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寂しい世界の向こうで、私は待っている



なんとなく、YUKIの「66db」を聴く。

今日は朝から寒い。いや、昨日も寒かった。街に出ると、マネキンがセーターを着ている。「もうそんな季節か。」と、この時期特有である時間の流れを肌でも感じる。

秋から冬は早い。あっという間にハロウィンを終えてクリスマスになるのだ。いつの間にかコートを羽織るようになり、手袋などが気になりだす。


この時期特有の謎のスピード。妙に時間の流れが早くなる、謎のスピード。その流れについていけない気がして、孤独を感じやすい。ひとり、カボチャやサンタを目の前にして、寂しく思ったり。何故だろう。この時期特有の寂しさは。

さむい、さびしい。だれもみんな、わたしをおいて、さきへいってしまう。

この寂しさを受け取りすぎると、世界にひとり取り残された気がして怖い。誰もが先を走っていて、自分だけが一歩踏めなくて。ただ、一歩を踏み出すのことなのにそれが出来なくて。早くこの世界から抜け出して、みんなと同じ世界へ向かいたいのに。こんなところで止まるわけにはいけないのに。「自分を好きになろう」といくら言われたって、こんな自分を好きになれやしない。



でも、それはそれでいいじゃないのかなと、私は思う。
みんなと同じ世界へ向かうことが全てではないと思うし、みんなが同じ世界へ向かっているわけでもない。


普段使わないホコリまみれの双眼鏡で覗くと、ひとりひとり似たような世界を作っているだけで、同じ世界にいるわけではなかったことに気づく。もっと覗き込むと、形が尖っている独特の世界を作っている人もいるし、似たような世界を作った同士で争っていたり、もうどうでもいいやと放置気味の世界もある。


この時間の流れ、謎のスピードのせいで、自分だけがこの場所に取り残されて置いていかれているように見えているだけであって。本当は自分の目で覗けられる狭い範囲の人たちが、ただ必死になって、ひとりひとり自分の世界を作って何かに追いつこうとしているだけなんだ。

ホコリだらけの双眼鏡で、もうちょっとだけ覗いてみる。ひとつひとつじっくり見ると、ひとりひとり向かう世界が違うし、全く別の方向へ向かっている世界もあるし、ただ漂っているだけの世界もいる。意図的に離れている世界もある。


「時間の流れに追いつけなくてもいいんだ。」と双眼鏡ごしに謎の安心感を得る。自分が動きたいとき、この自分という世界を動かせばいい。だって、無理して動かしても動けるものではないし。そうしていたら、寂しさが溶けていく感覚が少しした。

さむいのにどこかあたたかい ここにいていいのかな いたいな

だから、今は時間の流れからきた寂しさが消えていくのをじっと待とうと思う。YUKIの「スタンドアップ!シスター」を聴きながら。そっと閉まった昔の思い出のページを開いて、涙を落として。そういう時間を過ごすことも、いつか必要だったと思える時がくることを願って。


大好きだったあの思い出の日にも、朝が来たのと一緒で。寂しさが溶けて何かに変わるのを肌で感じつつ、今はそのままでいよう。




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