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野良ネコに家を…2:第11話 ライバル出現

⑪ライバル出現

謎はすぐに解けた。
その日、トラは食べ終わってからもしきりにトレーをなめ続けた。そしてやおら前足でトレーの端を踏みつけると、立ち上がったトレーの向こうの端に嚙みつく。
わ、ダメダメ、それは食べられないよ、トラ!

プラスチック片なぞ食べたら命にかかわる。一瞬あせったが、よく見るとトラはかじりとった破片を器用にぷっと吐き出し、首を振って飛ばしている。食べていたわけではなかった。
後になって分かったが、これはトラちゃんの、おかわりよこせー、足りないにゃー、という抗議だった。

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ウリもママニャン同様、トラをうちの前庭で遊ばせるようになった。
親子してバッタを追い、蝶を捕ろうとジャンプし、寝そべってごろごろ。
そんなある日、ふと気づいた。はす向かいにある古いアパートの1階、とあるドアの前にフタを開けた猫缶が置かれている。
おや?あそこも野良ネコにごはんをあげているようだ。

その部屋に住んでいるのは大学生らしき若い男性だ。髪は真っ黄っ黄だが、見かけによらずネコ好きなのか…。
やがて隣家の奥さんから、彼が小学生の野球クラブのコーチをしていることや、近所のコンビニでバイトをしていることを知った。
変な人ではなさそうで安心。時折、彼女らしき女性も出入りしていて、彼女さんはウリを見て「かわいい!」と言いながら触ろうとしていた。

彼がドアを開けたのに気付いて、トラとウリがそちらに走っていく場面を見かけたこともある。トラはドアの隙間から部屋へ入ろうとすらしていた。
野良ネコに優しい人が近くにいるのはありがたい。しかし…
なんだか素直に喜べない…のは…ジェラシー?

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そんなある朝、彼は紙皿に置いたカリカリをうちの隣家の敷地に放置。
こらこらー!置きエサはいかんよ。
ごはんをあげるなら、食べ残しの処分や後片付けをちゃんとやらないと!
エサを放置したことで、エサやりさんが批難されるだけでなく、猫がいることがばれて猫嫌いに保健所へつれていかれることもあるのだよ。
猫の命にかかわるのでエサを置きっぱなしにしてはいけなーい!
しかもこんなところに置いたら、私がやったと思われるじゃないかー!

そもそも大学生ってことは、数年でそこを引っ越すわけでしょ?
アパートなんだから、懐かれたとて飼えるわけでもなし。
謎のライバル心を燃やす私。

こうして私はウリとトラにこれまで以上に構うようになってしまった。
そしてふたりは、ついに我が家の内側にまで縄張りを拡大するのである。

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