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野良ネコに家を乗っ取られるまで1~3

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野良ネコと出会って、家に住みつかれてしまうまでの、約1000日の悲喜こもごもを振り返るエッセイの前半。後半は乗っ取られてからの話。
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野良ネコに家を…3:第12話 乗っ取り完了?

野良ネコに家を…3:第12話 乗っ取り完了?

⑫乗っ取り完了?

膠着状態かと思われた階段攻防戦で一歩リードしたのはウリだった。
とある午後、2階にいるときに視界の端で何かがすっと動いた。
えっ?とそちらを見ると、猫のカリカリを入れた赤い缶にウリが首をすりつけていた。
こらこら!ウリちゃん!上がっちゃだめでしょ。
あーびっくりした。音もなく、ついに階段の上まで到達されてしまった。これはさらに壁を強化せにゃ!まだ勝負はついていないぞ。

暖かく

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野良ネコに家を…3:第11話 2階を死守せよ!階段攻防戦

野良ネコに家を…3:第11話 2階を死守せよ!階段攻防戦

⑪2階を死守せよ!階段攻防戦

ウリとトラは気が向いたときにうちに遊びに来て食事をし、昼寝する。
1階の玄関から廊下にかけて、すっかり猫さま専用スペースとなっていた。熟睡しているときは玄関ドアをそっと閉めて、私は1階の自室か、2階の居間へ。

ウリは外に出たくなるとにゃあにゃあ呼ぶ。あるいはドアの取っ手にとびかかって、出る~!とアピール。
そのガチャガチャいう音を聞いて、急いでドアを開けに行く。

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野良ネコに家を…3:第10話 猫さまたちの〇〇事情

野良ネコに家を…3:第10話 猫さまたちの〇〇事情

⑩猫さまたちの〇〇事情

もともとうちにはベニバナマンサクの木が4本並んでいて、春になるとピンクの花を咲かせる。家を買ったときに初めから植わっていたもので、別に私の趣味ではない。

何の世話もしないのにどんどん伸びて、年に数回は剪定しないと枝がお隣の敷地にまで入ってしまう。はなはだ面倒な木だ。
以前は日曜にこの枝を切っていると、よくウリとラファが見物に来た。
おー、なんか始まったにゃー。何やってる

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野良ネコに家を…3 第9話 はじめての添い寝

野良ネコに家を…3 第9話 はじめての添い寝

⑨はじめての添い寝

たまたまのぞいたペット用品店で冬物セールをやっていた。あったかそうなドーム型のベッドを発見。これは、寒がりトラちゃんによいのでは。
でもトラちゃん、いまの段ボールベッドも気に入っているしな…。
2000円のベッドをじっと見つめて悩む。

100円ショップでネコじゃらしと首輪、それにトイレ用のケースを買った以外、ちゃんとしたペット用品を買ったことがない。
そのにゃんこベッドは形

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野良ネコに家を…3:第8話 にょろにょろ騒動

野良ネコに家を…3:第8話 にょろにょろ騒動

⑧にょろにょろ騒動

うっかりトラが膝にのってきて動けなくなることが相次いだため、玄関に「トラちゃん文庫」を設置。と同時に、廊下に座っていても手が届く所にコートを常備。よっしゃ、これで万全!

ああ、猫を膝に乗せながら、本を楽しめる日が来るなんて…。
猫に乗られて動けなくなるのは猫飼いあるあるらしく、まさに「トラちゃん文庫」に入れていた、卵山玉子さんの猫マンガにも同様のエピソードがあって笑ってしま

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野良ネコに家を…3:第7話 トラちゃん文庫

野良ネコに家を…3:第7話 トラちゃん文庫

⑦トラちゃん文庫

お隣さんからうちの木が倒れていると聞きあわてて外へ。
お隣はいわゆる旗竿住宅。つまり住宅が道路に面しておらず、うちの横の通路を通って玄関に至る。
その通路に沿ってうちの敷地に4本のマンサクの木が生えているのだが、うち1本が雪の重みと強風で根が浮き上がり、完全に横倒しになっていた。

帰宅したご主人はさぞ驚いただろう。確かにこれでは家に出入りできない。
暴風雪はまだ続いている。飛

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野良ネコに家を…3:第6話 極寒の2月

野良ネコに家を…3:第6話 極寒の2月

⑥極寒の2月

このころ、日中、家にいる間はなるべく玄関ドアを開けたままにして(人間は通れない幅で固定)、猫が自由に玄関先に上がれるようにしていた。
猫が来ると、ごはんついでに一緒に遊ぶ。
フローリングにはバスタオルを敷いてあるが、ドアが開けっぱなしなので玄関先はけっこう寒い。

そこでまずは電気ストーブを導入。さらに細長い板状のホットカーペットもどきを廊下に敷く。
これは台所で使うといいよと、む

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野良ネコに家を…3:第5話 野生の証明

野良ネコに家を…3:第5話 野生の証明

⑤野生の証明

ウリのために再び首輪を購入。
案の定、2本目もあっという間に失くしてきた。(今回はペットショップではなく100円ショップで買ったので損失は100円ですんだ。)

正直なところ、首輪をしようがしまいが、本人いや本猫たちにとっては同じ。基本的な居場所は外であり、気が向いたときにうちに来てご飯と昼寝。何も変わらない。
そういうわけでウリに首輪をはめるのはあきらめた。

(※東京都では条例

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野良ネコに家を…3:第4話 野良から飼い猫へ?

野良ネコに家を…3:第4話 野良から飼い猫へ?

④野良から飼い猫へ?

トラを病院に連れて行ったときに、先生に怪訝な顔でこんなことを言われた。
「こういう子(少し人に慣れている野良)は、もう誰かが手術しているかもしれませんよ。お腹開けてみたら手術してあったなんてこともありますから。」
翻訳すると、「あなたみたいなおせっかいおばさんに既に手術されていたとしたら、また麻酔されてお腹切られるなんてかわいそう」…てこと。

ウリの一件(詳しくはシーズン

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野良ネコに家を…3:第3話 緊張のオペ

野良ネコに家を…3:第3話 緊張のオペ

③緊張のオペ

サバシロのにっちゃんは、もしやウリの弟なのでは?
昔の写真を掘り出して見てみた。しかしママニャンの子はしっぽが短く、明らかににっちゃんではなかった。

年が明け、2017年になった。
正月休みがあけた動物病院に早速電話し、トラの避妊手術の予約を取った。
トラは毎朝必ず来る。だから手術の日の朝も、玄関に入ってきたところで身柄を確保し、朝ごはんをあげずに病院へ連れて行けばいいのだ。

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野良ネコに家を…3:第2話 にっちゃん

野良ネコに家を…3:第2話 にっちゃん

②にっちゃん

うちの真ん前で猫のケンカが始まった。小雨の中で辺りに白い毛が飛び散っている。
こらー!だめだめ!
叫びながら、私は困惑していた。
ウリとウリにそっくりな子だった。

唸り声をあげて激しく争っていた二匹の猫は、私が叫びながら駆け寄ってくるのを見てパッと離れ、それぞれ別の方向に走っていった。
あんな子、初めて見た。どこから来たんだろう…。
ウリを他のサバシロの子と見分けるにはしっぽがポ

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野良ネコに家を乗っ取られるまで3:第1話 ウリふたつ

野良ネコに家を乗っ取られるまで3:第1話 ウリふたつ

①ウリふたつ

トラが空のプランターに入っているのを見て、玄関先に段ボールを置いてみた。
翌日。
…ウリとトラがふたり一緒に入っていた!
面白すぎる!もっと早く箱を用意してあげればよかった!

入ってくれるんならと、こちらも色々考える。
まず箱の中にバスタオルを敷く。そして段ボール箱のフタを立てて固定し、より風を避けられるようにした。

さらに寒くなってきた。もっと暖かくしてあげたい。
猫用に湯た

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野良ネコに家を…2:第12話 プランター

野良ネコに家を…2:第12話 プランター

⑫プランター

トラは朝、ドアを開けると速攻で侵入するようになった。もちろんウリも。
仕方ない、じゃここで食べていいよ。降参降参。まんまと土間を縄張りにされてしまった。
しかしこれは、トラを病院へ連れて行く布石としては好都合だった。

夕方も、ドアを開けるとトラやウリがそろりと入ってくる。
そこで上がり框に古いバスタオルを敷いて、猫と遊ぶようになった。ただしそれより奥や他の部屋には入られないよう気

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野良ネコに家を…2:第11話 ライバル出現

野良ネコに家を…2:第11話 ライバル出現

⑪ライバル出現

謎はすぐに解けた。
その日、トラは食べ終わってからもしきりにトレーをなめ続けた。そしてやおら前足でトレーの端を踏みつけると、立ち上がったトレーの向こうの端に嚙みつく。
わ、ダメダメ、それは食べられないよ、トラ!

プラスチック片なぞ食べたら命にかかわる。一瞬あせったが、よく見るとトラはかじりとった破片を器用にぷっと吐き出し、首を振って飛ばしている。食べていたわけではなかった。

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