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りばるの紀行 ~大英博物館マンガ展の思い出③~

いざマンガ展!


 入口での導入は大友克○とC○MPの描く『不思議の国のアリス』。日英を結ぶ展示の導入としてアリス作品に勝るものはないかも!
 会場の入り口を大友アリスが覗き込んでるからそのまま一緒に進みたくなるけれど、手前の壁に集中線引いてあるから枠に収まって、先に写真撮影する私。
 挨拶と漫符については、○うの史代『ギガタウン』からの引用。まんまだし、アリスの兎と鳥獣戯画調の兎が共通のキャラになるから、やっぱりいいなと。

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 私は『ギガタウン』を読むまでは”漫符”の概念の意識もなく極自然に”読んで”いたので、この共通認識にまで落とし込まれてる文化を愛しく感じたものです。
 逆に言うと、無宗教で美術大好きな私とかは、例えば欧米の宗教画で知ってるアトリビュートを探すのが楽しいです。
 近くて遠い表現ですが、そんな風に漫符を意識して楽しんで「日本の漫画」に触れる人達が沢山いるのかと思うとわくわくします。
 本を右から開くのか左から開くのか、でも既に文化差があって。
 さらに台詞等をどう翻訳意訳していくのか。
 例えば「どきどき」「ドキドキ」だけでも質感も量感も異なる。表意文字を駆使する日本人が、「夢」という漢字に「もくてき」とルビを振ってみたり。そういうの、どんな風に伝わるんだろう?やはり逆に、日本人は他言語をどこまでそのままの意味で理解しているんだろう。
 海外で日本の漫画が紹介されるまでの道のりってスゴイ労力だろうな、なんて、まだ入り口なのに思い馳せちゃう私。ええ、ただの思考癖です…。

 さて、どんな風に展示してあったかといえば。
 原稿をそのまま展示しているのがほとんどでしたが、プラ板を二重にして吹き出し部分に英訳写植を重ねて読めるようにしてありました。
 単行本はキチッとサイズにぴったり合わせたプラ製リーディングスタンド(と言えばいいのか…?)に嵌められていたので「この展示のためだけのオーダーメイドよね⁈予算スゴそう」なんて余計なお金の想像しちゃう私。

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 そしてあんな広い空間の中で、本一冊やA4程度の原稿用紙の展示じゃ「ぽつねん」としてしまいそうなのに。壁に各々のメインキャラが拡大プリントしてあるので、空間に物足りなさは全くない上に、どこにどの作品が展示されているかの目印にもなっているなと感じました。
 ポスターなども吊るされていましたし、例の巨人の頭部や赤塚オノマトペのオブジェもあり、見るのに忙しい素敵空間。
 そしてここで一番大きかったのは、河鍋暁斎の妖怪絵引幕!
 大迫力で、写真のフレームにちっとも収まってくれない。酔って一晩で仕上げた逸話があったかと思いますが、改めて目の前にするとトンデモナイですねぇ。妖怪たちのユーモラスさは、描き手が酔ってたから余計に楽しそうなのでしょうか。

 ここの展示方法で一番感動したのが、実はこの浮世絵が共に並べられていたこと。日本の文化の流れの説明が、一目瞭然。見せ方としてこれほど伝わり易いものはないし、こうして脈々と続いてきた文化なんだと自分自身が改めて実感した次第。
 歌川国芳の鯨退治/大友克○の『さよならニッポン』
 月岡芳年の武者絵の下絵/井上雄○の『バガボンド』
 こんな風にセットでの対比は贅沢でしたね。私は下絵が見れたことに大感激してしまいました。

 マンガの神様・手塚治○のコーナーでは、生原稿と英文写植の入った英訳完成原稿が並べてありました。
 登場人物の涙に添えられた「ポトン」のオノマトペ文字が丸っこくて可愛くて!やっぱり神様の描く文字は、文字も含めて絵になりますね。だからか英訳完成原稿でもそれはそのまま残ってました。で、余白に意味がわかるように「PLOP」と書き加え。
 私は小学生の頃から父の本棚の手塚全集を漁って、気になる面白そうなタイトルのものを読んでました。(ありすぎて全部読破は今でも達成してないですが…)
 コマ枠をぶち抜いて、落ちたり飛ばされたりしているシーンを遊ぶように表現している発想には子供ながらに惚れ惚れしていました。物語の意味の多さや深さといった奥行きさにも。
 社会人になり美術巡りをするようになって、掛け軸の表装部分だったり絵画の額装もだまし絵的に遊んでいる作品があることに気付いたし、やっぱりその心憎いセンスにはしびれますね~!
 いつの時代のどういうジャンルであろうと、粋なものは受け継がれるものだし残すべき遊び心だなと。

 順路は遡りますが、作画中の動画も流されていました。
 女性漫画家さんのペン入れ等で徐々に完成していく様を、15~25歳位の白人の女の子(欧米人と亜細亜人ってお互いにお互いの年齢が読みにくくありませんか?w)がウットリかぶりつきでその動画を見ていて。
 私は、感極まって見ているその子が可愛過ぎて、その動画の漫画家さんが誰だったか度忘れしてしまいました…。
 父方にも母方にもプロがいるというのに、私には絵の才能の血がさっぱり流れておらず。さらさらと鮮やかにキャラクターがそのペン一本で完成するのに見惚れるのは同意。でもあの女の子、これがカラー原稿だったら感動で泣き始めるんじゃない?っていうくらいぱあぁぁっと目を輝かせて見ていました。今思い返しても、可愛い。

 日本で開催するとなるとまず出版社単位の展示になってしまうでしょうから、その垣根もなく幅広く(でも氷山の一角なんですよね)紹介されているのは本当に贅沢でした。
 ○ンピにナル○、スラダ○、キャプ○、ドラ○ンボール。ジャンプ作品は流石にネームバリューが凄いし、展示してある原稿もめちゃくちゃ人気の大事なシーンがズラリ勢揃い。
 ジョ○ョがルーブル美術館とコラボした時の原画も勿論ありました。
 ○像教授シリーズの大英博物館コラボマンガは、流石に現地なだけあって拡大された各ページが天井から大きく吊り下げられていました。
 『聖○おにいさん』は、弟と「なんか勝手に心配しちゃうよねー。ガチ勢信者さんがキレませんように」と思わずひそひそ話しながら笑いました。でも実はこれこそ日本人が日本で描ける作品だと思うんですよね…。例の原発のレポでもある『い○えふ』も展示されているのも、勝手に嬉しくなりましたし『夕凪の街桜の○』と、この三作品は、私的に海外の方に興味持ってもらって広い心で読んでもらえたらいいのに!というオススメ作品。
 往年の名作も沢山ありすぎて。
 石○森章太郎、竹宮恵○、諸星○二郎etc。ジョ○が灰になってるあの名シーンの生原稿には思わず「おお!」となってしまいましたwポケモンの初期の設定画らしき絵には弟が感激してましたし。氷山の一角とはいえ、とにかくどの世代のどのオタクにも刺さる作品が置いてあるという感じでした。

 日本じゃ街頭ポスターにもマンガ・アニメ使うんだよ!と言わんばかりにポスターも吊り下げ展示。主に地下鉄や電車のカワイイ系のものが多く、日本人としてはもう違和感のない風景の一部では?
 公官庁からは、外務省のゴル○のポスターがありました。せっかく『お○松くん』の原稿展示があったのだから、是非、厚労省の最賃ポスター『お○松さん』も紹介してて欲しかった…!意外と公官庁もマンガイラスト採用しますからね。

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④へ続く


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