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京都旅 番外編~幻の三柱鳥居を探しに蚕ノ社へ



【「恋の病」の男、再び】


予定がドタキャンされたことをいいことに京都の不思議なスポットをあちこちまわってきた。
今回は番外編ということで、以前「恋の病」が熊野で癒えた後輩と行った「木嶋坐天照御魂神社このしまにますあまてるみたまじんじゃ(通称 蚕ノ社)」の話を少しだけしたい。

「恋の病」を癒やす旅については下記
    ↓


【幻の三柱鳥居】

木嶋坐天照御魂神社このしまにますあまてるみたまじんじゃを知ったのは、おそらく星野之宣の漫画「宗像教授伝奇考」だったのではないかと思う。

星野之宣はSF漫画家として超一流で発想もめちゃくちゃ面白い。
第二次大戦の兵器や古代史、風習など日常のものから非日常の世界を一気に切り開く力が凄まじい。
「その発想があったかー!!」といつも感心する。
ただ、その内容を真に受けたら月刊ムーのような世界観になってしまうのでご注意を。
ただ、三角形に組み合った「三柱鳥居」の神秘的な様に見せられ、「恋の病」が完治した後輩とフラッと行ってみることにしたのだ。

【太秦って読める?】

木嶋坐天照御魂神社このしまにますあまてるみたまじんじゃが鎮座するのは太秦うずまさの近くだ。
あの太秦映画村も近い。小学校の修学旅行が太秦映画村だったが非常に楽しかった覚えがある。

その頃からずっと気になっていたのだが、太秦と書いて「うずまさ」と何故読むのだろう。
一番有力な説は、はた氏が、朝廷に絹などの織物をうず高く積み上げて献上したことにより、朝廷から「兎豆麻佐うずまさ」という姓を与えられたため、これに「太秦」の漢字表記を当てたのだという。
本当かよ・・・

【養蚕を日本に伝えた秦氏】


さて、秦氏とは始皇帝の末裔とも言われる渡来系の部族で、第15代応神天皇14年(西暦283年)に帰化した弓月君ゆづきのきみを始祖としている。
しかも遺伝子を調べると、秦氏と始皇帝は共にチベット系の遺伝子で齟齬は無いのだとか。
土木、養蚕、機織などの技術を日本に伝え、この太秦を本拠地にしていた。
鴨川上流域を賀茂氏、下流域を秦氏が治めるようになり、両氏の関係は深かった。

今から行く木嶋坐天照御魂神社このしまにますあまてるみたまじんじゃは秦氏の氏寺・広隆寺の創建に伴い勧請されたと言われており、秦氏と関係が深い神社だ。
養蚕を伝えた秦氏にちなんで、「蚕ノ社かいこのやしろ」と呼ばれている。
いや、名前カッコいいな!

駅の名前も蚕ノ社かいこのやしろ

【境内に入ると雰囲気が一変】


眼の前にコンビニがあるような住宅地を歩いていくと、木嶋坐天照御魂神社このしまにますあまてるみたまじんじゃが見えてきた。
眼の前がセブンイレブン、隣は保育園だ。
どんな神域なのだと思って来てみたら、日常感あふれる光景に少し拍子抜けする。

ところが鳥居を入ると、雰囲気が一変する。

夕方に参拝したこともあるだろうか、薄暗く、美しく、畏怖を感じる空間だった。
この木の向こうは市街地が広がっているのに、ここは神様の場所だと明確に感じる。
なぜ古人が畏敬の念を持って、この地に額づいたのかよくわかる。

賀茂氏と同じ双葉葵の神紋

美しい・・だけどなんだか怖い・・
本殿の前まで進むが、背筋が伸びる空間で、緊張しながらお参りした。
境内には、摂末社が設けられているが、そちらも何か異界のような雰囲気に満ちていた。

映画「となりのトトロ」でバスを待つメイが稲荷社の狐を見て畏れるシーンがあるが、あの気持ちだと言ったら言いすぎだろうか。

【元糺の森】


外の市街地を完全に遮断する結界のような境内の森を「元糺もとただすの森」という。
現在では下鴨神社の社叢林が「ただすの森」と呼ばれているが、その前は「元糺の森」がそう呼ばれていたと伝承されている。

【元糺の池の三柱鳥居】

ここに来た理由の「三柱鳥居」はどこだろう?
「元糺の森」の中に「元糺の池」がある。
その奥にあるらしい。

元糺の池

奥に何かある・・・・

あっ!!あった!!!!!!!!

本当にあったよ!!
近寄ることはできないが、改めて見ると本当に不思議な形だ。

【全国の三柱鳥居】


他にも東京都墨田区の三囲みめぐり神社-(東京都墨田区向島)に三柱鳥居があるが、これはもともと蚕ノ社を大切にしていた三井家の祖霊社「顕名霊舎」を護っているためであり、蚕ノ社の三柱鳥居を真似ているそうだ。

同じく真似て作られた三柱鳥居が、京都の南禅寺大寧軒なんぜんじだいねいけんの庭にもある。

岐阜県大和町の標高1000メートルを越える地点に林業関係者が山への感謝で奉納したり、奈良県桜井市の「大神おおみわ教本庁」内の|三輪稲荷大明神社にある。



他にも山梨県の不二阿祖山太神宮ふじあそやまだいじんぐうがあるが、ここは超古代文明の「富士王朝」が存在したと主張するちょっとオカルト寄りの神社。
また、東京都の「成子天なるこてん神社」、徳島県の 稲飯いなり神社、船盡比売《ふなはてひめ》神社、長崎県の鎮西大社諏訪神社、対馬つしま和多都美神社わたつみじんじゃに三柱鳥居が存在している。

全国の三柱鳥居を巡っていくのも楽しいかもしれない。
この三柱鳥居の起源についてユダヤ人の影響を指摘する人や、ぶっ飛んだ意見も様々あるのだが、興味深いのは藤田穂高氏の「三柱鳥居考」である。

https://oujjas.com/wp-content/uploads/2022/04/OUJJAS_2021_01_168-175.pdf

江戸の享保年間以前の記録には神社自体は記述があっても、三柱鳥居は存在しない。
そのことから1711年~1763年の間に成立したのではないか、と推察している。
三柱鳥居がいつからあるにせよ、この社の雰囲気は神を感じさせる。
平安京の成立以前よりこの地で祀りが行われ続けてきた積み重ねと厳粛さを感じる。

【京都の有名ラーメン「みよし」へ】


熊野からの帰りに腹が減ったと言って、ずんどう屋に言ったように、また「ラーメンに行きません?」という話になった。
前から行きたかった木屋町の「博多長浜ラーメンみよし」へ行くことにした。
GACKTや宮川大輔が紹介していたラーメン屋だ。

動画の24分あたりから「みよし」が紹介されている。

元気なおばちゃんが取り仕切っていた。
このおばちゃんって、動画に出てくる恥ずかしがっている女性の二十年後とかなのだろうか・・・

ラーメンはただの長浜ラーメンではなく、すじ肉がトッピングされていたり、卓上調味料にカレー粉があったりして楽しい。
すじ肉大好きな自分にとってはサイコーだった。
最初はぶっきらぼうに思えたおばちゃんも、気風が良くて慣れると楽しくなってくる。

神域で額づき、その足で油と麺にまみれる。これもまた京都の楽しみ方なのだろう。

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