思春期の苦しみ
この時私は中学二年。思春期真っ盛りである。
実にタイミングが悪い...。
弟は習い事の合宿、妹は祖父母宅にお泊まりとうことであいにく今日は私と両親のみでの外食となった。
レストランに着くと座席は次のようになった。こちら側は私一人で、私の正面に母・父が座る。
妹、弟がいれば私はその二人と喋るし、また両親を交え会話しやすい雰囲気になる。
しかし今は私と両親の三人。
思春期の私はどこに視線を向ければいいか分からずすぐさまメニューを手に取った。
注文を終えると再び手持ち無沙汰になり視線に困る。なんせ正面に両親がいるのだ。
私はドリンクバーへ矢継ぎ早に席を立つ。
コーヒーを持ってきてじっとしているわけにもいかず、座ると同時に飲む。
もはやここまでくると、視線に困らないために無理矢理飲んでいるようなものだ。
そんなうちにコーヒーは全て飲み干してしまった。
そう、再び視線に困るのである。
何を喋っていいのか見当もつかず、ましてや元々訥弁の私が思春期に両親と会話など出来るはずがない。
すかさず二杯目のために席を立つ。
てんで落ち着きがない。
どうにかこうにか時間を消化すると、注文していた料理が届いた。
内心「はぁ一安心。視線に困窮することない。」といったとこだ。
食べるのが物凄く速い私。
当然である。
料理以外のどこに目を向ければいいというのだ?
しかし結局は両親よりも先に食べ終わってしまい、私は終始ちり紙をいじたっりせわしく口を拭いたりしていた。
親に話しかけられた時は喜んで答え...ようとしたが、思春期の私の口は思うように動かない。
返事する時ももちろん親の目をみて話せるわけなく、生返事で済ましてしまう。
両親も食べ終わり、あの食後のまったりした感じになった。
私は今だにちり紙をいじっている。その私の様子を見かねた父が私にこう聞いてきた。
「もういい?まだ食べる?...もう帰りたい?」
私は別に妹、弟無しで両親と食事するのが嫌なわけではなかった。
ただこのどこに目をやったらいいのかわからないこの今の状況から抜け出したいだけであった。
そして思春期の私の父に対する返事は虚しくも
「...うん...。」
父:「だって...」
違う!違うのだ!
正直両親との、まさに私がまだ幼かった頃の、私に妹弟がいなかった頃を彷彿とさせる今の食事をもっと楽しみたい。
しかし思春期の私の口と心の声が齟齬を来す。
苦悩する私に追い討ちをかけるように父がこう言った。
「覚えてる?小さい頃キャンプ行った時、『最初の友達だな!』って言ってたの。」
私は胸が潰れる思いをした。本当に心苦しく泣きそうになった。
だめだ。思春期の私が今両親を前に泣けるわけもない(これもまた、たまらなく悲しい)。
これが今までで最も嫌な両親との食事になった。
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