私も車いすなしでひとりで自由に出掛けたい──線維筋痛症と共に生きる葛藤、夢と現実

窓からの景色を眺めながら、いつも思うことがある。「私もひとりで外に出たい。」と。けれど、それは私にとって、夢のような話。厳しい現実が私の前に現れる。病気、難病との共存は、やっぱり難しい。

そう、私には持病がある。それは、線維筋痛症と筋痛性脳脊髄炎（慢性疲労症候群）という、どちらも原因不明で慢性的であり、常に症状に振り回される難病だ。これらの難病のせいで、私はいつの間にか常に全身に激痛が走るようになり、それにプラスして極度の疲労感や頭痛などの盛り沢山な症状があるせいで、外出する際に車いすと母の介助が必須の生活になってしまった。そんな私にとって「ひとりで自由にお出かけ」なんて、非常に難しいのだ。

そういえば、今年どのくらい私は外に出られただろうか。実際、私が外に出られる機会なんて少ない。体力的に週1〜2回しか出られない上に、通院などで自由に出掛けられる日が限られていく。また、お出かけの際には必ず母がいる。いくら、ひとりで買い物とかしたくても、常に母が側にいる。いくら母とは仲良しだからとはいえ、本当はひとりで自由に歩きたい。けれど、それが出来ない。歳をとった母に私の介護をさせるなんて申し訳ないのだが、現状では母なしで私は最低限の生活さえもまともにひとりで出来ない状態だ。

病気というものは、ひとを強制的に変えてしまう。つくづく、実感させる。どんなに明るく振る舞おうと思っても、動けない現実が嫌になる。

だって、ほんとうはもっと動きたい。タクシーにお家まで向かいに来てもらい、ひとりで近くのショッピングセンターへ行って、だらだらお店を見て、カフェでお茶して。コロナ落ち着いたら海外旅行に行きたいな〜なんて考えながら、壁に貼られたポスターをぼーっと眺める。ああ、自分の稼いだお金で国内でも海外でも好きなところに行けたらいいのにな〜とか、店内の音楽に浸りながら、お茶を飲みたい。

しかし、それは夢。夢物語。金銭面的にも、体力的にも、タクシーで近くのショッピングセンターへひとりでお出掛けさえも難しいのが現実。諦めなきゃいけないこと。そう自分に言い聞かせる。

どうやら私は、病気と共に生きることに専念しなきゃいけないらしい。そういうふうに人生を考えるようになったのはいつからだろう。なんだか、勝手に病気が私の生きる道を選んでしまったらしい。病気って、なんでこんなにまで動けなくさせるのだろう。めんどくさい。こんなの捨てられるのなら、どこかに捨てたい。もうちょっと自由に動けるようになっても、別にいいんじゃないのかな。

だけど、病気は「これが貴方の人生だ。この道を生きなさい。」と私に言う。今も線維筋痛症の激痛が、私の身体に響き渡る。ああ、やっぱりそうだよね。この痛みと共に生きていくのが、私の生きる道だもんね。もう逆らうこと自体が無駄。どうせ逆らっても、そこには何もない。無。

勿論、こんな状況に全然納得できない。でも、どんなに無茶苦茶なことを押し付けられているだと思っていても、受け入れなきゃいけない。いくら理不尽だと叫んだところで、何も変わらない。そうやって生きるしかない。それが、難病と共に生きることでもある。たとえどんなに不公平なことでも、受け入れるしか道はない。どんなに病気を攻撃的に否定しても、その時間が無駄になるだけだ。だったら、受け入れるしかない。病気を受け入れてから、やっとスタート地点に立てる。

だがしかし、脳では理解してても、すぐ簡単に受け入れられないのが人間だったりする。ふと、昔の車いすなしで杖で歩けていたときの自分を思い出す。昔といっても、コロナ禍の前。今じゃ、せいぜいコンビニの店内をぐるりと歩くくらいしか出来ない。しかも、杖がなきゃふらついてしまうし、たとえ歩けたとしても次の日にはぐったり一日中激痛と極度な疲労感などの症状が私を襲うのだ。「ああ、コンビニの店内をぐるりと歩いただけなのに…。」なんて思いながら、天井を見て寝る。

これが、今の私が受け入れてようとしている現実だ。数年間も病名がないままだった私に、「線維筋痛症」と診断がついて一年。今年はずっとこのことで、時々思い出しては悩んで泣いていた。無駄だとわかっていても、自分が動ける夢を抱いてしまう。この先も、また泣いたりするだろうけど、病気をちゃんと受け入れてスタート地点に立って前を歩きたい。

たとえ、どんなに嫌なヤツ（病気）でも、現実逃避してばかりでは前に進めない。そうして病気と共に生きながら、今の自分に出来ることをする。受け入れることは辛いけど、迷っている時間が勿体無い。

未来に向かって明日を生きるためにも、私はこの病気と共に生きていく。

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