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これ好き!「花とアリス」

自分は岩井俊二監督の作品が基本的に好きです。もっとマニアックな事を言うと、その中でも篠田昇さんという方が撮影している作品が好きです。その真骨頂ともいえるのか、この作品じゃないかなと思っています。(今回はマニアックすぎて、ストーリーについての話はあまり出てきません。すいません。話の詳細は、リンク先で見てもらえたらと思います)

映像がきれい

岩井俊二監督と、篠田さんの組み合わせで一番思うのが、映像がきれいなのです。きれいというのは、高精細ではっきり、くっきり映りますとか、めったに見られない世界の美しい風景が盛りだくさんというわけではありません。うまく言えないのですが、光をとらえるのがとても素敵なのだと思うのです。

何気ないシーンでも、窓から差し込んでくる豊かな光が見えたり、逆に夕焼けの中で主人公たちが自転車をこいでいくというシーンは、主人公が影しか見えなくて、それが動いていく。とても文字では書けないので見ていただきたいのですが、そういった光の使い方が考えられていて、美しく、見入ってしまいます。

この作品のDVDを買ってメイキング映像を見たところ、映像撮影用のカメラの前に、クラシックカメラを置いて、わざとクラシックカメラのレンズを通した映像を撮影するという技法を使っていました。昔のレンズは性能がよくないので、フレアがでたりする。逆にそれを活用してるのだと思います。

自分なりに表現するなら、「多少の美化も含めた記憶の中の良い思い出」というものを映像化しているイメージです。

登場人物のやりとりが、リアル

ちょっと無粋な事を言ってしまうと、映画やドラマは脚本があります。そのセリフをつないでいって、ストーリーができます。考えてみれば当たり前なのですが、そうすると、日常僕たちがしゃべってる感じと、映画やドラマの中の会話は違ったものになります。例でいうと、映画、ドラマ等は、ストーリーに必要な内容のみしゃべってたり、はきはき聞き取れるしゃべり方をしていたり、しゃべる必要がある人が、うまく順番にしゃべっていたりします。

逆に現実は、途中で話題を変えたり、力が抜けた感じで、もごもごしゃべったり、しゃべりたい人がぶつかって譲り合ったりします。本当はそういうものなのだと思うのです。こういった現実に近いしゃべり方を岩井俊二作品ではよく見る気がします。それがとてもリアルに感じられるのです。もちろん脚本、セリフがあるのでしょうけど、そのしゃべっている感じは、本当にこういう人いるかもなと思ったりします。これは演出の違いなのかもしれません。

まとめ

総じて、一般的な映画とは別の、誰かの記憶をみているような錯覚に陥るのが岩井さん×篠田さんの作品な気がします。

さらに、この作品は、青春時代の淡い恋みたいなものが話のベースにあります。アラフォー世代は、それなりに長い人生を生きてきたからこそ、若いころの、ほろ苦い恋の思い出や純粋さ、不器用さというものを、ノスタルジーとして楽しめると思います。

さらに前述したような、記憶の中のある種美化された世界のような映像が、あの青春時代に特有の感覚に浸らせてくれます。僕と同じアラフォー世代にもおすすめです!


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