年ー戦争だったら一瞬で殺されてしまう。戦争に正義も意味も何もないよ。
たった一人の子どもが、生きていくことを、ただ肯定する世界に サルーは、たまたまいたのか。
わたしたちの生きてる社会は、そっちの方を向いているのか…。
Googleマップの成果を見ながらーなんともしれない心境に、わたしはなった。
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