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#104 春、戻る

刺さりまくりの一冊。おススメしたいし、また読みたい。

【ネタバレ注意】

主人公、さくらの前に突然「兄」だという12も年下の男性が現れた。
この時点で、小説の中だけで繰り広げられる非現実的な要素を疑った。
いや、でも違います。(笑)

彼のことを何も覚えていないさくらは、初めは不審に思う。
彼の態度から、なぜか親近感や安心感を覚え始めるのだ。

さくらは、和菓子屋の山田さんと結婚予定。
紹介での結婚であまり浮足立った様子はなかったが、おにいさんのペースに巻き込まれながらデートを楽しみ、自然と山田さんとの関係性も深まっていく。

血のつながりなど関係なく、おにいさんはさくらを大切におもってくれていることが分かる。

さくらには、あまり思い出したくない辛い過去があった。
それは、1年間だけ岡山の小学校に赴任していた時の話だ。
教員の立場から、このシーンにも共感する部分がある。

当時お世話になった校長は、ずっと息子を介して見守って心配してくれた。

その息子が言わずもがな、おにいさん。

おにいさんは父からの期待を沢山背負ってきた。彼も辛さを経験している。

父親からの「さくらの様子を見てほしい」というお願いは、自分を頼ってもらえて嬉しかったのだった。

長い間、さくらはおにいさんに見守られてきた。
これだけでも良い話だが、これから結婚する山田さんが実はものすごく、さくらに愛を持ってくれているところにもほっこり。

山田さんは、寛容で何もかも理由も聞かずに付き合ってくれる。(おにいさんのことなど)

本当は不器用ではない山田さんは、本当は不器用なおにいさんから新しい価値観を学び、さくらとの関係性を進展させていく。

思い出したくなかった辛い過去が、実は幸せのために必要なことだった。

そう教えてくれる1冊。

心に刺さった言葉を引用して終わろうと思う。

「思い描いたとおりに生きなくたって、自分が幸せだと感じられることが一番だ」

p159

今の私の心にまっすぐに刺さった。

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