NFTの教科書 ビジネス・ブロックチェーン・法律・会計まで デジタルデータが資産になる未来
東京都現代美術館の「MOT ANNUAL シナジー 創造と生成のあいだ」などでも扱われたNFT。常識として知っておこうと思った。美術館の帰り道に購入した本。
第1章 NFTビジネスの全体像
ブロックチェーンの特徴は大きく三つ。①改竄できない②価値そのものを移転可能③追跡可能で閲覧可能。一気にユーザーによる取引が活発になったためブロックチェーンネットワークが混雑し取引が滞る問題(ガス代問題やスケーラビリティ)が生じた。
NFTを発行するのにあたり世界で最も使われているのはイーサリアム財団の提供する「ERC-721」という規格。
物理に捉われなくなり希少性の高さを保持できるようになったことでNFTは注目の幅を広げるが、物理性がない中で所有欲を満たすかに関しては価値観のシフトが必要なのも現状。これを物理空間と融合することにより少しずつシフトさせようとする動きもある。
メタバース
インターネット上に構築された仮想の三次元空間でアバターなどを用いて接する環境(SF作家ニールスティーヴンスンによる造語が由来)。社会的交流のための仮想世界であり、コンテンツを生み出すクリエイターが生きるひとつの経済でもある。
米ベンチャー投資家マシューボールはメタバース必須条件7つを以下のように述べた。
①永続的であること
②同期的である
③無限の同時接続ユーザー
④完全に機能した経済
⑤実社会との垣根なし
⑥相互運用性
⑦幅広い人々の貢献
NFTとメタバースがもたらすのは、現実空間と仮想空間の共存にある。
NFTの登場によって複製可能なデジタルデータも唯一無二のものとして判別可能となった。そのためデジタルデータが現実の物質に近いものとなった。NFTはメタバースにとって①価値の希少性の担保②アプリケーションを超えて所有し行使できるポータビリティ③実質的な価値をもつという要素で重要になった。いままでコピーが容易だったデジタルデータが現実のルールに近づくことで固有の価値がつき始めた。私たちが生きているこの世界は、今この瞬間も少しずつ変化しており、私たちもその変化を多種多様に受け止め、変わり続けている。一方で現状では所有欲は物理的物質と結び付けられることが多い。あくまでも実際に保有できるフィジカルな価値をもつからこそ所有欲を完全に満たす側面が依然として強い。やはりまずはNFT、ブロックチェーン技術への業界内での理解・認知向上が重要である。こういった所属意識や「自慢する権利(bragging rights)」は人間の普遍的な本質である。ロレックスをつけゴルフ会員権を持つことと同様にNFTを持つことが同様な価値を持つ世界になるかもしれない。
第2章 NFTの法律と会計
自然法主義がなお一層想定されるべき世界になる。(世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?)実定法主義では成り立たない世界へと近づきつつある中、整備が追いついていない側面が赤裸々となる。(詳細は本書を参照されたい。)
第3章 NFTの未来
世界は無形資産に向かっている。NFTは「無形資産のイノベーション」である。
(暗号資産を「金融のイノベーション」と呼ぶならば)
「人々が使いたいと思うものを開発するだけでは十分ではない。経済的機会、社会的にみんなが参加できるという包括的なものでなければいけない。」(Mark Zuckerberg - Facebook CEO)
現状では、データの所有者や作成者の見返りはごくわずかしかない部分もある。つまり現状は「デジタル封建社会」に差し迫っている。
また、デジタル時代により複製のコストが限りなくゼロに近づいたことで需要と供給のバランスが崩壊した。従来の商品が売れなくなったコンテンツビジネスはサービス業になっていった。サブスクなどサービスを提供してお金をもらうといった形に変わらざるを得なくなった。
資本主義のアップデート
株式会社以外の仕組みという意味で、資本主義のアップデートの可能性も秘めていると本書は言う。「彼のファンは彼が育てた人を見たいのではなく、やはり彼自身を見たいのだ」と。これはその人自身へのbetであり、その人自身が描くビジョンを応援したい場合は既存の資本主義の枠組みがうまく機能する。これがアップデートと示唆する部分である。
一言メモ
実例付きでNFTの基礎からわかる本。これしか読んでないがとりあえずNFTってなんだか知りたいかも。と言う人におすすめ。
参考図書
世界2.0
レディプレイヤー1
世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?