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野良ネコに家を…3:第2話 にっちゃん

②にっちゃん

うちの真ん前で猫のケンカが始まった。小雨の中で辺りに白い毛が飛び散っている。
こらー!だめだめ!
叫びながら、私は困惑していた。
ウリとウリにそっくりな子だった。

唸り声をあげて激しく争っていた二匹の猫は、私が叫びながら駆け寄ってくるのを見てパッと離れ、それぞれ別の方向に走っていった。
あんな子、初めて見た。どこから来たんだろう…。
ウリを他のサバシロの子と見分けるにはしっぽがポイントだ。ウリの長いしっぽは黒っぽいサバ柄だが、先端の2センチだけが真っ白なのだ。

しばらくして、いつぞや同様、3階から裏通りにウリがいるのを見つけた。
おや、またあそこにいる。うん?ちょっと待て、あれは本当にウリなのか?こちらを向いて香箱になっているようだ。しっぽは見えない。

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オペラグラスを持ってきてのぞいてみると…違う!遠目にはそっくりだが、よく見ると顔の模様が全然違う!ウリのように左右対称の柄ではなく、ブラックジャックのようにサバ柄が顔を斜めに彩っている。
もしかして、この間ウリと取っ組み合いになっていたのはあの子か!?

ところで玄関の段ボール箱はなかなか好評で、ウリとトラは箱の中で夜を過ごしているようだった。私は気をよくしてすうじつごとにタオルを替え、毎晩湯たんぽを入れてあげた。(基本、世話好きです。)
師走のある日、仕事から帰るとまだ日が高いというのに、すでに段ボール箱にウリが…いや、ウリじゃない!
あの子だ。裏通りに佇んでいた、あのサバシロの子が入っている!

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こらー!そこはウリとトラの巣なのー!
近づいてくる私に驚き、その子は箱を飛び出して逃げて行った。
追い払ったものの、ちょっとかわいそうなことをした、と思った。
あの子はきっと、あ、いいとこ見つけたー♡、と入っていたのだろう。外にある以上、この箱は誰が入ってもいいはずだ。
…ごめんね。でもここに入っているとウリが来た時にまたケンカになるから…。

この子をとりあえず「ニセモノくん」と呼ぶことにした。ウリのニセモノということで。だが呼びにくいので、やがて「にっちゃん」に落ち着いた。
にっちゃんはその後もうちの近所に出没し、度々ウリと衝突することになるのだった。
ある時ふと、にっちゃんはウリの弟ではないか、という気がした。ママニャンが今年産んだ4匹の中にサバシロが一匹いたことを思い出したのだ。

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