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結の実感

結、という言葉を聞いたことがある。
農村でむかし見られた「助け合う関係」のことだそう。

田植え・稲刈りなど、短い間で一気に終わらせないといけない作業を、
それぞれの家だけではできないから、地域の人々が一丸となって、
すべての家庭分、順番にそして一気に終わらせる。

僕は、これを初めて聞いたとき、「むかしらしいな」と思っただけだった。
でも雪が降ってから、この結というのを実感することがとても多い。

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車が雪にはまった。急いでいた。
完全に車が動かなくなって困っていた時、見知らぬ人が何人も来てくれた。
通りすがりの人、コンビニの店員さん、車から降りてきてくれる人、
家から出てきてくれる人までいた。

一緒になって車を雪から脱出させてくれた。


雪かき。
秋田県内でも積雪量が多い地域は、今年の豪雪にとても苦しんでいる。
果樹園の木々は痛々しいほどに折れてしまい、収量も見込めないそう。

お世話になっている農家さん経由で現状を知ってボランティアに向かった。知り合いの人も多く、一緒になって雪かきをした。

ボランティアは献身、と思い込んでいた僕にとって、
現場は想像以上に明るかった。

雪かきをしながら、近況報告をしあったり、くだらないことで笑いあったり、雪の中の晴れ間に一緒に感動したり、真剣にボランティアをしつつ、とても楽しい時間を過ごした。

もちろん作業も、農家さんのこれからも、決して楽観的ではなかった。
それに僕たちの作業は、農家さんとは違い、毎日の雪かきではない。

でも、その日の作業を終えて帰るころには、
なにか、清々しいような、温かいような、いい雰囲気だった。

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雪の日々を過ごす中で、少しだけ雪国の風土に触れた気がした。
雪という決してひとりでは抗えない逆境があるからこそ醸成される、
「助け合いのエコシステム」があることに気づいた。

ここではひとりで生きていくことはできない。
だからこそ助けてもらうし、誰かが困っていたら手を差し伸べる。

結というのは、むかしらしくなんてなかった。
結は、今もまだあるし、これからもきっとある。

結とは、農業を乗り切るための処世術ではなかった。
結とは、人間にとってもっと根本的な、本能みたいなものなんじゃないかと考えさせられた。

雪には翻弄されるけど、雪からはたくさん学べる。
暮らしの中には、ネガティブもポジティブも、
どっちもあって、どっちも愛おしい。

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