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吉原の子供たち『たけくらべ』樋口一葉

原文のリズムがすごくいい。ただちょっと難しかったので意味を理解するのは早々に諦めて、川上未映子版の現代語訳と突き合わせて読んだ。
川上未映子は詩人でもあるので、韻とかリズムをすごく丁寧に訳出してくれている感じ。
「なんなの。なんなのむかつく」
とか、とても分かりやすい。
彼女の訳は素晴らしかったと思う。

日本最大の遊廓・吉原のそばに住む子供たちの物語。

売れっ妓の姉をもち、ゆくゆくは遊女になる運命の美登利。
家を継ぐことが決まっている、お寺の長男・信如。
高利貸の祖母と二人暮らしの正太。
正太の家から金を借りている人力車夫の息子・三五郎。
鳶の息子・長吉。

「どれだけ理不尽にやられようと、お世話になっている金貸しの子と喧嘩になること自体がいけない」
三五郎、子供のころから苦労人だなぁ……。人当たりのいい三枚目なので上流階級の正太に気に入られて、かえって損をしている。魅力のない人物なら、同じ階級の長吉たちと仲良く遊べただろうに。正太と付き合わなければならない影響で上流下流両方から裏切り者呼ばわりされる。

この作品では稼ぐ花魁の家族や金貸しが上流扱いされてるけど、そのこと自体、この地域が恵まれてない証拠な気がする。
ヒロインの美登利は女郎になるけれど、将来的に身請けができる可能性があるのは、正太ぐらい……?
信如が主人公になっているみたいだけど、彼は仏門に入ることに厳格なので、誰とも結婚しない可能性もあるし。


作品の後半で美登利がうつ状態になるのはなぜか、という点で議論が分かれているらしい。

私は、美登利が借金を背負わされたからだと思った。
美登利が姉の店から豪華な衣装で出てくるところからうつ状態が始まっている。
まずは着物代で借金を負わせ、高い利息を取る。どれだけ稼いでも自力で抜けることは不可能で、身請けがない限り死ぬまで働かせる。それが吉原のシステムだと、何かで読んだ。
美登利はその場面の後、家で鬱々と過ごしている。母が「大丈夫、じきにもとの美登利に戻りますよ」と余裕のある対応をしているので、すぐに仕事が始まった感じもしない。
一度お客を取らされた後で家に帰すのは違和感があるので、(というか身請けか脱走以外の方法で大門の外に出ることはない)借金の証文の段階かな、と思うんだけれど……。

処女であることが重要なことなのかは分からないけれど。当時、文壇で評価されるためにどのような貞操観念がいいのか、よく分からないからなぁ。庶民全員が字を読めたわけじゃないしなぁ……。

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