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重さが悩ましい

~コバンザメのシチリア滞在記~


「ちょっと聞いてくださいよ」

子どものころからよく知っている大学生からLINE電話が来た。
今は本当に世界がぐっと近くなった。LINEにSKYPE、twitterにfacebook。昔は国際電話に高額の支払いをしてね、というと煙たがられるので言わないが、携帯電話すらなかった当時を思い出すと恐ろしく便利な時代になったものだ。日本とシチリア、時間さえ注意すれば快適にビデオ通信ができる。

それはさておき、

かの大学生は、大学生活の締めくくりに海外数か国を回る旅行を計画しているという。かつて留学していた国でホストファミリーと過ごしたり、また今も留学中の友人のドーミトリーにお世話になったりして、春休みのまとまった期間を就職前の最後の長期旅行にあてるらしい。

そろそろパッキングをという頃、今回泊めてもらう留学中の友人の家族から、その友人に荷物を託してほしいと言われたそうだ。もちろん二つ返事で引き受けたのだが、その荷物が届いてため息が出ているとのこと。

「思っていたより量が多いんです」
「こちらも自分のホストファミリーにお土産を持っていきたいし、そこそこ長期だから自分の持ち物も多いし、託されたものが意外とかさばってパッキングがなかなか大変なんです」
「それに何より重さなんです。2キロあるんですよね。搭乗の際の重さ制限に引っかからないか心配で」

そうかあ、それは大変だねと答えながら、その友人の親御さんの気持ちや悶々としている大学生の気持ちがどちらもよくわかってうーんとうなってしまった。

このところどの航空会社もスーツケースの重さについて厳しくなっているような気がする。以前はもう少しおおらかだったのではないだろうか(あくまでも印象だけれど)。
私たちもこちらへの渡航にあたり、少しでも軽くするためスーツケースを布製にした。それでも体重計に乗せては、これはやめようこちらに替えようなどと、ずいぶん考えて持ち物をパッキングした。
渡航直前に予定外の重さの荷物が現れたのではため息も出るだろう。

「でも、お世話になるんだよね、その友人のところに」
「それなら調整して持って行かなきゃね」

「そうですよね。そのつもりです」
「ちょっと愚痴ってみたかっただけで」

きっとなんとか調整して、その荷物を持っていくことだろう。


荷物を託したその友人の親御さんは、たぶん重さのことなどは念頭になかったにちがいない。知っていたら別のものを選んで託したことだろう。
もしかして自分も、これまで同じようなことを知らずにしていたかもしれないな。

海外生活、海外旅行、いろいろなことが起こるものだ。

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