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日本の政治家はなぜ自分のことばで語らない?

かつてドイツのメルケル首相(当時)が国民に対して新型コロナウイルス対策への理解と協力を呼びかけたテレビ演説に心を動かされた人は多いと思います。私もその一人です。

メルケル首相に限らず海外の政治家は演説が巧みです。気持ちが伝わってきます。前を向いて国民に語りかけているからでしょう。原稿を読んでいる姿はほとんど目にしません。不自然さもありません。

一方、日本の政治家は原稿を読むことが仕事だと思っているのでしょうか。下を向いて原稿を棒読みする人ばかりです。首相をはじめとして閣僚などは特にそうです。本人もそれが当然だと思っているようです。プロンプターを使っていても目の置き場が不自然で、読んでいるのがまるわかりのことも多いです。がっかりします。原稿を手元に持つことを否定はしませんが、下を向きっぱなしでは気持ちが伝わりません。

彼らは自分のことばで語ることがほとんどありません。たまに自分のことばを出すと失言という情けない結果になったりします。国会での答弁も官僚が用意した原稿を読むだけです。ひどい時にはどこを読めばよいのかわからずもたついていることさえあります。それを恥じる様子も見られません。だから彼らのことばは聞き手の心に響きません。そもそも誰に向かって話しているのかわかりません。

メルケル首相は原稿を「朗読」していませんでした。下を向いてもいませんでした。まっすぐ前を見据え、国民に語りかけていました。自分の言葉で協力を強く訴えていました。だから聞く人の心に響いたのだと思います。人と人とのコミュニケーションでは自分の考えや意見をそのまま口から発する場合と、紙に書かれたものを読み上げる場合とでは伝わり方がまったく違うと言われます

コミュニケーション戦略研究家の岡本綾子氏が「密室での駆け引きや談合こそが『政治』と思い込んでいる日本の老練政治家の多くが、『国民と真正面から向き合い、政策を訴え、理解を得る』ためのコミュニケーションの努力をほとんどしてこなかった」と語っています(東洋経済オンライン)。

彼女はまた「日本の政治家には『パブリック』と対話をする力が絶望的に弱い」と言い、その根本原因として以下の3点を挙げています。                     【1】必要なのは「話す力」より「実行力・決断力」と勘違いしている。                     【2】「コミュ力・話す力=生まれつきの才能」と誤解している。                          【3】伝える「地道な努力」と「並々ならぬ思い」の両方が足りない。

岡本さんは日本の政治家の「発信力のなさ」を嘆くだけでなく、彼らを「反面教師」にすることで「話し方のスキル」を磨き上げ、「人を動かす」「人の心をつかむ」人になることを読者に呼びかけています。でも私はまず政治家にそうしたスキルを身につけてほしいです。



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