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「草食系とアセクシュアル」の誕生秘話───あとがきのようなエッセイ

今から、4年前。「私がアセクシュアルの存在を証明できるような日本の恋愛とアセクシュアルの歴史を書くしかない。」そう決めた、あの日。私はゲンロンβに連載されていたさやわかさんの『愛について』に出逢ったのだ。そうして、必死に勉強し、恋愛とアセクシュアルの歴史、草食系とアセクシュアルについて書いた記事を公開することになった。

けれど、その道のりは簡単ではなかった。今回はなぜ、記事を書くことになったのか語ろうと思う。

皆さんはアセクシュアルを知っているだろうか。一応、知らない人に説明すると、アセクシュアルは他者に性的な惹かれを抱かない性的指向だ。

2019年、私は自分がアセクシュアルだとネット上でカミングアウトする記事に書いた。そのころは、アセクシュアルに関しての情報がまだ少なく、散らばっていた。

アセクシュアルって一体なんだろう。アセクシュアルのはずなのに、アセクシュアルについてわからない。ある程度探せば、情報に触れられるものの、どれも肝心な部分が曖昧なのだ。「それで、それはどうなるの?」という痒いところの情報がない。いくら調べても、私が知りたい情報はなかった。いつか、誰かがその謎を解いてくれるだろう。そんなふうに軽く考えていた。でも、まさかその状況が、現在まで続くとは思ってもいなかった。


なぜ、「草食系とアセクシュアル」について書いたのか

現在、アセクシュアルは2019年の頃に比べて、さまざまな媒体や作品でアセクシュアルが描かれるようになり、人びとに注目される機会が年々増えている。しかし、アセクシュアルのことを知りたいと思って調べてみると、日本でのアセクシュアルの情報や研究は少ない。アセクシュアルの定義やアセクシュアルに関する調査データなどの情報は入ってくる。けれども、「なぜ、アセクシュアルが出てきたのか。」などのアセクシュアルの根本的なことに関する情報がないのだ。

私が思うに、日本でアセクシュアルを広めていくならば、アセクシュアルがどのような存在なのか、どうして現れたのか、説明できるようにしたほうがいい。つまり、人びとを納得させる言葉を持つことが必要なのだ。そのためには、過去にあった日本の恋愛や文化などと接続して語られた言葉が重要となってくる。

だが、啓蒙活動している活動家や学術方面では、そのような動きが見られない。しかも、アセクシュアルの学術研究や論考などは、研究が盛んなアメリカからの情報や知識を引用して語ることが非常に多い。しかし、それでは、どうせ日本とアメリカは違うと思われるだけで、世の中の人たちには説得力が薄く、言葉が届かない。

だからなのか、いまのアセクシュアルはどうしても新しく出てきた突然変異のことのように見えてしまう。その理由は、日本の恋愛とアセクシュアルの歴史、過去に繋がる物語が見えないからだ。なぜ、アメリカのことばかりで、日本に触れないのだろう。過去にあった日本の恋愛や文化などと接続して語られた言葉で文章を書いてくれる人が現れてもいいはずなのに。

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この問題意識は、4年前からあった。じつは、今回書いた「草食系とアセクシュアル───歴史から見る恋愛観の変遷」の記事は、私の4年ほどの在野研究での成果を出したものなのだ。

「誰もやらないなら、私がアセクシュアルの存在を証明できるような日本の恋愛とアセクシュアルの繋ぐ歴史を書くしかない。」そう決めた、4年前のあの日。だけど、新たな歴史を書くという作業は、過去に起きたことを探して掘り起こす、地味でとても面倒な作業だ。しかも、歴史を書くなんて、やったことがない。いや、論文でさえもまともに書いたことがない。でも、日本の恋愛に繋げたアセクシュアルの歴史を書くということは、いつかは必要となる。誰かがやらないといつまで経ってもこのままだ。果たして、どうしたらいいのだろう。

そんな途方に暮れていたときに、webゲンロン(読んだ当時はゲンロンα)で、さやわかさんの『愛について』と出逢った。

「こんなにも、ヒントを与えてくれる文章があるとは!」と、あまりにも嬉しくて涙目になりながら、『愛について』の連載を読んだ。この『愛について』を追えば、恋愛とアセクシュアルの歴史から存在を証明できるようなアセクシュアルの文章が書けそうだ。そうして、私は改めて書くことを決意したのだった。


在野研究者の道へ───たとえ病気があってもやり続けるために

だがしかし、4年前に書くことを決意したときから、私は持病の線維筋痛症などがあり、ほとんど寝たきり生活だった。その環境で資料を集めたり、集めた大量の資料や論文などを読んだり、文章を書いたりなどの作業は簡単にできない。また、4年前に書こうと決意した頃の私では、知識がなく、実力が足りなかった。あの頃の私は、読み書き障害でも本が読めるようになって少し経った辺りで、読書経験が圧倒的に少なかったのもあり、今回の記事を書くために必要な知識や教養がなかった。

それならば、勉強するしかない。時間がかかってもやるしかない。そうして、目標のために、何年間も必死に勉強に励んだ。読書や動画で学んだ。『愛について』を書いたご本人のさやわかさんによる動画配信番組のカルチャーお白州やその連載を載せていたゲンロンから、じつにさまざまなことを学んでいった。基本的に、動画のほうが話し言葉で相手に伝えようと語ってくれるので、初学者にはわかりやすい。また、私の場合、活字で読むよりも、耳から入る音のほうが脳に記憶しやすいというのもあり、両方使っていった。勉強は苦痛ではなかった。むしろ、学ぶことが楽しくて、仕方がなかった。

だが、順調には行かなかった。この数年間で病気が悪化したせいで、日に日に文章を書くのにものすごく身体に負担がかかるようになった。ただ、日記のようなツイートを書くだけでも、1時間かかることが増えた。去年の5月ごろに書いたnote記事では、きちんと書き終えられるか不安だと言葉にしていた。その頃の私は、「もう、書くことを諦めなきゃいけないのか。」と本気で悩んでいた。

でも、誰かが書かない限り、私が書くしかないのだから、やるしかない。ほんのちょっとでも書ける時になんとか書いてやると、使えそうな言葉だと思ったものはとにかくメモした。また、病気が悪化した状態でも楽に執筆できる環境を整えた。そのなかで、病気でつらい状況でも新たに書く方法を生み出し、地道にコツコツ諦めずに今日までやり続けた。そうして、4年前のあの日からずっと書きたいと思っていたことを形にしたのが、今回の記事だった。

今回、長年の夢が達成して嬉しい。しかし、まだまだアセクシュアルでやることがたくさんある。また、次の課題も出てきた。これは、あくまで通過点に過ぎない。これからも在野研究者として、のしりこの活動も引き続きやっていきたい。そして、これからも愛の問いを投げ続けていく。

もしよければ、本編の記事の感想や、SNSでの拡散やいいねなどもお願いします。




さて、ここで皆様にお願いがあります。

正直なところ、今回書いた「草食系とアセクシュアル───歴史から見る恋愛観の変遷」は記事を書くにあたって、いつも書く記事よりもかなりお金がかかっています。本来なら、有料で公開すべきなのかもしれません。しかし、無名の持病でほとんど寝たきりの在野研究者が書いた文章をたくさんの人たちに読まれるようにするためには、無料で記事を公開しないと読まれません。また、今回の記事は、いままでのアセクシュアル関連の研究ではなかったタイプの内容です。日本の恋愛とアセクシュアルを歴史で繋いだものなので、さまざまな人たちに読んでほしいのです。そうしたことがあって、本編を無料で公開しております。

でも、ほんの少しでも、資料集めや執筆環境の整備などで使ったお金を回収できたらと、「アセクシュアルの情報収集のためのガイド───情報源として使っている書籍やサイト一覧」というnote記事を作り、それを有料で販売することにしました。先ほども少し触れた通り、私は持病の線維筋痛症などがあるため、ほとんど寝たきり生活です。そのため、働くことが不可能です。今回の記事は何年にも渡ってやり続けたことで、自分のおこづかいで資料代などを出せました。しかし、持続可能なスタイルじゃない。だから、今回は有料記事を作り、価格設定を高めにして販売することにしました。

つまり、「ああ、モチベーションを維持するためにも、お金が欲しい!!!」と欲望のままに、皆様へお願いしているのです。

もしよければ、有料記事を購入してくださると助かります。なお、今回はあくまでも資金回収が目的なので、価格を少し高めに設定しています。

また、サポートも受け付けていますので、そちらもぜひよろしくお願いします。もしよかったら、ご支援お願いします。




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