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打倒ケンタッキー Wow! Momoが仕掛けたファーストフード革命

こんばんは!

2022年の発表ではインドの一人当たりのGDPは、2,301ドルと言われている。
日本が34,064ドルなので、実に14倍近く差があるが、1970年の日本も近い数値であった。(2,056ドル)
日本では、高度経済成長真っただ中の1971年、マクドナルド第一号店が銀座にできた。
個人の所得に応じて、食の選択肢は増えていくので、インドはまさに現在、食の多様化が進んでいるといえる。
その象徴が、モモを販売するWoWモモだ。

モモは、ネパールやチベットで広く食べられ、蒸した餃子のような料理だ。
1960年代に大量に亡命したチベット人が、デリーで屋台料理として始めたのが、インドにモモが広まった起源といわれており、現在、インド全土で食べられている。

屋台料理のひとつだったモモを、ファーストフードとしてモールで販売し成功したWoWモモ。
今回は、Wow! Momoが変えたファーストフードの常識について、解説する。

他のメディアでは取り上げられないようなインドの「深い」ニュース記事を取り上げ、「リアルなインド」を皆さんに紹介していく。
皆さんの意見があったら、ぜひコメントで教えてほしい。


Wow! Momoとは:

インドで400店舗以上を展開するモモチェーンで、東インドのコルカタ出身の起業家であるSagar Jagdish DaryaniとBinod Kumar Homagaiによって設立された。
大学生だった二人は、大きな野望を胸に入学したものの、勉学はあまり振るわず、高給取りになるために必要なMBAへの進級は難しかった。
そこで、二人でビジネスを始めることにし、多くのアイディアを出し合った中で、共通していたのは、食に関することだった。

Binod氏はネパール出身で、日常的によく食べていたモモ。
しかし、コルカタのモールにはピザやハンバーガーのお店ばかりで、モモを売る店がないことに気づき、ビジネスチャンスを感じた。
そこで、2008年に、父親にもらった3万ルピーを元手に、モモを屋台で売り始めた。

広告に使うお金がなかった二人は、ロゴがインプットされた黄色いTシャツを着て、街行く人に無料の試食を行い、フィードバックを取り続けた。
そこから、屋台のモモと一線を画するモモをハンバーガーで挟んだ商品を開発。

その後、モールの一角を賃借りし、そこで売り始めた。
1皿40ルピーのモモが、初日に約2,200ルピー売れ、初月で53,000ルピーの売り上げを作ることができた。
その4か月後には、さらに大きいモールで、月の売り上げが90万ルピーに達するなど、着実に顧客からの信頼を得ていった。

現在では、Wow! Momoの評価額は213億ルピーで、37億ルピー以上の資金を調達した。
また、2022年度には、月に40億以上の収益を上げる、インド屈指のファストフードチェーンとなった。

戦略:

Wow! Momoの歴史を述べたので、次に彼らのビジネスモデルについて。
前述のように、そもそも、モモは屋台を中心に発展した料理だ。
なぜ屋台ブランドに負けずに、食べられ続けているのか。

下記はインドのレストラン市場における、一食当たりの平均単価をもとにした、4つのセグメントだ。
450ルピー以上はプレミアム、150ルピーから450ルピーの間はサブプレミアム、50ルピーから150ルピーの間はエコノミー、50ルピー以下はローとなる。
サブプレミアムは、ケンタッキーやドミノなど、インド全土で見かけるナショナルブランドとなる。
逆に、エコノミーには特定の地域でのシェアが高い地域ブランドが多く分布する。

これを見ると、Wow! Momoはサブプレミアムに属しており、屋台ブランドは、ローに属する。
一見すると、屋台の安価さに負けてしまうように見えるが、そもそも客層が異なるため、同じ料理を提供していても、価格競争に巻き込まれる心配がなかった。

ではなぜ、屋台料理をモールで食べるような高価格帯料理に変貌させられたのか。
それは徹底した品質管理と、ユーザーが抱えていた不満を解決したからだ。

まず、屋台のモモは人気があるものの、一番の弱点は、品質管理が極めて弱い点だ。
屋台で冷蔵庫がある場合など、まれであるため、温度管理ができない、そして、衛星管理ができない。
このため、屋台のごはんはインド人でも、お腹を壊すことはある。

この点、Wow! MomoではCOCO(Company Owned Company Operated)モデルを採用している。
これは、食品の材料の購入から加工、最終的な製造、商品の配送まですべてを自社で管理することだ。
各都市に1つ、食品工場を建設し、ここをハブとして食品を調理し、そこから各店舗に運ばれるようにしている。
そのため、各店舗でやることは、冷蔵保存と火入れのみであるため、品質管理が容易になる。
例えば、食品の切り分け、および生産は、工場で出荷日の前に処理され、当日、冷蔵車で輸送されるようになっている。

そして、もう一つのユーザーが抱えていた不満、それは外食をするときに、ヘルシーな料理がほとんど存在しないことだ。
Wow! Momoがターゲットにする客層は、サブプレミアムであり、かつ若者であり、いわゆるZ世代がコアな客層だ。

1990年の経済開放後に就学し、豊かなインドを知るこの世代は、他の世代より大学進学率が高い。
彼らは、大学ではレポートを出すなど、学業に多くの時間を割いており、また卒業後は、オフィスで働く生活を送り、時間に追われることが多く、外食のニーズが高まっている。
そのため、親世代と比較すると、外食は特別な時に利用していたのが、忙しい時の夕食に利用するなど、外食のハードルが下がっている。
日常的に外食を利用する彼らは、ヘルシーな料理を求めている。
例えば、KFCのポッポコーンチキン100gとWow! Momoのダージリンモモを比較すると、KFCが350カロリーに対して、Wow! Momoは132カロリーとなる。
そこそこ安価で、衛生的で、ヘルシーなものが食べたい、モモはそんな彼らの不満を解決する料理となった。

最後に:

現在25歳以上の人口は、6億人を超えており、インド最大の消費者群となっている。
インドで過ごしていて感じるのは、40代ぐらいより上の世代と30代より下の世代では、仕事観・恋愛観など多くの世代間ギャップがあるということだ。
こういった認識差は、ライフスタイルの変化を生み、ファーストフードでもヘルシーなものを食べたい、というユーザーの意見として、市場を大きく変えていくことになるだろう。

とはいえ、まだ外国人から見て、インドの外食チェーンは十分な選択肢を提供できているとはいえず、今後、ヘルシーな食事のマーケットはさらに拡大していくと思われる。

先日、コミコンと呼ばれる、漫画やアニメのイベントに行ったときに、フードコーナーに一社だけだが、日本食企業が出展しており、ラーメンを求める客で行列になっていた。
今回は、ヘルシーな食事という視点で、インドの外食を説明したが、今後はさらなる食の多様化により、日本食などの外国料理のニーズも増えていくように思われる。

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