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2024年5月に読んだ本の一言感想

 5月は、土日の読書会に2回参加し、文学フリマにも行った。


1.「私雨邸の殺人に関する各人の視点」/著:渡辺優

 結構久しぶりに、しっかりとした本格ミステリを読んだ気がして、満足だった。

2.「冬期限定ボンボンショコラ事件」/著:米澤穂信

 米澤穂信、安定の面白さだった。アニメ化も楽しみ。

3.「他人事」/著:平山夢明

不慮の交通事故で崖から転落し、瀕死の重症を負って車内に閉じ込められた男女。助けを求める彼らの必死の願いをのらりくらりとはぐらかしていく男の“無関心”という恐怖を描く表題作。引きこもりの果てに家庭内暴力に走った息子の殺害を企てる初老の夫婦の絶望(『倅解体』)。孤独に暮らす女性にふりかかる理不尽な災禍(『仔猫と天然ガス』)。定年を迎えたその日、同僚たちに手のひら返しの仕打ちを受ける男のおののき(『定年忌』)ほか、理解不能な他人たちに囲まれているという日常的不安が生み出す悪夢を描く14編。――鬼才が紡ぐ悪夢と狂気の世界

出版社HPより引用

 上記のあらすじにあるとおり、「理解不能な他人たちに囲まれているという日常的不安」に関する短編集だが、自分的にはあまり合わなかった。もう少しイヤミスっぽい感じを期待していたので。

4.文芸誌「代わりに読む人0 創刊準備号」

可笑しさで世界をすこしだけ拡げる出版レーベル〈代わりに読む人〉から新しい文芸雑誌『代わりに読む人』を刊行します。「読む」ことを通じた思いもよらぬ隣人や異界との出会いを生み、読む/書く人たちの試行錯誤の場となる「公園」を目指します。

『代わりに読む人0 創刊準備号』では、特集テーマも「準備」とし、有名、無名の分け隔てなく、文芸・アート・科学・実務などの分野から、次の作品を読みたい、広く読まれてほしいと感じる人たちに、「準備」から想起された小説・エッセイ・漫画などを執筆していただきました。

連載・小特集は「これから読む後藤明生」とし、今年生誕90周年を迎えた小説家・後藤明生について初心者からファン、批評家・怪談作家まで様々な人たちに寄稿いただいています。

「2021年に読んだ本」では、執筆者に2021年に読んだ本を紹介してもらっています。どなたかの作品を目当てに手に取ってみたら、まったく予想もしなかった隣の作品・作者と出会い、関心が広がったというようなことを期待して編集しています。

出版社HPより引用

 出版レーベル「代わりに読む人」から刊行された文芸誌「代わりに読む人」。「創刊準備号」ということで、準備をテーマに小説・エッセイ・漫画などが掲載されています。
 オルタナ旧市街さんの作品目当てで購入したけど、期待を裏切らずにとてもよかった。あと、それと同じくらい気に入ったのが、わかしょ文庫さんの「八ツ柳商事の最終営業日」。変な人がたくさん出てくる、自分が好きなジャンルのお話だった。職場で昼休みに読んでいたけど、落ち着いて読みたかったから、家に帰ってからゆっくり読んだ。

5.「皆のあらばしり」/著:乗代雄介

幻の書の新発見か、それとも偽書か――。高校の歴史研究部活動で城址を訪れたぼくは中年男に出会う。人を喰った大阪弁とは裏腹な深い学識で、男は旧家の好事家が蔵書目録に残した「謎の本」の存在を追い始めた。うさん臭さに警戒しつつも、ぼくは男の博識に惹かれていく。ラストの逆転劇が光る、良質のミステリのような注目作。

出版社HPより引用

 何かの雑誌で紹介されていて、面白そうだったので購入。芥川賞候補の割には、純文学っぽくなくてミステリ寄り?もう少し社会的テーマを扱った作品の方が自分は好みかも。

6.「となりのブラックガール」/著:ザキヤ・ダリラ・ハリス、訳: 岩瀬徳子

「ゲット・アウト」×「プラダを着た悪魔」。P・G・ウッドハウス賞最終候補のシニカルなBLM小説
若手編集アシスタントのネラはNYの老舗出版社で唯一の黒人女性。人種問題に無理解な職場に疲れていたある日、同世代の黒人女性が入社してくる。ネラは親交を深めようとするが、そこには大きな陰謀が@@ダークな皮肉冴えわたる新世代のBLM小説。解説/渡辺志保

出版社HPより引用

 ポッドキャストで紹介されていて知り購入。BLM小説と紹介されているけど、(自分の受け止めとしては)ちょっとひねったBLMという感じか。
 主人公のネラは職場の同僚の言動について、不用意かつ無意識な人種差別的行動として捉えるフシがあって、こう言っちゃなんだけど、マイノリティである黒人女性としての自分に捕らわれているというか、若干こじらせているように自分は感じた。
 他方で、後から同僚となる黒人女性ヘイゼルは、白人的価値観を備えていて、白人社会で上手く立ち回り周りの信頼を得ていくけど、それもそれで、ダイバーシティ&インクルージョンが体現できているとは言い難いのかなとも思った(結局、マジョリティ側がマジョリティ社会を維持したままでマイノリティを受け入れているだけで、それはマイノリティがマイノリティ性をある意味放棄してマジョリティ的価値観を受け入れることだから。作中ではオレオ(外見は黒人で、中身は白人)と表現されていた。)。

7.「犬のかたちをしているもの」/著:高瀬 隼子

間橋薫、30歳。恋人の田中郁也と半同棲のような生活を送っていた。21歳の時に卵巣の手術をして以来、男性とは付き合ってしばらくたつと性交渉を拒むようになった。郁也と付き合い始めた時も、そのうちセックスしなくなると宣言した薫だが「好きだから大丈夫」だと彼は言った。普段と変らない日々を過ごしていたある日、郁也に呼び出されコーヒーショップに赴くと、彼の隣にはミナシロと名乗る見知らぬ女性が座っていた。大学時代の同級生で、郁也がお金を払ってセックスした相手だという。そんなミナシロが妊娠してしまい、彼女曰く、子供を堕すのは怖いけど子供は欲しくないと薫に説明した。そして「間橋さんが育ててくれませんか、田中くんと一緒に。つまり子ども、もらってくれませんか?」と唐突な提案をされる。自ら子供を産みたいと思ったこともなく、可愛いと思ったこともない薫だったが、郁也のことはたぶん愛している。セックスもしないし出来にくい身体である薫は、考えぬいたうえ、産まれてくる子供の幸せではなく、故郷の家族を喜ばせるためにもらおうかと思案するのだったが……。

生殖や愛について、切実に描くデビュー作。

出版社HPより引用

 最近お気に入りの高瀬隼子作品。
 正直、男性である自分が本作を本質的に理解するのは不可能というのが感想。ミナシロさんの淡々とした感じが良くて、「おいしいごはんが食べられますように」の芦川さんに、ある意味で似ていると思った。

8.「社会と自分のあいだの難関」/著:那須耕介

民主主義(デモクラシー)って、
疲れませんか?
わかってるようで、わかってないこと

残された時間、
この「世界」と
「私たち」のつながりについて
考えつづけた53歳の法哲学者。
その思索の到達点を示す
最後の連続セミナー

出版社HPより引用

 久しぶりに小説以外を読んだ。特に第1章(第1講)の「傷つける言葉、自由な表現  「開かれた社会」とその疲れをめぐって」は、自分が気になるテーマにちょうどマッチしていて、勉強になったし面白かった。

9.「水たまりで息をする」/著:高瀬隼子

その他

「Planet Her あるいは最古のフィメールラッパー」/著:九段理江

 おすすめしてもらったので、ユリイカを購入して読んだ。自分は九段理江作品が好きだと再確認した。

「犬はかわいい」/著:ナカノヒトリ

みんな、あたしの犬を愛してる。
あたしの、架空の犬を。


まじめで、見えないところでも手を抜かない主人公。
バイト仲間たちとは頭空っぽ状態で話ができる。
家はなんだか居心地が悪い。
平坦な生活。なのに、空気が薄い生活。

ちいさくてわがままな架空の犬をみんなでかわいがる。
平坦な絶望を息継ぎで泳ぎ続ける、がんばる女の子の日々。

BOOTH概要欄より引用

 5月の文学フリマ東京で購入した作品。おもしろかったです。
 ただ、「平坦な絶望を息継ぎで泳ぎ続ける」ということからすると、犬を飼っているという噓をつく理由は、何か後ろ暗いこととか、もっと闇があるのかなと思ったけど、結構ナチュラルに架空の犬の話をしているような印象を受けた。

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