#6「気胸」
「起きたら胸が痛かった/心とかじゃなく右側が
夜になったら治ってた/痛かったことも忘れてた」
2014年、BUMP OF CHICKENのボーカル藤原基央さん(以下藤くん)が気胸を患い休業した。
2010年にリリースした楽曲「モーターサイクル」の冒頭には、自身の体の異変を知ってか知らずか、先のような歌詞が書かれている。
翌2015年に出された「コロニー」という曲の書き出しはこうだ。
「どこだろう 今痛んだのは/手を当ててから解らなくなる」
ファンの間では「コロニーってもしかして…」「モーターサイクルの頃から…」という憶測が飛び交い、本人のもとにもファンレターという形でそんな心配の声が届いたのだという。
そして本人曰く、それらはご名答だったらしい。診察時、過去に何度も自然治癒した形跡が見受けられたとのことで、無自覚のうちに重ねていた実体験が歌詞となって自然と表出していたというわけだ。
「イケメン病」などと揶揄されることも多い気胸。なにせ背が高く痩せ型の男性、まさしく藤くんのような人に起こりやすい病気だから。
そんなふうに書いた後でこういうのも非常に恐縮なんだが、かくいう僕も高校生の頃に、気胸をやっている。
うむ。イケメン病ってのも実はあまりあてにならないのかもしれない。
こういうわけで今回は気胸の話を少し。
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僕の場合、最初に明確な異変を感じたのは体育の時間だった。
準備運動だか待機中だか、何か実技中だったかは定かじゃないが、ぴょんとジャンプした時に右胸の下の方で「ゴリュン」と何かが動くのだ。いつからだかわからなかったが、気づいた以降は明確な違和感がずっとあった。
それから体を動かしたり揺らしたりする度に似たような違和感があり、いつまで経っても終わらないどころか僅かずつ大きくなっていくような、内側からの圧迫感みたいなものすら生じてきた気もしたので、これは何やら急を要するかもなあと思い病院へ行った。
その場で気胸とわかった。そもそも「気胸」とは肺に穴が開いて体の中に空気が漏れ出す病気だ。胸の中で動いていたのはまさに、肺から漏れて行き場をなくした空気だったのだ。どおりで圧迫感も増すわけだ。
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