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りばるの紀行 ~大英博物館マンガ展の思い出⑤~

まさかの遭遇から神回避まで

 このマンガ展、中央エリアには本棚とソファが設置され自由に閲覧できるコーナーもありまして。幅広い年代の様々なジャンルのマンガがずらり!でした。(おそらく某館長のご協力のはずwww)
 休憩がてらその本棚を物色。とりあえずお手軽に目が通せる短編でかつこの場で展示されているものでも・・・と思い『ね○式』をセレクト。シュールの極みだなと弟と話しつつしばし座ってゆっくりしていました。

 そうしていたら、不意に「わぁー、北斎の横に並べて貰ってるー」と日本語が私の耳に飛び込んできたんです。

 当然日本人なんて数人しかここにいません。それでつい思わず耳が反応したんだなと思いながらも、文脈があまりにも気になり過ぎます。どう考えても「北斎の横に自分の作品を並べてもらって光栄です」のニュアンスなので、展示作者が言う台詞でしかない。
 「え? どーゆーこと? そういうことなの?!」と声のした方へ顔を向けると、ネームタグをぶら下げた博物館スタッフさんや御付きの日本人の方など複数人を引き連れたニット帽が目印の男性がそこに。
 驚きながら様子を拝見していると、その方は展示のマンガ原稿と北斎の原画の前に立って写真撮影まで。博物館スタッフからは時折解説だか案内だかを受けていらっしゃる。
 間違いなく作者ご本人ですよねー、と私らはボーゼン。
 だって日本に居たって遭遇することないのに、ロンドンでこんなピンポイント遭遇することあります?!

 何を隠そう写真撮影をなさっていたマンガ原稿は、この地にうってつけな、ビックベンを前に見た目は子供・頭脳は大人な彼が本来の姿で幼馴染の女の子に告白をしているシーンのもの。
 周囲のお客さんで青○先生の存在に気付いた人は他にいない様子。声掛けて変に騒ぎになるのもいけないだろうし、掛ける言葉も咄嗟に浮かばないので(笑)私達は移動なさるのを待ってから、○ナンのコーナーを見ることに。ご本人撮影の直後に原稿の写真を撮れるだけで光栄ですよ。

 しかし私達の前で順に回っていらっしゃるので、必然的に出口まで後をついていく状態。ちょっと後半はそっちが気になって展示物があんまり頭に入ってこなかったですねwww

 出口間際には簡易コスプレコーナーが設けられ、〇カチュウの着ぐるみパーカーや悟○の衣装があるので自由に撮影を楽しむ人々。そして最後にもう一つ出口に撮影スポットがあり。その場で撮られたデジタルデータが壁のコマ割りされたマンガに投影されて、まさに自分がマンガのページの中に入り込める仕様。
 私も最後のデジタル撮影のはやりたかったんですが、なかなかに大行列で。先を行ってた青○先生が投影されてるとこをカメラに収めて満足することにしました。周りの人は勿論楽しそうにコマに入って流れていく自分達をニコニコ見てましたが、そこに大御所漫画家さんがリアルに混じってると知ったらどんなテンションになるんだろ、と私はほくそ笑んでましたwww

 細部まで興味深い展示方法のマンガ展に大満足!
 会場を出た先がお土産売り場に直結しているのは万国共通。

 父から「図録を買ってきて!!」と頼まれていたので、鈍器レベルにブ厚い図録の山をチェック。海外って日本人から見ると陳列が雑過ぎて、商品たる本の角とか完全に傷みがち。比較的綺麗な物を弟が探し出してくれ、他に山のように展開されているグッズを眺め歩き。
 私、父の反動で、グッズ集めだとかサインだとかにはほぼ食指が動かないんですよね。見るのは大好きだし投資が大事だとわかっていますが、このお土産売り場で購入したのはバラマキ用のアリスの可愛らしい紅茶缶のみ。

 すっかりお腹も空いたし館内のカフェでいい加減にランチにしようと、特別展示室を出ると・・・午前中とは比べ物にならない人出!
 人の波を抜けるのも一苦労。この人ごみでせっかくの満足感が消失してしまいそうだったし、何せ鈍器のような図録が重い。(いや、弟に持たせてたけどwww)このままホテルに戻って荷物を整理してカフェを探し、常設展は後日に回してロンドン探索に予定を急遽変更することにしました。

 それにしても素晴らしいマンガ展の充実感と興奮が全く冷めやらない。

 あれこれ感想を語り合いながら、ラッセルスクウェアの交差点で信号待ち。
「そういえば、朝ここにいたリアル・コナ○君の写真撮れてたらなー。そのあとの作者と遭遇までがセットで、すごいネタの証拠が残せたのになぁ」
「まさか朝の散歩が伏線になるとか思わないし! ランチの後は、このままベーカー街に決定だね。アビーロードもそっち方面だっけ?」
 なんてわーわー喋りながら公園の敷地内を斜め横断。

 なーんか私達の後ろにいる二人組が近い。パーソナルスペース近すぎじゃない?

 喋りながらも「あ、気を付けた方がいいかもしれない」となんとなーく私はそこにふと意識が向きました。
 その直後。
 唐突に「あ。今、男が隣の人に合図した」と直感的に流れを把握しました。
 バッと振り返ったら弟の真後ろにいた女性がボディーバックのチャックを開けている最中ではありませんか。
 通じない言語だろうがまずは牽制!!!とばかりに私は思い切り日本語で「はぁぁ?! ちょっと! 触らないでくれます?!」と大声で弟のバックの口を押えてカバー。女性は「Sorry」とか言ってるけど内心は(ふざけんなゴメンじゃねぇんだよ)と怒り心頭の私は睨んで盛大に舌打ち。
 「捕まえるなら今だから、お財布とパスポート、物が盗られてないか見て!」
 と弟に指示しながら、念のため私も自分のバックをチェック。男女二人組はそそくさと公園の外に移動するけど、私はガラ悪く最後まで睨みつけて「ちゃーんと目で追ってるからな」アピール。
 幸い、チャックが数センチ開けられた程度でした。なにせ私が察知したので。

 せっかくの楽しい気分が一気に怒りモードで吹っ飛びました。
 弟によればあの男女二人組、信号待ちのちょっと前から私達の後ろをずっとついてきていたらしいです。「信号待ちの時とか、ちょっと近いなとは思ったんだよね」と言っていましたが、その時点では私は全然気付いていませんでした。
 そう、振り返るまでちゃんと”男女二人組”と認識していたわけではないんです。なんとなーくそういうのは気配でわかるにしても、男性が女性にアイコンタクトした合図までを敏感に”わかった”のはとても不思議な感覚で。背後にいてくれる守護霊やご先祖さまがフォローしてくれたんじゃないかとか思ってしまうほどに、それは特別な瞬間的な”勘”でした。
 なんかよくわかんないけど本当にありがとうございます。いざ漁られててトラブルになってたら言語的に不利だし面倒になりかねない事案でしたので、未遂で本当に良かった。

 修学旅行に始まりその時点で延15ヵ国以上にお邪魔しましたし国内外どっちの旅行だろうと、スリに遭うなんて生まれて初めてでした。(まぁ今回もターゲットは私自身ではないし未遂でしたが)
 海外に行く時は必ずチャックでバックの口が閉まるタイプの物しか使わず、体の前に位置し、肩紐から手を離さない。これを癖付けています。
 弟にもそれは説明済みで、パスポートと財布はちゃんと奥に収納されていました。なので結局チャックを開けられたところで、出されたらすぐに重量変化で気づくようなタブレットか図録しか触ることは出来なかったとは思います。

 しかし、改めて観光やお喋りに夢中の観光客はいいカモなんだと実感。
 弟はこの直後からチャックの向きまで揃えて、なにか変化があればすぐにわかる工夫も加えました。
 このようなちょっとした意識で、隙が無くなっていくんだと思います。

 そして無事にホテルに帰宅して直結カフェに行く以降は⑥へ続く・・・。


(これは余談ですが・・・。
 スリを仕掛けてきた二人組の内の女性、ヴェールを身に付けていたので宗教・国系統がお察しなんですよ。
 民俗学大好きな私としてはそーゆー”アイコン”を身につけてイメージダウンさせないでほしーわーとか思っちゃいます。移民問題も絡むような生活困窮者なのかただの手癖なのか知りませんけど。自分の所属に恥じない行動をしてほしい、なんて思うのは驕りでしょうか?
 この程度のことで「あの宗教は」とか「あの国(地方)は」なんて主語を大きくして思ったりはしませんけど。こういうのが、普通ならば塵も積もって偏見に結びつくのかもしれません。回避が何より。
 なんてちょっとそんなことまで考えさせられる衝撃の体験でした。)


 




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