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海外研修に参加した中高生の言葉から:その1

中高生の海外研修を引率をすることがたびたびありました。その際に生徒たちの間でよく耳にする言葉があります。言葉の裏にあるものをちょっと探ってみたいと思います。異文化理解の一助になるような気がします。

1「ホストファミリーが普通の〇〇人じゃない」

「ホストファミリーが普通のアメリカ人じゃないから替えてほしい」と言ってくる生徒がいます。日本にいる保護者から電話がかかってくることもあります。そのたびに「普通の〇〇人」って誰を指しているのだろうと疑問に思いました。

海外研修の行き先として選ばれることの多いのはアメリカやカナダ、オーストラリアなどです。そうした国で「普通の〇〇人」として多くの生徒の頭にあるのは「白人で標準 的な英語を話す欧米系の人」が多いようです。でも、国内にはそれ以外の人もたくさんいます。アジア系やアフリカ系の人だっています。だからホストファミリーは一様では ありません。そもそも「普通」という概念があいまいです。

世界はグローバル化しており、人の異動は活発です。海外から移民を積極的に受け入れる国もありますし、正式な移民でなくても多様な民族的背景を持つ人が数多く暮らしている国は多いです。国籍を取得している人もいればそうでない人もいます。日本だってそうです。「〇〇人」という狭い概念に捉われるのではなく、人々の「多様性」を受け入れることが重要だと思います。

2「ホストファミリーがちゃんとした英語を話さない」

前の例と同様に「ちゃんとした英語」とはどんな英語を指す のでしょう。自分にとってわかりやすい英語でしょうか。教科書にある英語でしょうか。お手本のような訛のない英語でしょうか。

ひと昔前は「アメリカ英語」とか「イギリス英語」という言い方がよくされていましたが、今や世界では多様な英語が話されています。いわゆるWorld Englishesです。英語に対する固定概念を払拭することが大事ではないでしょうか。

3「週末になると別のパパやってくる」

ホストマザーは夫とは再婚ですが、前夫とは離婚後も関係を保っています。前夫が子どもに会いに来たり、子どもが父親のところに行ったりすることもあります。離婚した夫婦がそれぞれ新しい家庭を持ち、両家族で集まったりするのも珍しいことではありません。家族にも様々なかたちがあることを理解することが大切だと思います。

4「洗剤をちゃんと洗い流さない」

食器を洗ったあと洗剤を水で流さずそのまま乾燥させていることがよくあります。洗剤はからだに悪いと考 える日本人には不安に感じる人が多いようで、私も最初は抵抗がありました。でもでそのうちに慣れていきました。

生活習慣の違いはいろいろなところに見られます。「郷に入っ ては郷に従え」の気持ちで受け入れられることはできるだけ受け入れるのがよいと思います、

どうしても気になるようなら率直に伝えて相談するのがよいでしょう。不安に思うことを無理に受け入れる必要はありません。何でも我慢しなければいけないということもありません。でも伝えなければ相手はわかりませんから、遠慮せずにきちんと伝えることが大切です。異文化理解は気持ちを伝え合うところから始まるのではないでしょうか。

5「一人で部屋で過ごすことが多かった」

せっかく海外の家庭に滞在しているのにもったいないですね。でもこういう人は少なくありません。言葉が通じなかったり、ファミリーと何を話したらよいかわからないなどといった理由からファミリーと過ごす時間を出来るだけ少なくしようとして部屋に閉じこもってしまうのです。二人一組で日本人が同じ家庭に滞在するときなど、いつも二人で過ごしいることもあります。これでは何のためにホームステイをしているのかわかりません。

ファミリーも一人(あるいは二人)でいたいのかと思い、あえて声をかけずに います。そうすると本人は放っておかれたように感じてしまいます。気持ちのすれ違いが起こっているようです。

言葉が通じなくてもファミリーとはできるだけ一緒に過ごすのがよいです。何を話したらよいか分からないという人は特別なことを話そうとするのではなく、日本で友だちや家族と普段話していることを話せばよいです。言葉は毎日話しているうちに次第に通じるようになっていきます。言葉の壁は自分で崩さなければ崩れません。最初から完璧に話そうなどと思わない方がいいです。

6「嫌いなブロッコリーが毎日出てくる」

ホストファミリーがブロッコリーの料理を作ってくれまし た。自分はブロッコリーが嫌いなのですが、食べないと悪 いと思い「美味しい」と言って無理して食べたら、翌日から毎日のようにブロッコリーが出てきたという話を聞きま た。「美味しい」と言ったのでブロッコリーが好きだと思われたようです。

嫌いなものを食べる努力は必要ですが、食べられないものを無理 して食べる必要はありません。嫌いなもの、食べられないもの は最初にきちんと伝えておきましょう。特に体質に合わ ないものは知っておいてもらう必要があります。言わ ずにいて具合が悪くなっても困ります。 くれぐれもこっそり捨てたりしないように。

食べ物に限らずできないことはできないとはっきり伝えましょう。

7「いつもお腹が空いていた」

最初にキッチンにあるものを一通り説明して「朝は自分で食 べてね」とか「冷蔵庫の中のものは勝手にどうぞ」 と言われることが多いです。「自由にどうぞ」と言われたら遠慮する必要 はありせん。遠慮してひもじい思いをしたという人がいま す。勝手に食べるのは気が引けて、自分で買ってきたものを 部屋でこっそり食べていたという人もいます。そんな経験はできればしたくないでしょう。不必要な遠慮はしないのがよいです。

食事の量も家庭によって異なります。質素に思える時もあります。足りないときは「もっと食べたい」と言って よいですし、多い時は「多すぎる」とはっきり伝えるのがよいです

8「小さい子どもが勝手に部屋に入ってきて荷物をさわるので嫌だった」

小さな子どもがいる家庭ではよくあります。ステイ先によってはその家の子どもと同室になることもあります。でも、困ることや嫌だと思うことは遠慮なく伝えましょう。我慢 したり、あいまいにたりしていると誤解を生むこと になりかねません。言わなければ相手にはわかりません。「察してもらうこと」は期待しない方がよいです。「以心伝心」はないと考えるのが賢明です。


続く⇒



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