ライトノベル第一章四話【詩音の決意】

 俺は楽器を弾けたり歌を歌えたりだけではなく、作曲や作詞というものもひと通りできる。曲や詩が良いか悪いか、そっち方面にも向いているのかどうかはわからない。
 ただ、今までバンドを組み、ライブやってきた経験から感じ取れるのは、決してダメではないという程度だ。
 圧倒的なカリスマ性なんてものはないが、それなりに客は集められる。
 ただ、単独ではまだまだで、いくつかのバンドと対バンしながらのライブだと、確実に俺のバンド目的のファンかどうかはわからない。それでも帰らずに聞いてくれる客がいるのだ、悪くはないのだろう。
 そこで、俺はレベルの低い曲を数曲作り、それに見合うメンバーを集めることにした。
 バンド活動をしていれば顔見知り程度くらいの関係は築けるし、ライブハウスには告知の掲示板もあり、そこにはメンバー募集の告知も貼られている。貼っておけば世話好きなヤツが口コミで広げてくれたりもする。
 そういえば、初めてのバンドのメンバーもそうやって集まったんだっけ・・・。
 あの頃は、まさかひとりで活動していくことを決意するなんて思いもしなかった。それだけ、俺の向上心が高まっているのだろう。
だが、今回は俺も難易度を下げる必要がある。最初から高難度のレベルを求めては、今までの失敗の繰り返しにしかならない。サポートメンバーの募集告知はいつも使っている相楽さんのスタジオの掲示板にも貼らせてもらえることになった。
 その内容を見た相楽さんは
「へえ、思い切ったことを考えるものだね。あれか? 煩わしい人間関係は排除って結論にしたわけ?」
 と、俺につっかかるような言い方をしてくる。俺は無言で睨み返した。
「おお、怖っ! 睨みつけることができるなら、もっと感情を表にだせよ、詩音。何度も言うが、思っていることは言わなきゃ伝わらない。だが、相手を尊重できなきゃ、自分の意見は聞き入れられないし、分かり合おうとはしてくれない。まずは自分がそういう態度を示す。それが出来ず、それを拒み、この答えを出したっていうなら、おまえに未来はねーよ。ま、せいぜい、頑張れ。」
 なぜそこまで言われなくてはいけない?
 俺がなにをしたって言うんだ!
 分かり合ったってその関係が続く保証はないのに・・・。
 俺はただ高みを目指し、向上心を持ち続けたい。メジャーを目指すって、そういうことだろう?
 仲良しごっこの馴れ合い、趣味程度でメジャーになれるか!
「あんたに・・・。」
「ん?」
「挫折したあんたに、なにがわかる!」
「ああ、わかるね。自分の力量がわかるからここらが限界って別の道を探すのは悪いことじゃない。ま、いいんじゃないの? 詩音が出したその答えがどういう世界を見せるのか、オレなりに楽しませてもらうよ。じゃ、メンバーが決まったら報告に来いよ。掲示板にもスペースが限られているからな。」
「ああ。」
 なんなんだ、こいつは!
 俺を散々なじっておいて、最後は楽しみにしているだと?
 だったら見ているがいいさ。俺は間違ってはいない。
 これが俺の出した最良の答えだと示してやる・・・!

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