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2023年の元旦に思うこと #67

全訳を完了した

16世紀英国教会説教集 Certaine Sermons or Homilies の全訳を2年と9か月をかけてなんとかひととおり終えた。しかし「ひととおり終えた」だけではどうしようもない。自分の目標はこの翻訳を世に出すこと。世に出して多少なりとも学の一角に貢献して後世の役に立つこと。しかし、越えねばならないハードルはたくさんある。

越えないといけないハードルその1

①まずは翻訳それ自体の問題。ひととおり終えただけで推敲を重ねてたなどとは言えない。日本語を洗練させなければならない。どこまでもきりがない感じさえするが、極限まで研ぎ澄ますつもりで進めなければならない。
②学術書としての価値を求めるなら、注釈の充実を図らなければならない。たとえば、「アウグスティヌスは○○○○と言った」などというのがあったとする。これはアウグスティヌスのなんとかという著作のここからの引用だと示す必要がある。ところが悲しいかな、原本にはその参照がない! つまり手探りでいくしかない。これはかなり時間がかかる。推敲に推敲を重ねることと並行していかいないといけない。

越えないといけないハードルその2

③そして最大の問題。これは出版できるのかということ。出してくれる出版社に出会えるかということ。商業出版の価値があるかということ。これはとてつもなく大きい。需要がなければ供給の要はない。16世紀イギリスの官製の説教集ですよ、シェイクスピア時代の思潮の底流をなしていたんだと思いますよ、この本は。アングリカンチャーチ、日本で言うと聖公会に関わりますよ。・・・だからどうした、それがなんだ、そうなるのがオチな気はする。この説教集の翻訳を欲しがるだろうのは英文学、神学、宗教学、歴史学あたりの研究者くらい。それでいいと言えばいいのだが、それで出版は厳しいだろう。まずはややライトなかたちで、現代的なテーマを持つもののアンソロジーからという手もあるのかもしれない。

需要を作る

そこで今していること。というか、し始めたこと。端的に言えば需要を作ることである。Twitterでこの説教集の名言(主観)を発信している(@sermons218tm)。この説教集で引用の聖書名言(主観)も発信している(@bible218tm)。でも効果としてはまだまだ微々たるもの。世に知ってもらうためにはまだまだまだまだパンチが必要。思案しているところである。もっともっともっと「宣伝」は必要だなと。いろいろ勉強しないといけない。

思わぬ収穫

しかし、Twitterで発信していて思わぬ収穫があった。それは「翻訳を客観視できること」だった。原文があって、和訳をして、推敲をして、そのなかからこれはというのを選んで発信しているが、あらためて読むと変な日本語であることがままある。文脈がないからというのではない。文脈がなくても名言として粒がたっていなければならない。さしずめ、ウニの軍艦はチューブ状やスライム状ではなく、粒があって甘味があるというのと似ている。Twitterで発信していての思わぬ収穫である。

現在地

さて、2年と9か月をかけてひととおり翻訳を終えた説教集だが、推敲をしつつTwitterで発信し、noteでは解説と試訳を投稿している。
①Twitterは9月の下旬から始めた。
②noteは10月の下旬から始めた。
この説教集には第一と第二があるが、第一説教集について、解説と試訳の投稿を終えた。これをしていてまたいろいろ勉強になっている。気付きも多い。することがたくさんある。どこまで行っても終わらない。でもだからこそやりがいがあるし楽しい。

(「第一説教集」の扉ページ)

2023年の抱負

①まずは第二説教集の解説と試訳の投稿をする。第二説教集は分量として第一説教集のなんと3倍であり、第一説教集の解説と試訳の投稿に2か月を要したので、単純計算で6か月かかる。2023年の6月末までにnoteでの第二説教集の解説と試訳の投稿を終わらせる。むろん推敲は並行するし、そのなかでTwitterでの発信も増えていく。
②そうして2023年の前半が終わったとして、後半は、特に夏の時間があるときに(夏休みはいささか学校の業務量が少ない)、注釈を施すために図書館への入り浸りをする。それを皮切りにして、2023年中に、つまりこれから1年後に、注釈を完成させる。もちろん訳文の推敲は進める。2023年の終わりまでに一応の完成体にもっていきたい
③その上で、出版に向けてあれこれと動かなければならない。これは①や②と同時並行である。
忙しくも充実した1年になりそうだ。夢を描き、夢を追いつつ、今を精一杯に生きるという姿勢でこの年も頑張りたい。よい年になるように祈るところである。

(「第二説教集」の扉ページ)

思いは力

「そうなろうと思う者にしかそうなることはできない。」これは30年も前に恩師からいただいた言葉である。これを強く胸に刻んで生きる2023年にしたい。道は長い。しかし一歩一歩。これをやりきれるのは自分だけだという気持ちで進んでいく。学に憧れ、業をなす。その業が後世にいくばくかの貢献を残し、受け継がれていく。その連綿のなかに身を置きたい。52歳の誕生日、2023年の元旦に思うこと。一学徒としての決意である。


Twitterもご訪問ください。
高校英語教師が翻訳した説教集(@sermons218tm) / Twitter
高校英語教師が選んだ聖書名言(@bible218tm) / Twitter
翻訳出版を目指す高校英語教師(@tmtm218tm) / Twitter

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