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2024年6月に読んだ本の一言感想

 6月は土日の読書会に計3回参加しました。


1.「ぼくらは回収しない」/著:真門浩平

数十年に一度の日食が起きた日、名門大学の学生寮で女子学生が亡くなった。密室状態の現場から自殺と考えられたが、小説家としても活躍し、才気溢れた彼女が死を選ぶだろうか?
三年間をともに過ごしながら、孤高の存在だった彼女と理解し合えないまま二度と会えなくなったことに思い至った寮生たちは、独自に事件を調べ始める――。第十九回ミステリーズ!新人賞受賞作「ルナティック・レトリーバー」を含む五編を収録。大胆なトリックと繊細な心理描写で注目を集め、新人賞二冠を達成した新鋭による、鮮烈な独立作品集。

出版社HPより引用

 何で見かけたか忘れてしまったけど、雑誌か何かで大々的に取り上げられていたので、興味を持ち読んでみました。
 特に最初の二編は、事件は解決するもののモヤモヤは残る感じが好きでした。タイトルから、作中いろいろな思わせぶりな伏線っぽい要素がちりばめられているけど、本当の伏線しか回収されないというような話なのかなと想像していましたが、それとはまた違った意味で「ぼくらは回収しない」という話でした。

2.「記憶の盆をどり」/著:町田康

頭のなかに雨が降る。

小説という名の異世界。
町田康の九つの世界に溺れる一冊。


犯人当てミステリー
背筋も凍るホラーサスペンス
異世界ファンタジー
お伽話の現代語訳
果ては美少年BLまで――

名手が演じる小説一人九役!


【内容紹介】
狭い部屋で暮らす男のもとへやって来た、白い謎の生き物。
機嫌がよいときはころころ転がって過ごしているが、
機嫌が悪くなると、糞尿を垂れ流し、嘔吐し、ひどい声で喚き立てる。
だが、ある日を境に、生き物はどんどん可愛くなり、
男の人生もみるみる好転し――(「エゲバムヤジ」)。
短篇の快楽に満ちた作品集。

出版社HPより引用

 自分にとっての町田康作品は、「きれぎれ」に続いて本作で二作品目。どの話もめちゃくちゃで面白かった。特に「山羊経」、「付喪神」、「記憶の盆をどり」がお気に入り。乗代雄介さんの解説も秀逸です。

3.「オン・ザ・プラネット」/著:島口 大樹

4.「ここはすべての夜明けまえ」/著:間宮改衣

2123年10月1日、九州の山奥の小さな家に1人住む、おしゃべりが大好きな「わたし」は、これまでの人生と家族について振り返るため、自己流で家族史を書き始める。それは約100年前、身体が永遠に老化しなくなる手術を受けるときに提案されたことだった。

出版社HPより引用

 SF界隈でバズっているようで、お勧め記事をきっかけに読了。正直、自分の好みではなかった。

5.「地球星人」/著:村田沙耶香

地球では「恋愛」がどんなに素晴らしいか、若い女はセックスをしてその末に人間を生産することがどんなに素敵なことか、力をこめて宣伝している。地球星人が繁殖するためにこの仕組みを作りあげたのだろう。私はどうやって生き延びればいいのだろう――。芥川賞受賞作『コンビニ人間』をはるかに超える衝撃の受賞第一作。

出版社HPより引用

 読書会に参加していて村田沙耶香さんの話になると、ほぼ必ず話題に挙がる本作。「変な話」だと噂は聞いていたものの未読でした。
 結婚・出産(・育児)は村田さんがずっと表現し続けているテーマで、本作を最初読んでいるうちは、そうしたテーマに虐待とかを絡めたような話かなと思っていました。しかしながら、後半は話がさらに加速してあらぬ方向へ・・・。確かに変な話でした。
 最後、「これじゃあ、ポハピピンポボピア星人と地球星人は分かり合えないという話じゃん!」と思ったけど、お互いを尊重していれば、必ずしも分かり合う必要はないのかな。コンビニ人間の方が自分は好きだけど、本作も好き。

6.「T/S」/著:藤田貴大

演劇で世界は変えられるか? 未来は変えられるか? そもそも世界は演劇か? 未来は夢か? 演劇界の俊英が綴る未曾有の自伝的フィクション!

出版社HPより引用

 読書会課題本として指定されてていたため読んだ。次に読んだ朝井リョウのスターと合わせて、表現することについてあらためて考えたくなる作品だった。

7.「スター」/著:朝井リョウ

国民的スターって、今、いないよな。…… いや、もう、いらないのかも。


誰もが発信者となった今、プロとアマチュアの境界線は消えた。
新時代の「スター」は誰だ。


「どっちが先に有名監督になるか、勝負だな」

新人の登竜門となる映画祭でグランプリを受賞した
立原尚吾と大土井紘。ふたりは大学卒業後、
名監督への弟子入りとYouTubeでの発信という真逆の道を選ぶ。

受賞歴、再生回数、完成度、利益、受け手の反応――
作品の質や価値は何をもって測られるのか。
私たちはこの世界に、どの物差しを添えるのか。

ベストセラー『正欲』と共に作家生活10周年を飾った長編小説が待望の文庫化。

出版社HPより引用

 「正欲」でも思ったけど、朝井リョウは、実際に起きた事件・出来事をもとにして、社会の二項対立みたいなものをストーリーにするのが巧み。本作は、学生時代に共同監督した作品で賞を得た二人の主人公が、一人は映画監督に弟子入りして質を高めるが世間にはなかなか届かず、もう一人はyoutube等をベースに手軽に世間に届ける映像を作るが質の追求にリソースを割けないという、真逆の道をたどる話。
 作中、作品の質を高めることを何よりも大事にする尚吾が、食事は「完全栄養食」というもので手軽に済ませること、そのことが、料理人である恋人にリスペクトを欠く行為であることまで描いているのが、フェアでよかった。

「私が鐘ヶ江監督の映画を好きになったのって、答えじゃなくて問いをくれるからなのね」

文庫版「スター」P.193より引用

 自分は読み終わった後に悶々と思考が継続する作品が好きで、このフレーズは目からうろこだった。

その他:芥川賞候補作

 第171回(2024年上半期)芥川賞候補作5作のうち4作品を読んだ。特に自分は「バリ山行」が一番好きだったけど、割とまっすぐな話だし、ほかの作品も含めて「これが今回受賞するに違いない」というほどのものは自分としては無かったかな。


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