『死に魅入られた人びと ソ連崩壊と自殺者の記録』スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ/ノーベル賞チャレンジ
ロシアの自殺未遂者、自殺者の近親者への聞き書き集。
やっぱり語りってすごい。
その人だけの言語がある。
彼ら自身の理屈も、あってるとかおかしいとかはあるけど、そういうのを超えた何かが見える。
アレクシエーヴィチは歴史に無視される小さな声を集めながら、
「小さき人の声が必ずしも合っているとは考えない」
という冷静さも持ち合わせている。
やっぱり気になるのは、時代の変化についていけなかった人たちのこと。
ソ連崩壊で社会主義が資本主義になり、「理想国家を建設しよう」から「個人の幸せは個人で頑張りなさい。生活が苦しいのは努力か才能の不足だ」という転換があった。
社会主義を信じて苦労を乗り越えた人は、純粋で上の言うことを聞いた人だと思う。そのために食料の不足や不当逮捕や、あらゆることに耐えた。そこでの思想の大転換。すると戦争に行って人を殺してきたという事実だけが残る。良心の呵責に耐えられず滅ぶしかなかった。
純粋で信じやすくて不器用、世間の同調圧力に流されるというのは、欠点ではあるけれど、どの程度罰されるべきなのかな。難しい……。
しかも、時代の真ん中にいる間は、そういう人は評価される。
逮捕・拷問されないように立ち回り、戦争に行き、時代が変化したら商売を始め、自分の過去をなんとか消化して生きる、こと、が優れている。
これの、何かが切なくてたまらない。
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