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第99回箱根駅伝 往路

往路は駒澤大学が制した。中央が良い流れを作っていたので、5区の逆転があるかなと思ったが駒澤の1年生、山川選手が粘った。さて、今年も各区間で印象に残ったところを綴っていくこととする。

【1区】力の拮抗はスローペースを生む

今朝のエントリー変更で、1区に吉居選手(中央3年)や三浦選手(順天堂3年)が来なかったことでスローになりそうだと思ったが、その通りになった。力が拮抗している選手たちが集まることで、誰も出らない状況になると思ったからだ。

その中で、学生連合チームの新田選手(育英4年)が果敢に飛び出し、ずっと1人でトップを守った。だが、15kmを過ぎてペースが落ちていき、20kmあたりでついには富田選手(明治4年)に捕まった。とはいえ、勇気ある飛び出しに拍手を送りたい。他チームは駒澤をマークしていたと思うが、円選手(駒澤4年)が富田選手に次いで飛び出し、区間2位で襷を繋いだ。後から振り返ると、往路優勝争いはこの時点でだいぶ有利に立っていたのかもしれない。

【2区】上位3名によるハイレベルな叩き合い

田澤選手(駒澤4年)がこの位置でもらえば区間賞はカタいと思われた。しかし、後ろから吉居選手(中央3年)が追い付いてくると前半は置いていかれてしまう。解説陣も田澤選手が本調子ではないのでは?と、ざわつく。その後、吉居選手を捕らえ再び首位に立つも、そこまで後続との差を引き離せない。

その後ろでは近藤選手(青山学院4年)が留学生を振り切り先頭に迫る。途中で吉居選手を捕らえ、その後は二人での並走が続く。この二人、かつては同じクラブチームで練習を共にしていて、そういえばスタート前も二人で何やら話をしていた様子がTVカメラに映っていた。近藤選手が来たことで吉居選手も息を吹き返したようだった。

勝負はラスト3km、戸塚の壁が壮絶だった。一度は追い付いた吉居選手が再び引き離されるも、中継所手前の数百メートルで再び振り切り先頭で襷を渡す。区間賞は吉居選手が取ったが、3人とも66分台のタイムを残したハイレベルな戦いであった。留学生ランナーといえども、この域に達するのは簡単ではないだろう。

その他にも、復活の石原選手(東海3年)が区間4位で10人を抜くなど、TVには映らないのが残念なくらいの好走を見せた。大東文化のワンジル選手は序盤のハイペースが祟ったのか、中継所直前でフラフラの状態であった。よく、襷を繋ぎ切ったと思う。

【3区】62分台でも区間中位になってしまうレベルに

少し前まで3区は繋ぎの区間だった。下り基調で、コース的には難しくないからだろう。ただ、最近はエース級を投入することも多く今回もチームのエース格とされる選手が多く投入された。

ペース的には藤沢までの7.6kmで飛ばし過ぎると、後半に伸びず結局区間成績が伴わないことが多い。かといって、ゆっくり入り過ぎても前半抑えすぎたせいで同様に区間タイムが出ない。ペース配分が難しい区間と言える。

そんな中で、前半から飛ばした中野選手(中央3年)が区間賞を獲得した。10000mの中央大学記録を持つ、力のあるランナーであることに違いないが、最後まで持ったのはトップを走っている流れがあったように思う。逆に、森下選手(明治1年)は前半を抑えて藤沢以降で定点間トップを取り続けた。結果、この区間の1年生記録を更新している。

区間14位だった山森選手(創価3年)が1:02'57"のタイム。このタイムでもこの区間順位。区間賞と1分06秒差だから大きな差ではないのだが、逆にここで64分台だと遅いとなってしまうのも各大学にとっては辛いところだなと思う。

【4区】ヴィンセント選手、有終の美

今シーズンの駅伝をすべて欠場しており、出場さえも危ぶまれたイエゴン・ヴィンセント選手(東京国際4年)がまたやってのけた。惜しくも60分切りとはならなかったが、1時間ちょうどの区間記録を作った。これで2~4区の区間記録はすべてヴィンセント選手の名前が刻まれたことになる。おそらく彼の名はかなり長い間、箱根の歴史に刻まれていくことになるだろう。

そして、そのヴィンセント選手に後半はわずかに勝っていたのが、太田選手(青山学院2年)だった。去年の3区ではなく、なぜ4区なのか?と思っていたが、太田選手のユーティリティさを原監督が見抜いていたということなのだろう。1:00'33'は、これまでの区間記録だった吉田選手のタイムからわずかに3秒遅れるだけだった。2年続けて箱根での快走を見る限り、青学の新駅伝男は彼なのではないかと思う。

藤本選手(国学院4年)はどうやら代役だったようだが、とてもいい走りをした。中西選手はどうやら明日も走れなそうだが、彼の頑張りが国学院の往路ポジションを確かなものにした。他にも北村選手(山梨学院3年)も非常にクレバーな走り。単独走で難しいレースだったが、さすがこの1年大きく成長した選手と言われるだけあって、ペースの乱れがなく力を出し切ったのはないだろうか。

【5区】山の妖精が神に近づいた瞬間

破れそうで破られなかった5区の区間記録がついに更新された。櫛部監督から「山の妖精になろう!」と激励された山本選手(城西3年)が、1:10'04"と、神の領域とされる70分切りまであとわずかなところまできた見事な区間記録更新だった。

前半からガンガン行ったのが山本選手であれば、後半にかけて徐々に上げていったのが四釜選手(順天堂4年)だ。2年連続の5区出走だったが、前回大会は前半から飛ばし過ぎて後半失速してしまったが、今回はその経験を活かした見事なペース配分だった。

先頭争いは山川選手(駒澤1年)が耐えて耐えて先頭を保った。それどころか下りに入ってからの走りでは阿部選手(中央2年)を上回った。TVの解説では阿部選手のほうが下りが上手いと言っていたが、決して下りが苦手な選手ではなかったということだ。


往路を終えて駒澤がトップ。30秒差で中央が続き、青山学院とは約2分差。6区でコケない限り、駒澤の総合優勝の可能性が高い。追うチームは見える位置で9区あたりまで持っていければ、何かが起こるかもしれない。しかし、復路にも強いランナーを残している駒澤の選手層を崩すのは本当に大変なことだろう。

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