見出し画像

他者理解の手段

VRシステムで認知症を疑似体験するシステムが開発されたそうだ。これを使って、アルツハイマー型認知症に多く見られる記憶障害を再現し、病気に対する理解促進を狙っているという。

認知症の記憶障害は「体験の全体を忘れる」感覚だという。普通の物忘れであれば、箪笥から物を取り出した後にどこに置いたかを忘れるというように記憶の一部だけが抜け落ちる。しかし、認知症の場合は、物を取り出したこと自体を忘れるなどのケースがあり、「箪笥にあるはずなのに、なぜここに?」と困惑してしまうそうだ。日常的に繰り返されるこうした戸惑いが、患者自身の大きな不安やストレスとなり、怒りっぽくなる▽暴言を吐く▽暴力を振るう―といった変化に繋がる。

認知症、という言葉は知っていたし、周りにそういう人がいる経験もあるが、どうして関わりにくくなる(暴力を振るうなどで)のか、よくわかっていなかった。しかし、自分の世界が上記のように変わってしまうのであれば、それは相当なストレスになるのは想像に難くない。とはいっても、実際に体験してみれば、その想像は体験となって自分の身に入るのだろう。VRのこうした使い方を、自分は思い付かなかったなと省みた。

開発した大学教授が記事中で「VRの技術は他者理解に活かせる」と述べた。いい言葉だ。機械的な技術が、まさか人間の相互理解に繋がる可能性を秘めているとは。この言葉をもとに、開発できるものも多くありそうだなと思うフレーズである。

よろしければサポートをお願い致します。頂いたサポートは新しいことを生み出すための活動に使用させていただきます。