カラスと焚火

カラスが鳴いている

夜中だというのに、うるさいものだ。

森のなかにある、少し開けたところに、

焚火を眺めながらスープを飲んでいた。

ふと、暗闇のなかから老人があらわれた。

椅子替わりにしていた長い丸太の半分に腰掛け、どうも、とだけ呟いた。

そしてそのまま私と同じように、焚火を眺めた。

しばらくそのままでいたが、カラスが鳴き止んだので、
私は静かなのが耐え切れず、話しかけた。

「こんな夜中にどうしたんですか?」

適当に考えた言葉のまま、口にしてしまった。

「やっと帰れるんです。今夜やっと」

老人はゆっくりとそう小さな声で呟いた。

「そうですか。それはよかったですね」

「そうなんです。それで、お迎えが来るのがちょうど此処なんです」

「それはそれは、わたくしは邪魔ではありませんか?」

「いえ、邪魔ではありませんよ」

しばらくすると、空から釣り糸のようなものが垂れてきた。

糸のさきには針の代わりにカラスの頭の骨がまかれていた。

老人はそれに捕まった。と同時に、糸が上に引かれていった。

よくみると、月のあるほうから垂れているようだ。

そのうち、老人は影が月の真ん中にポツンとあるくらいにしか見えなくなった。

とカラスの群れが、老人がいるあたりに群がってきた。

しばらくの間カラスが老人をつついた。

耐え切れなかったのか老人が言葉を発した。

「やめんかクソガラスこれを殺ったんはわしじゃないわい!」

すると、老人が落ちてきた。

見るに、即死だろう。

再び釣り糸が垂れてきた。

私への誘いだろうか。

スープも飲みかけだったので、手を振って断ると。

意志が伝わったのか、カラスの頭はすぅと上がっていった。

焚火に私と落ちた老人の死体がゆらゆらと照らされていた。

この死体、どうしたものか。

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