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読書が趣味で、特に小説を中心に読んでいます。読んだ本のうち面白かった作品や気になった作品について、感想を書いていきます。 好きな作家:米澤穂信、今村夏子、九段理江

最近の記事

2024年4月に読んだ本の一言感想/印象に残ったフレーズ

 新年度で部署を異動して仕事が少し忙しくなった。帰りの時間が遅くなったので読書ペースも少し落ちた。 1.「しろいろの街の、その骨の体温の」/著:村田沙耶香 小学生~中学生くらいのときの衝動的な行動が、無意識的に他人を傷つけてしまうことってあるなあと思った。主人公結佳の行動は突飛ではあるけど、そのまわりの友達間の人間関係や、環境が変わってクラス内カーストが変化するところとか、読んでてつらいけどリアルで面白かった。 2.「黄色い家」/著:川上未映子 2024年本屋大賞候補作。

    • 【感想】「くるまの娘」(著:宇佐見りん)

       宇佐見りん第3作。「推し、燃ゆ」⇒「かか」⇒本作の順番で自分は読みました。 感想情景描写が美しい  自分は文学的素養があるわけではないので、専門的・技術的なことは全く詳しくないですが、それでも、本作の文章表現、特に情景描写の言語表現の美しさは、読んでいて気持ちよかったし、なかなかほかの作品にはない点だと思いました。例えば自分が好きなのは、 という詩的な一節。作品全体を通してですが、短文が多いことで文章全体にリズムがあり、表現の美しさと相まって本作特有の文章になっている

      • 【感想】「列」(著:中村文則)

        概要 BS12で放送されている本に関する情報番組「BOOKSTAND.TV」の著者ご本人が出演した回を見て、購入しました。  中村さんの本は、「カード師」だけ読んだことがあって、そちらは自分の好みとはちょっと違ったのですが、本作は面白かった。 感想 本作は三部からなる物語で、第一部は主人公が何かの列に並んでいる場面から始まり、何の列なのか、列の一番前・一番後ろはどうなっているのかの様子も見えず、自分がなぜその列に並んでいるのかもわからないまま、なかなか動かない列にじっと並

        • 【感想】「いい子のあくび」(著:高瀬隼子)

          概要 4月に入ってから何冊か小説を読んだけど、なかなか自分好みの作品に出会えていなかったので、こんな時のためにとっておいた本作を読んだ。自分にとっては、「おいしいごはんが食べられますように」に続いて、高瀬隼子さん2作目。時系列的にも、「おいしいごはん…」の次に刊行された作品ですね。  集英社HPのあらすじに集約されているのだけど、本作は「社会に適応しつつも、常に違和感を抱えて生きる人たち」が登場する物語。「おいしいごはん…」の読後に著者の高瀬さんのインタビュー記事をいくつか

        2024年4月に読んだ本の一言感想/印象に残ったフレーズ

        • 【感想】「くるまの娘」(著:宇佐見りん)

        • 【感想】「列」(著:中村文則)

        • 【感想】「いい子のあくび」(著:高瀬隼子)

          2024年3月に読んだ本の一言感想/印象に残ったフレーズ

          1.「私は男でフェミニストです」/著:チェ・スンボム、訳:金みょんじん 韓国の男子高教師の著者によるフェミニズム論。「フェミニズム」というワードにいろんな意味合いや印象が付加されてしまった結果、なかなか現実で言葉に出せなかったり、ちょっと微妙な単語として扱われたりするのが素朴に疑問だったため、男性が考え実践するフェミニズムならとっつきやすいかなと思って手に取った。  内容的には、自分が期待したものとは少し違って、著者の個人的経験とそれによってなぜフェミニストになったのかとい

          2024年3月に読んだ本の一言感想/印象に残ったフレーズ

          【感想】「体育館の殺人」(著:青崎有吾)

          概要 ダ・ヴィンチ2024年1月号に掲載されていた記事「[令和版]解体全書 第8回 小川哲」にて、小川さんが最近読んで面白かった本として本作著者 青崎有吾さんの「11文字の檻」を紹介しており、それで青崎さんを知りました。「11文字の檻」が自分の好みで、デビュー作の本作も面白いと話題(帯には「伝説のデビュー作」との謳い文句)だったため、手に取ってみました。後に「裏染天馬シリーズ」としてシリーズ化される第1作でもあります。 感想本格推理小説(「読者への挑戦」あり)  私にとっ

          【感想】「体育館の殺人」(著:青崎有吾)

          【感想】「同姓同名」(著:下村敦史)

          概要 最近のミステリは特殊設定モノが流行っているようで、本作も、登場人物(犯人、被害者、容疑者)全員が同姓同名というかなり凝った設定のお話です。作者の狙い通りと思いますが、読んでいる途中、どの「大山正紀」の話をしているのか混乱するため、なかなか読むのが大変でした。 感想(ネタバレあり) 全員が同姓同名ということで、メインは叙述トリックだろうと想像はつくのですが、上記の通りで、いまどの「大山正紀」の話をしているのかを識別するのが分からなくなる箇所があり、また、実は時系列もバラ

          【感想】「同姓同名」(著:下村敦史)

          【感想】「猿の戴冠式」(著:小砂川チト)

          概要 表紙の不穏な感じと、あらすじの「言葉を機械学習させられた過去のある類人猿ボノボ」というワードが気になり購入。第170回芥川賞候補作(「東京都同情塔」が受賞)。小砂川チトさん作品初読ですが、この前作の「家庭用安心坑夫」も気になってます(きっと近いうちに購入します。)。 感想「言葉を機械学習させられた過去のある類人猿ボノボ」  「機械学習」といえば、(自分は全く専門でないものの)AI用語として用いられるような、コンピュータに大量のデータを解析(学習)させて、何らかのアル

          【感想】「猿の戴冠式」(著:小砂川チト)

          【感想】「おいしいごはんが食べられますように」(著:高瀬隼子)

          概要 高瀬隼子さんの作品が前々から気になっていて、先日書店に行った際に、特に読みたいと思ってた本作と「いい子のあくび」、「うるさいこの音の全部」を購入。さっそく本作から読みました。私にとって、初高瀬隼子作品です。 感想文体  本作の視点人物は男性サラリーマンの二谷と、その女性同僚の押尾の二人で、それぞれのパートが交互に現れます。読んでいる途中で特に二谷パートについて気になったのですが、文体は三人称視点なのに対し、人物の呼称は二谷視点なんですよね(二谷だけ「二谷」表記で、そ

          【感想】「おいしいごはんが食べられますように」(著:高瀬隼子)

          【感想】「しをかくうま」(著:九段理江)

          概要 「東京都同情塔」の芥川賞受賞で九段理江さんを知り、「東京都同情塔」⇒「Schoolgirl」と読んで完全に九段理江さんファンになりました。  本作「しをかくうま」は発売と同時に購入し、さっそく読了しました。 感想(ネタバレあり) 前二作もそうだったのですが、本作はそれ以上に作中の仕掛けやメッセージを抽出するのが難しく、一度読んだ現時点では、全体の1~2割しか理解できていない手ごたえです。なので、以下は感想やネタバレというよりは、少し時間をおいて再読しようと思っているた

          【感想】「しをかくうま」(著:九段理江)

          【感想】「本心」(著:平野啓一郎)

          概要感想(ネタバレあり)母の「自由死」の選択  主人公である朔也は、リアル・アバターという、自身の体を通して顧客に遠隔的に体験を共有させる仕事をしており、生前の母は彼に対して、河津七滝に連れて行ってほしいと依頼します。そして、七滝を見終えた後、朔也に対して「自由死」しようと思っていることを打ち明けます。  朔也が反対したため母の「自由死」は叶いませんでしたが、間もなく事故死してしまいます。母がなぜ「自由死」の選択をしたのか、その理由を朔也が明らかにしようとするのが、本作の軸

          【感想】「本心」(著:平野啓一郎)

          【感想】「鳥がぼくらは祈り、」(著:島口大樹)/2014.4.7追記

          概要 本作は、第64回群像新人文学賞受賞作で、著者のデビュー作です。文体に特徴があるという点で共通している「みどりいせき」とともに読みたいと思っていて、「みどりいせき」を読み終えた次に本作を読みました。 感想(ネタバレを含みます) 選評でも語られているとおりですが、特徴的な文体が本作の白眉な点だと感じました。特に、特徴としては、(これも選評にあるとおりですが、)文法と視点の二点に大別できます。 特徴のある文体(文法)  まず、本作の文法は、句読点や改行、鉤括弧の使い方が

          【感想】「鳥がぼくらは祈り、」(著:島口大樹)/2014.4.7追記

          【感想】「みどりいせき」(著:大田ステファニー歓人)

          本作を読んだきっかけ 本作は、第47回すばる文学賞受賞作で、著者のデビュー作です。  ダヴィンチwebの受賞インタビュー記事を読んで本作と大田ステファニー歓人さんのことを初めて知ったのですが、特に著者ご本人の考え方に興味を持ち、すぐに本作を購入。早速読了しました。 概要 物語は、主人公の男子高校生桃瀬が、小学生の頃にバッテリーを組んでいた春に再会する(といっても感動的ではなく、むしろ春は無関心)ところから始まります。  その後は、あらすじにあるとおりで、春やその仲間と付き合

          【感想】「みどりいせき」(著:大田ステファニー歓人)