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村上春樹の創作の秘密:独自のメソッドと日々のルーティン/職業としての小説家

村上春樹のエッセイ『職業としての小説家』を読みました。

この本は、世界でも有名な日本人作家である村上春樹が、35年以上に渡る小説家人生を振り返りながら、小説家という職業と、小説を書くということの本質について語った一冊です。

村上春樹といえば、デビュー作『風の歌を聴け』から最新作に至るまで、独特の文体と世界観で多くの読者を魅了し続けてきました。一方で、その文体への批判や"村上ブーム"への反発など、日本の文壇からは長らく厳しい評価を受けてきたのも事実です。本書『職業としての小説家』では、彼がそうした逆風をどう受け止め、それでも信念を持って小説家の道を突き進んできたのかが赤裸々に綴られています。

彼が小説家になるきっかけとなった、神宮球場での"エピファニー"のエピソードから、処女作執筆時に編み出した「英訳して日本語に再翻訳する」と言う独自のメソッドの数々、そして名作を生み出し続けるために欠かせない日々の創作ルーティンなど、村上文学の核心に触れる話題が満載です。

海外での高い評価についても言及されており、日本からアメリカに活動の場を移したことで、いかにして世界的作家への道を切り拓いていったのかが語られています。

他にも、文学賞や読者のことなど、小説を取り巻く環境について鋭い指摘が随所に見られるのも本書の魅力です。特に芥川賞を逃したことを「喜ばしく思っている」とまで述べる村上氏の言葉には、真摯に小説と対峙する職業作家の矜持が感じられます。

本書を読むと、才能だけでなく圧倒的な努力によって紡ぎ出される村上春樹作品の背景が見えてきます。一見淡々とした語り口ながら、小説家としての静かな情熱がひしひしと伝わってくる、そんな濃密な内容です。文学ファンのみならず、クリエイターを志す全ての人に役立つヒントが詰まった一冊です。

村上春樹ファンはもちろん、これまで彼の作品になじみのなかった人にもおすすめです。「職業作家」の核心を的確に言語化した稀有な著作は、現代文学の金字塔となることでしょう。世界のハルキを知るための必読書です。


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