強い言葉に警戒を。武田砂鉄『わかりやすさの罪』
武田砂鉄さん『わかりやすさの罪』を読んだ。「一気にわかる!」「社会人として必要な」「伝わりやすさ」「短さ」「面白いほどわかる」が重宝される今、それに対しての警鐘を鳴らす本。
TBSラジオ『ACTION』の金曜日パーソナリティである砂鉄さん。いつも小気味いいオープニングトークに引き込まれていた。
しかしこの本はラジオでの小気味よさと違い、どこかモゴモゴしている印象。だが著者はあえてそれを狙っている。何か伝えようとするときに「短く」「わかりやすく」伝えようとするとどうしても雑になってしまう。だから著者はくどいほど丁寧に伝える。言葉や声をもたない「漠然」としたものを大切にする。
『ACTION』でお笑い芸人のバービーさんと対談したときのエピソードが印象深かった。
実にクレバーだなと思ったのは、「自虐してるっていうことは、その物差しを持ってることじゃないですか。(中略)『全ての人は平等』とか言ってるわりに、その自虐の物差しが許されるのはおかしいな」と自問しているところ。
コンプレックスを自分のものにしたところで、それを提供している以上自虐には変わりない。自虐の構造に対して慎重に付き合っていきたい、というバービーさんがいいなと思う。
しかし、この放送を切り取ったテレビ番組のテロップにはこうあったという。「バービー(35)自虐ネタ封印『差別』『古い』に共感の声」。雑すぎてため息が出てしまう・・・。
大切なことは言葉を尽くして、ようやく伝わるもの。だからこの本でも、同じようなことと思われても、何度も何度も伝える。
今日も「すぐにわかる」「現状から抜け出す」「既存を壊す」といったわかりやすい言葉が踊る。わたしはそれらの強めの言葉に振り回されやすいのを自覚している。だからこそ、警戒を強めたいなと思った。
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