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おまじないのような


早朝に目が覚めてしまった。


原因は、夕べ飲んだコーヒーと(コーヒー、紅茶が好きだけれど、カフェインにはけっこう敏感…)
最近割とよく、やってくる、いろんな心配や不安たち。


現実には何も起きてない、困っていない時に、のこのこやってきて、わたしの心に居座る。
で、焦ったり何とかしなきゃとなるけれど、空回りだったり、周りを巻き込んでしまったり。
振り回される。


そんな時に思い出して、勇気づけてくれる言葉がある。
それは『モモ』の中のベッポじいさんがモモに教えてくれたこと。(ベッポじいさんは、掃除夫をしてる。)

「とっても長い道路をうけもつことがあるんだ。おっそろしく長くて、これじゃとてもやりきれない、こう思ってしまう。」

しばらく口をつぐんで、じっとまえのほうを見ていますが、やがてまたつづけます。

「そこでせかせかと働きだす。どんどんスピードをあげてゆく。ときどき目をあげてみるんだが、いつ見てものこりの道路はちっともへっていない。だからもっとすごいいきおいで働きまくる。心配でたまらないんだ。そしてしまいには息がきれて、動けなくなってしまう。道路はまだのこっているのにな。こういうやり方は、いかんのだ。」

ここでしばらく考えこみます。それからようやく、さきをつづけます。

「いちどに道路ぜんぶのことを考えてはいかん、わかるかな?つぎの一歩のことだけ、つぎのひと呼吸のことだけ、つぎのひと掃きのことだけを考えるんだ。いつもただつぎのことだけをな。」

また一休みして、考え込み、それから、

「すると楽しくなってくる。これが大事なんだな、たのしければ、仕事がうまくはかどる。こういうふうにやらにゃあだめなんだ。」

そしてまたまた長い休みをとってから、

「ひょっと気がついたときには、一歩一歩すすんできた道路がぜんぶおわっとる。どうやってやりとげたかは、自分でもわからんし、息もきれてない。」

ベッポはひとりうなずいて、こうむすびます

「これがだいじなんだ。」

ミヒャエル・エンデ 『モモ』より


読んだら、ソワソワしていた気持ちがすっと、落ち着く。
今は、たぶん心配でたまらなくて、すごい勢いで働きまくろうとしてしまっているな、と気づくから…



もうひとつ、自分がこうありたいな、と思う詩もある。

『みずうみ』

だいたいお母さんてものはさ
しいん
としたとこがなくちゃいけないんだ

名台詞を聴くものかな!

ふりかえると
お下げとお河童と
二つのランドセルがゆれてゆく
落葉の道

お母さんだけとはかぎらない
人間は誰でも心の底に
しいんと静かな湖を持つべきなのだ

田沢湖のように深く青い湖を
かくし持っているひとは
話すとわかる 二言 三言で

それこそ しいんと落ちついて
容易に増えも減りもしない自分の湖
さらさらと他人の降りてはゆけない魔の湖

教養や学歴とはなんの関係もないらしい
人間の魅力とは
たぶんその湖のあたりから
発する霧だ

早くもそのことに
気づいたらしい
小さな
二人の
娘たち

茨木のり子『茨木のり子詩集』より



気づけば、ことばたちにいつも慰められている。
人に話してもいいのかもしれないけれど、時には余計に不安や心配を増幅させてしまったりもするし…
何とかしようとするよりも、またやって来たんだね、と受け入れて静かに見守ってあげていると、ソワソワが和らいでいくような気がしています。


さぁ、今日も一日をはじめなくちゃね。




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