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世界一好きなバンドでギターを弾いた話

始まりは中学生の時。20年以上前


友人に借りて聴いたオムニバスアルバム「FAT MUSIC FOR FAT PEOPLE」

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伝説の名盤として後世に語られるオムニバス。その三曲目だったかな?それを聴いた時に始まった。

それを聴いた中学生はこんな事を思った。

「自分がいつかバンドをやるとしたらこの三曲目のバンドみたいなのをやりたい!」


そのバンド名は STRUNG OUT,

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すぐに今は亡き新越谷タワレコに探しに行った。そこでFATから出た「twisted by design」を買い、一曲目の「too close to see」に心を撃ち抜かれた。

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完璧な一曲だと思った!メロコアの全てが詰まってる!


それから数年。僕が今もやっているRIDDLEというバンドを始める直前の話だ。19歳の時の話。

先輩と一緒に初めてSTRUNGOUTのライブを観た。横浜ベイホール。黒づくめの五人組は次から次へと爆音で高速メロディックチューンを繰り出し、僕はモッシュピットで灰になった

それから来日する度に足を運んだ。本当に毎回だ。
FACTが共演した新木場
同じく新木場でindependence_dのヘッドライナー
吉祥寺シータ
新宿アシベ
渋谷ゲーム
レッドブルイベント渋谷オーイースト
FACT企画の幕張
FATフェスの幕張

どんだけ好きなんだと。
毎回モッシュピットで灰になった。
19歳の時も30越えてからも同じテンションでシンガロングし、ダイブし、号泣した。

2016年。いろんな巡り合わせで僕のバンドRIDDLEは結成から13年経ったこのタイミングで吉祥寺シータでのオープニングを務める事になった。

僕が STRUNG OUTと 対バン?

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公演当日。
普段余りしないMCで切々と思う事を話した。
STRUNGOUTへの愛。STRUNG OUT だけでなくFAT wreckというレーベルが、90sメロコアがどれだけ僕達の青春を彩ったか。

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あなたたちが!どれだけ日本のライブハウスシーンに夢を与えたか!

楽屋に帰ってからもSTRUNGOUTメンバーに拙い英語で同じような事を伝えた。たぶん僕は泣いてた。ギターのロブがハグしてくれた。

その日のライブは格別だった。最初は関係者エリアで観ていたのに「vevet alley」のイントロでモッシュピットに突っ込んで行った。


「too close to see」はいつだって、何回観たって泣いてしまう。何度聴いても完璧な一曲だと思ってしまう。


夢が一つ叶った。
そして、また共演したい!て夢ができた。
ボーカルのジェイソンと吉祥寺のスタバでお茶をして帰った笑


それから一年後の2017年。

またまたSTRUNG OUT来日公演が決定した。今回は東京のみ二公演。

新宿ACBでのワンマンライブと野外フェスの二本だ。

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今回は共演出来ないのはちょっと残念だけど当然僕はワンマンの方に行く気まんまんでワクワクしていた。


ところがだ。

前日に招聘元のチームの一員であるY君とメールしていたら「ギターのジェイクが身内の不幸で来れない。ギター一本の四人体制でやる事になりそうだ」と

何故かこの時僕は冗談で「残念だなー!僕結構弾けるけどなー!」みたいな事をメールした。

y君「じゃあお願いします!メンバーには話しときます」

え!待って待って!冗談だよ!待って!お前は何を言っているんだ!

来れなくなったのは仕方ないとして一曲でも彼等のバンドの持ち味であるツインギターで演奏された方がお客さんも楽しいだろうという話だった。

話はサクサクと転がり、とりあえず僕は翌日会場にギターを持っていく事になった。


メンバーが何をやるかも解らないので練習しようにも出来ないし、何より前日の深夜だった。
SNSでベースのクリスに
「色々聞いてるかもだけどベストは尽くすけど期待しないでね。明日楽しみにしてます!」とメールして、開き直って寝た。


起きたらY君から連絡が来ていた。

「リハでやってみてメンバーからOKが出たら本番もやろうか」と連絡があった。


逆に言うとメンバーからNGが出る可能性も多いにあるということだ。

自信など全く無いがリハでちょこっと彼等の曲を合わせるだけでも一生の思い出だ!と腹をくくってアシベに向かった。

到着するとサウンドチェック最中。マジでジェイクはおらず、四人でワンマンをやり切る気のようだ。
Baのクリスが僕を見て「タカヒロだろ!早速合わせよう!」と声をかけてくれた。

雲の上を歩いてるみたいな気持ちでセッティングをしていると、Gtロブが「なにが弾ける?何がやりたい?」と。


何がやりたいだと??

僕はもしそう聞かれたら「too close to see!」と言うつもりだったのに何故か「vevet alley」と言った。何故わざわざ難しい曲を!!

五人で一回velvet alleyを通して、Voジェイソンが「完璧!」と言って何処かへ行った笑
この時点で僕は幸せ死にしそうだった。STRUNG OUTのメンバーとSTRUNG OUT演奏してるんだぜ!

クリスが「セッティングの時別の曲のリフ弾いてただろ?それをやってみよう!」と言い「no voice of mine」という曲を一回通した。「完璧!」と言いクリスはどこかへ去った。

ロブとジョーダンが僕の目を観て「too closeは弾けないの?」と言った。反射で僕は「自信無い!」と言った。


本当は一番弾ける曲だった。何度も何度も弾いてきた曲だ。
でも彼等の代表曲だ。僕なんかが弾いたらおこがましいし、日本のファンも良い顔しないだろうと思った。
ギターソロもあるしね。

ロブが弾いてみてと言うので軽くコード進行をひと回ししたら、二人は特に何も言わず何処かへ行った。

アメリカのバンドは日本とは違う。セットリストを提出などしないし、直前まで決めない。


オープンし続々とお客さんが入る中。僕は何曲やるのか何をやるのか何曲目にやるのかも解らないまま、アシベの倉庫でカチャカチャ練習していた。

19歳当時の僕を横浜ベイホールに連れてってくれた先輩バンドマンの上野さんに電話して、状況を説明し、「頑張れっていってください」とお願いするくらいにはテンパってた笑
初めて観に行った横浜ベイホールは上野さんと行ったんだ。
先輩。TOO CLOSE TO SEEというバンドのギタリスト上野さんは「思いっきりやんなよ!」と言ってくれた。

スタートまで十五分というところで陰でガチャガチャ練習していた僕のところへロブが現れ、「さっきのアレだけどちょいちょい押さえ方違ったぞ。本当はこうだよ」と修正をしに来た。今言う?それ今言う?!


スタートまであと五分という時に突然ロブが「everydayもやりたい。」と言い出した。



「無理無理無理無理」

ロブ「大丈夫。簡単だから。」とコード進行と展開を教えてくれた。不思議なもんで何度も聴いてきた曲なのでスルッと頭に入って来た。

簡単では無いんだけどね


時間はスタート直前。というかなんなら過ぎてた?
ロブは「take it easy. my hero」と言って去った。テンパりすぎてうまくリアクションできなかった。


後で思い出したけど、一年前の吉祥寺で共演の後。
僕はこんなツイートをしていた。

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逆にロブにマイヒーローと言われてしまった。
リップサービスでも光栄過ぎる。


満員の観客の中。STRUNGOUTのショウはスタートした。
一曲目は「firecracker」。

僕ら「4人でも全然かっけえわこの人達ー!出る幕無いわー!死にてえ」と愕然としていた。膝は震えていた。

そしてセトリを貰っていない。

僕がどこで登場するのか。何曲をどういう順番でやるのか解らないので袖からチラチラとロブの足元にあるセトリを盗み見した。

あ!あれか!

everyday
too close to see
no voice of mine
velvet alley


4曲書いてあった。 

あ、全部やるんだね!(冷や汗)

7曲ほど演奏した後
ロブが「今夜のヒーローを紹介する。RIDDLEのタカヒロ!!」と叫んだ。
僕は引きつり狂った顔で袖から登場した。


フロア中の人達のポカーンとした顔に背筋が凍りついた。

友達のバンドマン達の唖然とした顔も見えた。

お客さんの顔を観る余裕などないまま。カウントが入った。

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そこからは断片的にしか覚えてない。
ジェイソンが、ロブが、クリスが、ジョーダンが何度も僕の眼を見て微笑んでくれた。

クリスが「前に出ろよ!」と何度も背中を押してくれた。
too close to seeのギターソロ。ロブが僕のところまで来て耳元で「your turn!!」と叫んだ。曲が終わる度にジェイソンが僕に拍手をくれた。(貴方一曲しか合わせてないもんね!)
ジョーダンはずっと僕の方を見てニコニコしてた。

当日の動画です↓

これ本当に僕なのか?



あっという間に4曲が終わり。クリスが自分のマイクを指差した。僕は背伸びをして一言だけお客さんにお礼をいい、ステージを去った。
去る時にロブが両手を広げて、僕はそこに飛び込んだ。
観ていた友達によると「本当に中学生みたいな顔だったよ」と。

「もう一度タカヒロに拍手を!」


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登場した時の誰やお前オーラからは信じられ無いくらいの拍手を背に、楽屋にギターを置いてすぐにフロアへ行った。

翌日STRUNGOUTが出演する野外フェス。キメラゲームスでパフォーマンスするBMXライダー達が沢山アメリカから来ていたらしく、物凄い歓迎を受けた笑
次々十人くらいにハグされた笑


その後はフロアでやっぱり四人でもカッコいいSTRUNGOUTのライブを堪能した。

最後の曲はいつも通り「matchbook」
RIDDLEの企画名に使った事もある。大好きな曲。


ライブが終わり、ロブは言った。
「明日も弾けよ!」
明日はRIDDLEのアコースティックライブなんだよと言うと
「それは夜だろ?俺たちの出番は昼だ!」
昼はスタジオが入っていた。


一瞬迷ったけど、RIDDLEには自分しかいないのだ。
(ちなみに一応俊輔に相談したら、やれよ!と言ってくれた)
「ごめんね。」と言ったらロブは笑いながら
「お前はクビだ!タカヒロ!」

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僕はSTRUNGOUTをクビになった。笑

フワフワした感覚でポーっとしていたら来ていた友達に「おめでとう!」と言われた。

ジェイクの身内の不幸がキッカケのステージ。喜んでいいのか解らなかった。おめでとうなのか?

お客さんに話しかけられた。
「ステージ出て来た時に、あ!毎年STRUNG OUT来てる人だ!てすぐ解りましたよ!本当にありがとうございました!」と言ってくれた。

ホテルに向かうメンバーを「明日も頑張れ!雨降らないといいね!次はジェイクも一緒でね!RIDDLEと対バンだよ!約束だよ!」と見送り、一人ギターを背負い電車で帰った。

フワフワした感覚だった。


俺本当に「too close to see」のギターソロ弾いたんだなあ… 実感無いなあ…


ギターを背負いながら実家への田んぼに囲まれた田舎道をトポトポ歩いていたらいろんな思い出が蘇ってきた。

ただのキッズだった時。こんな風にギターを背負ってこの何にも無い道をスタジオへ歩いていた。
イヤホンからはSTRUNGOUTやNUFANやBADRELIGIONやuseless id …



当時はお客さんなんていなかったけどいつかこんなバンドみたいなカッコいいCDを出すんだ!
て夢に胸を膨らませながら。

急に、急に涙がボロボロ出てきた。


音楽には夢があるなんて僕なんかが言えるセリフじゃない。今回だって不運と偶然がもたらしたハプニングだ。

でも、僕は12分だけSTRUNGOUTだったんだよ。15歳の僕よ。僕は12分だけSTRUNGOUTのメンバーになれたんだよって。

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 後日談


それから一年後の2018年秋。

再び来日したSTRUNG OUTと自分のバンドRIDDLEで共演出来た。

今回は彼等もフルメンバーでの来日だった。

やっぱりあのツインギターがあってのSTRUNG OUTだよ。死ぬ程カッコよかった。

僕達のライブ中に STRUNGOUTを観にきたであろうfat wreckのTシャツを着た外国の方から「young STRUNG OUT!!」と歓声を貰ったんだ。

この上ない褒め言葉をありがとう

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また逢おうね!my hero





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