見出し画像

光景を書く

 以前にお知らせした件の、

 受賞作をまとめた作品集が届きました。


 春らんまん! かわいらしい表紙に心が浮き立ちます……! 担当者様方、審査員の皆さま、大変お世話になりました。ありがとうございました!

 書いたものが本に載るとは、身が引き締まりますね。
 書いている最中には「なんかたらたらした文章やなぁ」とか「しまりがないな」とか「ぐずぐずしてらぁ」とか、もっとスッキリしたスマートな文章を書かねば、とかとか思いますが。
 公募を目指した作品とあり、何度も推敲して整えはしたものの。表紙に心踊り紙のページをめくり、他の受賞作に感情が揺れ動き、インクに記したわたしの作品と向き合うと……不思議。これわたしが書いたのか、なぁんてドキドキした。ドキドキしながらも頭は冷静で文章もすんとしていて。

 あぁ、本っていいなー。と。
 これまでの「本が好き」とは違う形の「本が好き」という感情を見つけてしまった。

 エッセイだから、自分で自分のことを書いているはずが、本となり読み返すことで、ひとつ距離をあけて向き合えたような。違う自分として迎え入れることができたような。とにかく自分で自分を楽しめた。

 と同時に、わたしが他の受賞作品を読んだのと同じく、この本を手にした人がわたしの作品に目を通すのだと思うと……自分で綴る言葉を大切にしようと改めて感じる。読後も心に添えられるような、存在感を思わせるような、「寄り添う言葉」を意識していかなければ、と。

 作品集には心温まるエピソードが盛りだくさん。その場の光景が自分のことのように、目に写り込んでくる……。
 第二回の開催もあるとのこと。また応募するために、やっぱりこれからも書き続けねば!

 とっても励みになりました。
 ありがとうございました!


はとと桜(うしろすがた)

 ちょっと一区切りして。

 公募ガイドにてある賞の募集要項を眺めていた。ホンワ~ン……とテーマに沿った映像が頭をよぎる。これ、書けるんじゃない? と思って取りかかる。

 このところエッセイか、職場の広報紙みたいなものを書いていた。最後にフィクションを書いたのは、半年ちょっと前。
 書くのは楽しい。楽しい中に、なんだかうまく言えないのだけど……十年くらい前のバリバリ小説家志望の頃にない、書きにくさを感じていた。

 フィクションとは、作り話であるから、「すべて」は作者の頭にあるわけで。

 でも「すべて」は作中で明かされなくてもいいわけで。
 読者の直感「え? ここでこう動くの? そうかこういう気持ちから……」とか感性にお任せしながら楽しんでいただけたら、と思いつつ。
 どこまで明かす? どこからを委ねる? その判断がすっかりできなくなってしまった。

 小学生の頃に通っていたそろばん教室の先生の口ぐせに、こんな言葉があった。

「一日さぼったら取り戻すのに十二日かかるのやぞ」

 あの頃はぴんとこなかった。大人になるにつれ身に染みる。
 小説書きを半年ちょっとやらなかったから、取り戻すのに、何日かかる?

 いや、去年の年明け、唐突に「今年からまた書こう」と十年ぶりに小説を書いたとき。
 意外にもすんなり書けた。書きたい情景や人物が、日常のすぐそこにある光景だったからか。プロットも人物表もなぁんにもない場所から、四時間くらいで一作完成させて、エブリスタの「妄想コンテスト」に投稿した。

 このときに「どこまで明かしてどこからを委ねるか」と深く考えなかった。思うがままだったかもしれない。

 でも、そうだ、ワンシーンを切り取り小説に仕立てる、この「ワンシーン」だけを書いた作品となった。妄想コンテストの応募規定は100文字から8000文字まで。書き上げた作品内は、時間にしたらたぶん五分程度の出来事だったろう。
 おばあさんが青年と手をつなぎ玄関へ行き靴を履き替え車に乗る。ただそれだけを書いた。「それだけ」の中に必要なことだけを明かした。おばあさんの鞄は青年が持っていて、おばあさんのつないでいない手は杖をついている。青年はおばあさんと会うのが今日でおしまい。最後の一日だけどまた会えばいいと青年は思う。ただ、おばあさんの病状や身体状況を見ると「また会おう」の約束は必ずしもできない。青年はそう教わる。という具合に。

 ここまで書きながら、なぜ小説を書きにくいと感じたか理解できた。応募規定の文字数に対して、書こうとする内容が広かったのだ。明かすのはワンシーンでいい。そこに至るまでのことやその後の話はとりあえず取っ払って。
 わたしが応募するのは大抵2000文字前後か、多くても妄想コンテストくらいの文字数の賞だから「光景を切り取る」ことを頭に置いて書いてみよう。美郷町エッセイ賞の作品集も、文字から景色を魅せるお話ばかりだった。写真を撮るつもりで、ピンポイントに焦点をあてて。
 頑張って書き続けなければ。またいい報告ができますように。

この記事が参加している募集

自己紹介

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?