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「責任を取る」って、どんなこと?

教師になって間もない頃、教室で子どもが物を壊してしまった時、「ちゃんと責任を取らないとね。」って伝えると、その子がこう言いました。

「責任を取るってどういうこと?」


恥ずかしながら、そのころのボクは。この問いにはっきり答えられませんでした。しっかりと説明ができて、子どもたちがこのことを明確に分かるようにならないと・・・と、それからずっと自分なりに考えたり、いろんな本を読み漁ったりしていました。

そこでたどりついたのは、「大人はどうやって責任を取っているか?」ということ。

大人の場合、何かを壊してしまったり、相手を傷つけてしまったりしたときには、「損害賠償」というものがあります。これは、「他人に損害を与えた者が被害者に対しその損害を填補し、損害がなかったのと同じ状態にすること。」です。

そして、この「損害」には、「財産的損害」と「精神的損害」があります。つまり、「損害賠償」とは「財産的」な部分と、「精神的」な部分を、損害がなかったときと同じ状態にするということです。

自分の中でもしっくりときて、作ったのが「『責任をとる』って?」。

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子どもたちには、分かりやすいように「気持ち」と「もの」を元にもどす・・・ということで何も起こっていないときに説明をしておきます。そして、何かをしてしまうことはあるから、してしまった後に、この2つができるってことがとても大切なことだということを、しっかりと伝えておきます。

例えば、教室の花瓶を割ってしまった・・・とします。その時には、掲示物を指さして、こんな風に言います。

「ちゃんと責任を取らないとね。どうする?」


おそらく、子どもたちはこういうと思います。

Aさん:「気持ちを元にもどす。」
B先生:「どうやったらもどせるかな?」
Aさん:「あやまらないと・・・。」
B先生:「誰にあやまる?」
Aさん:「B先生。」
B先生:「この花瓶は、学校のものだから、校長先生か教頭先生あやまりにいこっか?」
Aさん:「わかった。」

って感じです。先生が子どもたちの責任をなるべく引き受けないようにして、学校のものだったら、責任者の校長先生に・・・、近所の方だったらその家の方に・・・などを意識させるようにします。では続きを。

B先生:「じゃあ、これで気持ちをもとにもどせるように、あとであやまりにいこう。2つ目の『もの』はどうする?」
Aさん:「もとにはもどらないよ・・・。」
B先生:「でも、もとにもどさないとね。何か代わりにできることはあるかな?」
Aさん:「おうちから持ってくる・・・か、お金をはらうか・・・。」
Bさん:「そうか。他には何かないかな?」
Aさん:「学校のために何かお仕事をする・・・とか?」
Bさん:「いいね。そしたら、校長先生のところに行って話してみよう。」

という感じです。これは、実際に4年生の子との話です。校長先生にも、ちょっとお願いして、校長室で対応をしていただきました。この子は、しっかりとあやまった後、こわした花瓶を弁償するかわりに、体育館の掃除をすることを申し出て、1週間そうじをしていました。

「責任を取る」・・・ということ、「気持ち」と「もの」の2つの視点をしっかりと意識できるようにしておくことで、何かトラブルがあった後に子どもたちが考える足掛かりになります。

他にも、2年生のやんちゃなCくんが、放課後、クラスのDちゃんのランドセルにいたずらをして、カバーに目立つキズをつけてしまった・・・ということがありました。翌日、保護者からお怒りの連絡帳。

C君とじっくり話し合いました。この時、Cくんと、「『責任を取る』って?」の紙を見ながら、どうするべきかを相談しました。

まず、「『気持ち』をもとにもどす」ために、「Dちゃんに謝る」ということにしました。そして、次の「『もの』をもとにもどす」になった時の会話をちょっと紹介します。

B先生:「どうする?」
Cくん:「ランドセルの傷は元にもどらないよ。」
B先生:「そうだね。だけど、傷をつけてしまったんだよね。」
Cくん:「どうしよう?」
B先生:「どうする?連絡帳だと、おうちの方もだいぶ怒っておられるみたい。」
Cくん:「おうちの人にも謝らないと・・・。」
B先生:「そうだね。おうちの人の『気持ち』も元にもどさないとね。」
Cくん:「ランドセル・・・」
B先生:「・・・。」
Cくん:「ボクのおこづかい全部持っていく。」
B先生:「そうか。そうしてみるか。分かった。」

いつもかなりやんちゃをしていたCくんのおうちの方にもご協力いただき、Dちゃんには学校で話をして、しっかりと謝り、放課後におうちの方とDちゃんの家にビニール袋いっぱいの小銭を持って、あやまりに行ったようです。Dちゃんのおうちの方は、相当怒っておられたのですが、Cくんの誠意が伝わったのか、何とか許してくださいました。

これまではただただあやまって終わり・・・、しかも本人はあやまる気持ちがさらさらなく態度悪くあやまっていた・・・といった解決から一歩踏み込んだ解決を経験することができるようになります。

そして、この手順をしっかりとできれば、「やってしまったことは、完全には元に戻せないけれど、こうやって元に戻すように努力することができる。」ということを学ぶことができます。

教室でのしっかりとできた・・・という経験を積み重ねることで、「責任を取る」ということがどういうことかをイメージし、勇気をもって「責任」を引き受けることを学んでいきます。

シンプルな掲示物ですが、かなりオススメです。
ぜひ子どもたちにおしえてあげてくださいね!

店長敬白。

「Rhodurus Cafe Online」では、アドラー心理学をベースにした「クラス会議」を中心に月に1回程度の勉強会をやっています。今日の記事のように、教室のもめごとやトラブル、悩みなどにどんな風に対処していくのかも学んでいくことができます。ぜひ一緒に学びましょう!



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