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サンタのようでサンタでない。 お前は誰だ、ニコラウス。

ベルリンは昨日から雪が降っています。
皆さんこんにちは、ベルリンのひと、イドアモンです。

今週は11月最後の週。クリスマスの飾り付けが、職場の保育園でも始まりました。これから4週間、町が一体となって、クリスマスへのウキウキした気分を盛り上げていきます。

赤い帽子をかぶり、白いヒゲをたくわえたおじいさん。バスロープのような服を腰紐でキュッと縛っている。
「あーサンタさんのチョコレートだー。」と言って手にしたら、
「いやいやそれはニコラウスだよ。」と言われました。
どう見てもサンタクロースなんですが、ニコラウスとは誰ぞや。

ドイツにはサンタクロースのそっくりさんがいます。いや、正確には、このニコラウスが、そもそもサンタクロースのモデルになったという説もあるそうな。聖ニコラウスは2、3世紀に生きた伝説の司教で、子供、貧しい者、無実の人を救う聖人でした。ある日彼が、貧しい一家に硬貨を投げ入れた時、それが窓際にかけてあった靴下に入ったことから、靴下にプレゼントを入れる習慣が始まったそうな。

ある12月7日のこと。私の知人のSさんが、家に遊びに来ました。
彼女が私の子供たちに、
「昨日、靴下にプレゼント入ってた?」
と聞きました。( おっと何の話だ!?まだ24日じゃないぞ!)お母さんは空を見上げるしかありません。子供たちが
「何も貰わなかったよー。」
というと、話はむにゃむにゃと濁されました。

聖ニコラウスが子供達にプレゼントをあげる日が、12月6日だったのです。つまりドイツでは、24日の晩だけなく、6日もプレゼントをもらえるのです。ただ12月6日に聖ニコラウスがくれるのは、お菓子のような小さなプレゼントですが。

去年、私はママ友ファミリーを誘って、子供の家のクリスマス会に行きました。ベルリンのパンコウ地区、地図でいうとベルリンの右上に位置するこの子供の家は、 旧東ドイツ時代から現役の女性2人が仕切っている、小さな市の施設です。地元の家族が学校帰りの子供を連れて、工作をしに来たり、ダンスを習いに来たり、ただおしゃべりしに来たりします。

クリスマス会にも、地元の家族連れが何組が来ていました。クッキーやケーキを食べ、 クリスマスの飾りを作りながら待っていると、とうとうニコラウスが登場する時間になりました。 どきどき。ニコラウスに変装した施設のおばさん、裏の戸から登場しようとしたら、鍵がかかってた。同僚が慌てて鍵を開けて、中に入ってきたそのニコラウスは、大きな白い袋と、もう片方にはなんと鞭を持っていました。

「 君たちはこの1年良い子だったかい?もし君達がいい子でなかったなら、この鞭でお尻をぶたなきゃいけない。もしいい子だったなら、プレゼントをあげよう。さぁ前に出てきて、証明してごらん。詩を呼んでごらんなさい。歌を歌ってみなさい。上手にできたら、プレゼントをあげよう。」

な、なまはげ!?

ニコニコサンタさんとは大違いじゃないですか。「ん?君どう?」と目配せされた小学生の男の子が前に出ました。彼はすらすらと冬をモチーフにした詩を暗唱しました。ドイツの小学校では、国語の授業で詩の暗唱をするので、きっと学校で習ったものでしょう。

「うむ、素晴らしい。」ニコラウスさんも満足です。
「この一年いい子でいたか?」
「うん。」
「そうかそうか、じゃあこれをあげよう。」

ニコラスさんは、でかい白い袋からプレゼントを取り出しました。
「えっとこれ、、じゃない、これこれ。」
どうやら事前に用意してくれていた様子です。

近所の子供たちが一通り呼ばれ、とうとう私の子供達の番になりました。まず上の子が行きます。少々緊張した面持ちですが、早口で詩を暗唱し、無事にプレゼントをもらいました。次は下の子、この時4歳。知らない人の前で、一人で何かを発表するというのは、初めての経験です。

彼はヤクザ映画のヤクザのような貫禄で、両手をポケットに突っ込み、大股で中央に出て行き、こちらを振り返りました。

あ、目が泳いでいる。

目がまんまるです。ニコラウスさんが「詩を詠む?」と小声で聞いても、頷きもせず直立不動。母は思わず横から「もみの木を歌います!」と声をかけました。「そうか、じゃあもみの木を歌ってくれるか?」との問いに、こくり。

「オータンネンバオー、オータンネンバオー(もみの木、もみの木)」

小さめの声ではありますが、はっきりと1番を歌い切りました。
「よし、これをあげよう。」
ニコラウスさんがプレゼントを差し出しました。彼は片手をポケットに突っ込んだまま、差し出されたプレゼントをもう片方の手で受け取ると、礼も言わずに退場しました。あはは、緊張してたから、ま、いっか。よくやった息子よ。

本来、悪い子を懲らしめるのは、ニコラウスの助手、クネヒト・ループレヒトという人物なんだそうだ。12月6日に聖ニコラウスと共に現れ、子供たちにきちんとお祈りができるかを尋ねます。できると答えた子供にはお菓子をあげ、できないと答えた子供にはお仕置きをしたり、嬉しくないプレゼント(鞭の代わりになりそうな小枝など)を置いていくんだそうだ。

一通りプレゼントを渡し終えたニコラウスさんから、「何か歌って。」と無茶振りされたので、私たちとママ友ファミリーで、「真っ赤な鼻のトナカイ」を披露しました。日本語でしたが、ドイツ人の皆さんも喜んでくれた様子。

私は今年、クネヒト・ループレヒトみたいに鞭でバシバシ子供を叩いていた気がする。しかも一年中。

来年はもっとニコラウスみたいに、ギブの精神で、子供に優しく接しなくてはならない。うむ。

自分で自分のお尻でも叩いて、反省します。


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