見出し画像

私はホルモンの奴隷

 あっというまにGWが終わってしまった。四月で編集教室も終わり、あとは生徒さんたちのがんばり次第。二年目になると生徒さんの数も二〇名近くになってくるので、「あの子は元気かしら」と思いを馳せたりする。でも口出しはしない。やりたい人は黙っててもやる。勝手にやるものだ。

 と、やっと落ち着いたなと思いGW前、渋谷で朝一番に「オッペンハイマー」を観ていたら、不正出血で貧血になり、日曜でも診てくれる婦人科にかけこんだ。映画の途中から気分が悪くなってきて、映画自体に「いかがなものか!」と憤慨しながら観ていたので「映画のせいでいよいよ体調まで悪くなったのか」と、たかを括っていたのだけど、映画が終わって立ちあがろうとするとクラクラと目眩がする。あわてて日曜日でも診察してくれる婦人科を探し、ネットで30分後の診察予約を入れる。電車で1駅。時間通りに到着し、するすると診察室に入る。

「うーん、ちょっとあやしい」
 エコーを見るのは私と同い年くらいの男性医師。なんだか肌艶が良くてギラギラしている。
「年齢的にも、ちゃんと検査しておきましょう」
 どうもクリニックの院長らしい。都会の一等地でクリニックを開いているのだから、相当やり手で、めちゃくちゃ稼いでいるんだろうな。羨ましい。 
ホルモンとか、病気の説明を受け、「検査結果が出るのは一週間後」と言われ診察室を出る。ネットで病気を検索する。物騒な言葉の並びにどんより最悪な気分。
 待合室には妊娠初期っぽいカップルもいれば、ピルをもらう女性、オンライン診療に対応するスタッフの人たちなど、ひっきりなしに患者さんやスタッフさんが行き来している。人気のクリニックなのだろう。私も予約時間にきっちりはじまったし、医師はギラついてはいるけれど、すごく優しい。

 と、呑気に書いていられるのは無事にがん検診をクリアしたからで、検査結果がでるまでの一週間は憂鬱だった。普段のふてぶてしさはどこへやら、ここ数年でいちばん落ちていて、「そうかそうか、私は病に倒れるのか」と珍しく弱気になっていた。しかもちょうど葬式にまつわるZINEを作っていて、墓について調べていたところだったから、普段よりも「自分ごと化」してしまって、がっつり喰らってしまった。昼間は元気でも夜になると落ちる。そんな一週間を過ごして、検査結果を聞きに再び婦人科へ行った。

 相変わらず待ち時間はほぼなし。強いて言うならハイテクなQR受付に戸惑っている時間のほうが待ち時間より長かった。診察室に入ると、医師に検査結果のペラ紙を2枚渡される。

「お大事に。ちゃんと休んで。体力つけて」

 あんなに悩んだ一週間が、五分で終わった。GW前に詰め込みすぎたのか、過労と過食と運動不足と寝不足いう不規則すぎる日々で、ホルモンバランスが崩れたようだ。何もないならそれでよし。しかし貧血になったのは間違いなく弱っていたわけだから、生活を改善していく必要がある。さらに考えられるのは更年期。まだ少し早いが、「プレ更年期」というものが世代的にも症状的にもぴったり当てはまる。

「プレ更年期」をAIに聞いてみる。

プレ更年期とは、更年期の前段階に当たる時期で、30代後半から40歳前半を指します。閉経にはまだ時間があっても、女性ホルモンが少しずつ減少し、心身にさまざまな変化が起こりやすい時期です。

 普段、感情の起伏は少ないほうで、怒ったり落ち込んだりすることもないのだけれど、検査結果待ちの一週間はずいぶん落ち込んだ。むしろ珍しく落ち込んでいる自分にびっくりした。こうなると自分のなかの「ホルモン」を感じざるを得ない。今回のような不正出血も女性ホルモンバランス異常によって起こるそうだ。なんだよ、ホリモンて。どいつもこいつもホルモンホルモン言いやがって。と、急に怒り出すのもホルモンのせい。

 と、GW前に荒れていたので、今年のGWは4日間、しっかり休むことにした。休むとはどういうことなのか、もはやよくわからないがPCを開かなければいいだろう。

 GW初日。まずは永江朗さんの新書「なぜ東急沿線に住みたがるのか」を読んで、マイナー駅である緑ヶ丘駅愛を感じ、田園調布を中継して二子玉川まで歩いた。健康的だ。
 GW2日目。緑ヶ丘から大岡山を抜けて、学芸大学まで、ぐるぐるぐるぐる歩き回った。健康的だ。午後から深夜までエンタメ。サブスクで見た映画「ゴジラ-1.0」がすごく残念で(あれは、何がいいたい映画なの?)、気晴らしに「シン・ゴジラ」を見直して、我が家の近くを流れる呑川が出てきて興奮した。ちょっとずつ生活が乱れ始める。
 GW三日目・四日目。一歩も外に出ない。ゲーム「パノラマサイト」をクリアした。コロナ禍ぶりに「どうぶつの森」を開いて、我が島「グッティ島」の美しさにうっとりしたりした。A24で見ていなかった「MEN」、日課である「リング」。これまたスルーしていた「バービー」にもやもやして、気晴らしに韓国ホラーでピカイチの「かくれんぼ」を再視聴。大好きなラングストン教授シリーズの「ロスト・シンボル」をチラ見。漫画は「かたわれ令嬢が男装する理由」。「肝臓を奪われた妻」はドラマと漫画を比較しながら見る。WEBTOONの作り方を真剣に考える。推しのBD配信をリアタイ視聴。アマプラの「チェイス」と「エルピス」を見比べて、最後、昨晩は「アンナチュラル」を再視聴。お酒も飲まずに、ひたすらエンタメ摂取。

 後半は全く健康的ではない気がするが、すごく楽しかった。やっぱり体調不良は「オッペンハイマー」のせいかもしれないと思う。「どういう気持ちで見たらいいかわからない!」と、ぐちぐち文句ばかり言ってしまう。
「ああ、お酒が飲みながら愚痴りたい」→体調壊す→ネガティブになる→という、くりかえし。こうやって不摂生がたたって死んでいくんだろうな。しかし愚痴らず、酒も飲まず、健康的な毎日を過ごすなんて「私らしくない」。不健康(情熱)と健康(冷静)の間でぐるぐると頭を悩ます。結果、楽しいほうを選んでしまう。

 ということで「私が私らしく死ぬために」というZINEを作った。エッセイと実用、ルポスタージュみたいな感じ。のほほんエッセイというよりは、葬式や墓の最新事情を知って、「やる意味って本当にあるんだっけ」ということをもう一度考えるような本だ。私は年齢のわりに葬式に出た回数も多く、その都度「嫌な思い」をしてきた。坊主というのは、どうして遺族の私に寄り添わないのだろう。そのあたりを書いた。USOとの違いは「ですます調」くらいだけれど、楽しんでもらえたら。5月19日発売。

 なにはともあれ、健康第一。ホルモン第一。あまり文章がまとまっていないけれど、今日も仕事をがんばろう。という雑なまとめ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?